発達障害者の適応評価尺度の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201027075A
報告書区分
総括
研究課題名
発達障害者の適応評価尺度の開発に関する研究
課題番号
H21-こころ・一般-006
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
辻井 正次(中京大学 現代社会学部)
研究分担者(所属機関)
  • 安達潤(北海道教育大学旭川校)
  • 市川宏伸(東京都立小児総合医療センター)
  • 井上雅彦(鳥取大学医学系研究科)
  • 内田裕之(大阪大学大学院)
  • 内山登紀夫(福島大学大学院)
  • 岩永竜一郎(長崎大学医学総合研究)
  • 小笠原恵(東京学芸大学)
  • 黒田美保(東海学院大学人間関係学部)
  • 杉山登志郎(あいち保健医療総合センター心療部)
  • 中村和彦(浜松医科大学精神科)
  • 萩原拓(北海道教育大学旭川校)
  • 原幸一(徳島大学総合科学部)
  • 村上隆(中京大学現代社会学部)
  • 行廣隆次(京都学園大学人間文化学部)
  • 谷伊織(浜松医科大学子どものこころの発達研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本には、幅広い年代のさまざまな生活上の困難を抱えたものの適応行動を測定するための尺度が存在せず、そのために行動上の特徴に配慮した支援サービスが行われにくい状況にある。そこで、本研究では障害児者の福祉的サービスを可能にするための評価尺度の開発を行う。生活全般における適応行動を包括的に評価する尺度として国際的に最もよく活用されているVineland AdaptiveBehavior Scale Second Edition(VABS-II)の日本版を始め、発達障害児者に特有の臨床症状を評価するための感覚プロフィール尺度や改訂版反復行動尺度(RBS-R)など、さまざまな行動上の特徴や支援ニーズを測定するための尺度の開発と標準化を目的とした調査研究を行う。
研究方法
VABS-II日本版については、国内での予備的なデータ収集を実施した上で、原著者との密接な打ち合わせを行い、特に原著者からの指示があった、0-2歳台の乳幼児を1ヶ月ごとでデータ収集できるよう、全国28都道府県の分担研究者・研究協力者に呼びかけを行い、一般群1500名および臨床群600名のデータ収集を計画した。計画2年目にあたる本年度までに、一般群については計画の約90%にあたる1331名から、臨床群については自閉症者141名からデータを収集した。感覚プロフィールおよびRBS-Rについても、約120名の自閉症者からデータを収集した。
結果と考察
VABS-II日本版について、項目分析を行った後、内的整合性、年齢・月齢にともなう変化、因子構造、一般群と自閉症群の比較の4つの観点から信頼性・妥当性の検討を行った。その結果、VABS-II日本版は、十分な信頼性を持つとともに、適応行動の発達をきめ細かく評価可能な尺度であることが示された。また、VABS-II日本版を用いることで、定型発達者と同等の知的能力を持つ高機能自閉症児者であっても、その適応上の困難を明確に捉えられることが明らかになった。感覚プロフィールおよびRBS-Rについても、発達障害者に特異的な臨床症状を明確に把握できることが示された。
結論
適応行動を包括的に評価するVABS-II日本版と、発達障害に特有の症状を捉える感覚プロフィールやRBS-Rとを組み合わせて支援ニーズの評価を行うことによって、これまで十分な支援サービスが受けられなかった発達障害者を支援の枠組みに含めることが可能になるととともに、個々の障害者の実際の適応状況に合わせたきめ細かな支援を実施できるようになると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2011-05-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201027075Z