統合失調症の未治療期間とその予後に関する疫学的研究

文献情報

文献番号
201027057A
報告書区分
総括
研究課題名
統合失調症の未治療期間とその予後に関する疫学的研究
課題番号
H20-こころ・一般-010
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
水野 雅文(東邦大学 医学部 精神神経医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 道雄(富山大学大学院医学薬学研究部神経精神医学講座 教授)
  • 下寺 信次 (高知大学医学部神経精神科学教室 准教授)
  • 松岡 洋夫(東北大学大学院医学系研究科医科学専攻神経・感覚器病態学講座精神神経学分野 教授)
  • 小澤 寛樹(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科・精神神経科学 教授)
  • 岸本 年史(奈良県立医科大学精神医学講座 教授)
  • 長谷川 友紀(東邦大学医学部社会医学講座 医療政策・経営科学分野 教授)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
13,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
精神病未治療期間(Duration of Untreated Psychosis: DUP)は、統合失調症を始めとする精神病の治療の開始の遅れを示す指標である。わが国においても早急に適切な早期受診を確立するためにはDUPや受診経路に関する基礎的資料が必須であり、エビデンスの集積が欠かせない。本研究では、わが国における統合失調症のDUPと予後の関係を多施設共同研究チームによる疫学的手法により明らかにするとともに、未治療期間に影響する要因を検討する研究を評価している。
研究方法
最終3年度目にあたり、前年度に引き続き症例登録が行い、国内の6都市(仙台、東京、富山、奈良、高知、長崎)における大学病院精神科ならびに関連施設において初回エピソード統合失調症におけるDUPを測定した。さらに3年間のデータの中からDUPがきわめて長期に及んだ症例についてその特徴をカルテにさかのぼって検討し報告した。
結果と考察
平成20年から22年度までの3カ年において、DUP検討症例のントリーは298名(男143)、また研究追跡のための登録症例数は119名(男55名)となった。全体の解析結果は総合研究報告書に記載する。
DUP長期化の要因としては、①家族の理解の低さや協力体制の乏しさなどの環境要因、②家族・周囲への暴力や迷惑行為、③霊的体験への確信や宗教妄想などの本人側の要因が挙げられた。またDUP長期症例全てに共通する特徴として、職場での異動や退職、不登校や退学、そして未就労などの社会的予後の悪化、が目立った。
結論
適切な教育やあらゆる媒体を通じ、利用可能な支援・治療とそれによる転帰の改善に関する情報を提供することにより、正しい認識を得て早期に発見し、早期に介入を開始することが重要である。

公開日・更新日

公開日
2011-05-27
更新日
-

文献情報

文献番号
201027057B
報告書区分
総合
研究課題名
統合失調症の未治療期間とその予後に関する疫学的研究
課題番号
H20-こころ・一般-010
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
水野 雅文(東邦大学 医学部 精神神経医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 道雄(富山大学大学院医学薬学研究部神経精神医学講座 教授)
  • 下寺 信次 (高知大学医学部神経精神科学教室 准教授)
  • 松岡 洋夫(東北大学大学院医学系研究科医科学専攻神経・感覚器病態学講座精神神経学分野 教授)
  • 小澤 寛樹(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科・精神神経科学 教授)
  • 岸本 年史(奈良県立医科大学精神医学講座 教授)
  • 長谷川 友紀(東邦大学医学部社会医学講座医療政策・経営科学分野 教授)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
精神病未治療期間(Duration of Untreated Psychosis: DUP)は、統合失調症を始めとする精神病の治療の開始の遅れを示す指標であり、脱施設化を終えた諸国において90年代から注目され研究されてきた。それによれば、概ね諸外国においても未治療期間は長く、1-2年であった。調査を実施した諸国にあってはその結果を受けて直ちにDUP短縮のための様々な施策が実施され、未治療放置期間の短縮が推進された。
本研究では、①わが国における統合失調症の未治療期間と予後の関係を多施設共同研究チームによる疫学的手法により明らかにするとともに、②未治療期間に影響する要因を検討した。
研究方法
具体的には、①国内の6都市(仙台、東京、富山、奈良、高知、長崎)における大学病院精神科ならびに関連施設において初回エピソード統合失調症におけるDUPを測定した。②測定したDUP値と、長期(1-2年)予後の関連を検討し、精神障害における早期介入の有効性等について検討した。追跡研究群(119例)で12ヶ月の経過を追えたのべ37例について、DUPと精神症状、諸機能の関連について検討を行った。
結果と考察
平成20年から22年度までの3カ年において、DUP検討症例のントリーは298名(男143)、また研究追跡のための登録症例数は119名(男55名)となった。
298名の背景は、発症年齢29.8±9.7歳、初回受診時年齢31.48±10.1歳、GAF平均36.3±15.2であった。このうち、初診時点において29名が自殺未遂の既往があった。
平均DUPは17.6月、中央値は2.7月であった。
29例を対象とする重回帰分析により、12ヶ月後の認知機能(SCoRS評価者全般評価)の予測因子としては、DUPと陰性症状が標準偏回帰係数0.54及び0.55を得た(決定係数0.61)。
結論
統合失調症の早期発見・介入をすることにより、陰性症状が悪化するのを抑制することで、将来的な認知機能の改善度を高めることができると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2011-05-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201027057C

収支報告書

文献番号
201027057Z