自殺のハイリスク者の実態解明及び自殺予防に関する研究

文献情報

文献番号
201027076A
報告書区分
総括
研究課題名
自殺のハイリスク者の実態解明及び自殺予防に関する研究
課題番号
H21-こころ・一般-007
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 弘人(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 社会精神保健研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 三宅 康史(昭和大学医学部救急医学/昭和大学病院救命救急センター)
  • 河西 千秋(公立大学法人横浜市立大学医学部)
  • 松本 俊彦(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 自殺予防総合対策センター・薬物依存研究部)
  • 川野 健治(独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所自殺予防総合対策センター)
  • 野田 光彦(独立行政法人 国立国際医療研究センター糖尿病・代謝症候群診療部)
  • 佐伯 俊成(広島大学病院医系総合診療科)
  • 横山 広行(独立行政法人国立循環器病研究センター 心臓血管内科 心血管系集中治療科)
  • 水野 杏一(日本医科大学 内科学 循環器・肝臓・老年・総合病態部門)
  • 内村 直尚(久留米大学医学部 精神神経科学教室)
  • 夜久 均(京都府立医科大学心臓血管外科学教室)
  • 志賀 剛(東京女子医科大学医学部)
  • 山崎 力(東京大学大学院医学系研究科 臨床疫学システム講座)
  • 鈴木 伸一(早稲田大学 人間科学学術院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
16,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班の目的は、自殺のハイリスク者として、救命救急センターへ搬送された自傷患者、高度救命救急センターに搬送された統合失調症患者、薬物・アルコール依存者、自死遺族、糖尿病患者及び循環器疾患患者をモデル的に取り上げ、その実態を明らかにするとともに、可能な自殺予防法を提案することである。
研究方法
13の分担研究班を編制して成果を統合した。研究法は、コホート研究、症例対照研究、横断研究等を用いた。
結果と考察
1) 日本臨床救急医学会と共同で、救急医療において精神症状を呈する患者への初期診療を安全確実に行うための教育コースを開発した。

2) 統合失調症の自殺企図者は、気分障害と比べ、過去の自殺未遂から1年以上経過してからの再企図率が高く、飛び降りのような致死性の高い手段を用いることが多いことが示された。多くの精神科医師は、統合失調症の自殺予防には、(a) 専門職間の連携と地域支援、(b) 早期介入が重要と指摘していた。

3) 薬物使用障害患者は、(a) うつ病患者に匹敵する抑うつ症状を呈し、より高度な自殺傾向を示すこと、(b) 女性のうつ病患者の問題飲酒は、重篤な抑うつ症状と高度な自殺傾向と関連していることが明らかになった。

4) 相談担当者のための自死遺族支援の指針を改定すべく、ヒアリングを2回実施し、当事者の意見を集約した。また自治体における指針の使用状況を把握した。自死遺族支援従事者への研修を行い、研修の効果を測定する指標を開発した。

5) 7名の研究分担者により、慢性身体疾患 (糖尿病と循環器疾患) 患者が呈する精神症状に関する横断研究とコホート研究を実施し、精神症状 (抑うつ症状、不安症状、敵意、睡眠時無呼吸症候群) の有病率と、それらの身体疾患への影響の程度が明らかにした。また、神経体液性因子(BNP等)が抑うつ症状の予測因子となる可能性が示された。
結論
本研究成果は、自殺総合対策大綱の重点施策である「適切な精神科医療を受けられるようにする」「自殺未遂者の再度の自殺を防ぐ」「遺された人の苦痛を和らげる」施策へ直接的に寄与し、もって国民の保健・医療・福祉の向上に資することが期待できる。

公開日・更新日

公開日
2011-05-24
更新日
-

収支報告書

文献番号
201027076Z