統合失調症の再発予防の確立に関する研究

文献情報

文献番号
201027073A
報告書区分
総括
研究課題名
統合失調症の再発予防の確立に関する研究
課題番号
H21-こころ・一般-004
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
三辺 義雄(国立大学法人 金沢大学 医薬保健研究域医学系)
研究分担者(所属機関)
  • 松原 三郎(医療法人財団 松原愛育会 松原病院)
  • 平田 豊明(静岡県立 こころの医療センター)
  • 小宮山 徳太郎(医療法人 栗山会 飯田病院)
  • 伊豫 雅臣(千葉大学大学院医学研究院 精神医学)
  • 渡邉 博幸(国保 旭中央病院)
  • 関根 吉統(千葉大学社会精神保健教育研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
16,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、再発・再入院を繰り返す率が高い統合失調症者に対する、IT 技術及を用いた新しい再発・再入院予防法を確立することを目的とする。もって、同疾患者の再発・再入院率の低下を目指す。医療過疎化が深刻なわが国の現状を踏まえると、行政課題として集約的で効率的な再発予防法の確立が切望される。本年、その画期的な方法が欧州から報告された。それは、医師があらかじめ設定した再発兆候出現時に用いる治療薬を内服してもらうという一連の作業を、ITを用いることで自動化し、医療の効率化を狙った戦略である。その内容は、サーバーから患者または家族の持つ携帯電話を通じて再発兆候質問紙へと回答するようメッセージを自動送信する、患者及び家族から送信されてきた回答をサーバーが解析する、というものである。再発兆候が出たと判断されると、指示薬の内服を促すメッセージが患者及び家族に送信される。我々はそれに訪問看護を組み合わせ、わが国独自の再発予防治療法CIPERSの確立を目指す。
研究方法
CIPERSの有無による二群に、通常診療群を加えた三群から成るランダム化比較試験を用いる。対象は統合失調症者である。これらの者を CIPERSの有無による2群、通常診療群による1群、計、3群に無作為に分ける。これらは診療施設ごとに施行された。CIPERS無の群は通常の医療を行う。CIPERS有の群は、CIPERSから再発兆候アラートが出た際に備えて、担当医師が予め指示薬を3週間分用意し、患者に渡しておく。訪問看護者は毎週一度、電話を用いて、再発兆候質問紙への返答をパソコンに導入された CIPERSに入力する。再発兆候アラートが出たら訪問看護者は、指示薬の内服を促すとともに、医師への受診を促す。
結果と考察
CIPERS有群では、通常診療群と比べて入院日数が約4割であった(通常診療群の42.1%)。このことはCIPERS有群が、CIPERSシステムを用いた早期介入システムを用いることで、入院治療の長期化を効果的に予防できことを示すものである。
結論
統合失調症者に対する、ITを用いた新しい再発予防法CIPERを確立した。これにより、通常の診療と比較し、在院期間を6割減少させることに成功した。この方法が普及すれば、大幅に精神科医療が集約化・効率化されることが予測される。この事実は、本法が、医師不足・医療過疎化・医療費の増大といった事態を克服する能力を有していることを示唆している。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201027073Z