プライマリーケアで使用可能な、DNAチップを用いたうつ病の診断指標の作成

文献情報

文献番号
201027053A
報告書区分
総括
研究課題名
プライマリーケアで使用可能な、DNAチップを用いたうつ病の診断指標の作成
課題番号
H20-こころ・一般-006
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
大森 哲郎(徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡本 長久(国立精神・神経センター病院)
  • 中川 伸(北海道大学病院 精神科神経科)
  • 内田 周作(山口大学 大学院医学系研究科)
  • 上野 修一(愛媛大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
13,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高精度で診断を補助できる客観的な診断指標の確立は、プライマリーケアにおけるうつ病診断技術を向上させ、うつ病の早期発見と早期治療導入を促進する。本研究は、従来の限られた測定値に依拠するものと異なり、白血球内のmRNA発現を多数組み合わせて解析し、その発現パターンを基にプライマリーケアで使用可能なうつ病の診断指標を確立することを目的とする。平成22年度はPCRアレイ法の応用に取り組んだ。
研究方法
研究に参加することについて文書により説明し同意を得たものを対象とした。診断は、DSM-IVに準拠した。採血は、午前10時から午後1時までの間に医師または看護師が、安静下に肘静脈より行った。うつ病の重症度はハミルトン評価尺度で評価した。外来診察終了後に血液5-10mlを採取した。キアゲン社製mRNA抽出用試験管を用いてmRNAを抽出した。抽出したmRNAを行い、DNAチップ、リアルタイムRT-PCRおよびPCRアレイで解析した。
結果と考察
これまでの研究過程から、白血球を試料としたmRNA発現解析によって、うつ病の診断指標の作成が可能であるという結果を得た。また、診断指標に使用するmRNA発現は10種から数10種程度の遺伝子で十分であることが判明した。したがって再現性、簡便性、コストと実用性からみて、最近汎用されるようになった多穴式のリアルタイムRT-PCR(PCRアレイ)を使用するのが適切である。うつ病において白血球mRNA発現に変化が想定される遺伝子から40種を独自に選定し、うつ病判別用のPCRアレイの試作を試みた。搭載遺伝子の種類について何度か改良を加え、予備的にうつ病判別用のPCRアレイを完成させ、30名のうつ病患者と同数の対照者の測定を終了し、多くの遺伝子発現において群間の有意差を検出できた。
結論
得られた所見は、PCRアレイを用いて白血球mRNA発現を複数測定することによって、うつ病の診断マーカーの確立が可能であることを示している。検出されたmRNA発現変化は、うつ病で見られる神経内分泌系、精神免疫系あるいは自律神経系などの異常を反映していると思われるが、うつ病の中枢異常と直接関連する変化を含む可能性もある。現在の研究を発展させ、臨床現場で使用できるうつ病の客観的指標を確立することができる。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
201027053B
報告書区分
総合
研究課題名
プライマリーケアで使用可能な、DNAチップを用いたうつ病の診断指標の作成
課題番号
H20-こころ・一般-006
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
大森 哲郎(徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡本 長久(国立精神・神経センター病院)
  • 中川 伸(北海道大学病院 精神科神経科)
  • 内田 周作(山口大学 大学院医学系研究科)
  • 上野 修一(愛媛大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高精度で診断を補助できる客観的な診断指標の確立は、プライマリーケアにおけるうつ病診断技術を向上させ、うつ病の早期発見と早期治療導入を促進する。本研究は、従来の限られた測定値に依拠するものと異なり、白血球内のmRNA発現を多数組み合わせて解析し、その発現パターンを基に実用的なうつ病の診断指標を確立することを目的とする。DNAチップで包括的に遺伝子発現を調べ、リアルタイムRT-PCRで重要遺伝子変化を検討し、実用指標としてはPCRアレイ法を応用する。
研究方法
研究参加について文書により説明し同意を得たものを対象とした。診断は、DSM-IVに準拠した。採血は、午前10時から午後1時までの間に医師または看護師が、安静下に肘静脈より行った。うつ病の重症度はハミルトン評価尺度で評価した。外来診察終了後に血液5-10mlを採取した。キアゲン社製mRNA抽出用試験管を用いてmRNAを抽出した。抽出したmRNAを行い、DNAチップ、リアルタイムRT-PCRおよびPCRアレイで解析した。
結果と考察
DNAチップおよびリアルタイムRT-PCRの研究から、白血球を試料としたmRNA発現解析によって、うつ病の診断指標の作成が可能であるという結果を得た。また、診断指標に使用するmRNA発現は10種から数10種程度の遺伝子で十分であることが判明した。したがって再現性、簡便性、コストと実用性からみて、最近汎用されるようになった多穴式のリアルタイムRT-PCR(PCRアレイ)を使用するのが適切である。うつ病において白血球mRNA発現に変化が想定される遺伝子から40種を独自に選定し、うつ病判別用のPCRアレイの試作を試みた。搭載遺伝子の種類について何度か改良を加え、予備的にうつ病判別用のPCRアレイを完成させ、30名のうつ病患者と同数の対照者の測定を終了し、多くの遺伝子発現において群間の有意差を検出できた。
結論
得られた所見は、PCRアレイを用いて白血球mRNA発現を複数測定することによって、うつ病の診断マーカーの確立が可能であることを示している。検出されたmRNA発現変化は、うつ病で見られる神経内分泌系、精神免疫系あるいは自律神経系などの異常を反映していると思われるが、うつ病の中枢異常と直接関連する変化を含む可能性もある。現在の研究を発展させ、臨床現場で使用できるうつ病の客観的指標を確立することができる。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201027053C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究は、白血球の遺伝子発現を複数組み合わせることによって、うつ病の診断指標を作成する世界初の試みである。数多くのmRNA発現量から生体機能を多面的に把握する本方法は、従来の限られた因子を測定する方法に比べ、うつ病のような複雑な疾患の評価方法として、原理的にも適切である。研究によって、セロトニントランスポータ-遺伝子を始めとするいくつかの遺伝子発現がうつ病患者において変化していることが判明した
臨床的観点からの成果
診断指標の方法としてDNAチップ法を利用する研究計画であったが、コスト、簡便性、再現性を考慮してPCRアレイ法に変更して研究を進めた。搭載遺伝子を独自に選定したうつ病判別用PCRアレイを試作して、臨床サンプルで検討した。搭載遺伝子の選択を適切化し、さらに診断精度を向上させて、実用化につなげるべく研究を継続している。患者負担は少量通常採血のみであり、臨床応用が可能である。
ガイドライン等の開発
実用的なうつ病診断指標の完成は今後に持ち越した。
その他行政的観点からの成果
高精度で診断を補助できる客観的な診断指標の確立は、プライマリーケアにおけるうつ病診断技術を向上させ、うつ病の早期発見と早期治療導入を促進する
その他のインパクト
2009年7月11日の朝日新聞に取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
62件
その他論文(和文)
14件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
80件
学会発表(国際学会等)
39件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Iga J, Ueno S, Ohmori T.
Molecular assessment of depression from mRNAs in the peripheral leukocytes.
Ann Med. , 40 (5) , 336-342  (2008)
原著論文2
Kinouchi S, Iga J, Ueno S, et al.
FKBP5, SERT and COMT mRNA expressions in the peripheral leukocytes during menstruation cycle in healthy reproductive females.
Neurosci Lett. , 434 (1) , 124-128  (2008)
原著論文3
Uchida S, Nishida A, Hara K, et al.
Characterization of the vulnerability to repeated restraint stress in Fischer344 rats: possible involvement of microRNA-mediated down-regulation of the glucocorticoid receptor
European Journal of Neuroscience , 27 , 2250-2261  (2008)
原著論文4
Numata S, Iga J, Nakataki M, et al.
Gene expression and association analyses of the phosphodiesterase 4B (PDE4B) gene in major depressive disorder in the Japanese population.
Am J Med Genet B Neuropsychiatr Genet. , 150 (4) , 527-534  (2009)
原著論文5
Otsuki K., Uchida S., Wakabayashi Y., et al.
Aberrant REST-mediated transcriptional regulation in major depressive disorder
Journal of Psychiatric Research , 44 (6) , 378-384  (2010)
原著論文6
Hobara T., Uchida S., Otsuki K., et al.
Altered gene expression of histone deacetylases in mood disorder patients
Journal of Psychiatric Research , 44 (5) , 263-270  (2010)
原著論文7
Uchida S., Hara K., Kobayashi A., et al.
Maternal and genetic factors in stress-resilient and –vulnerable rats: a cross-fostering study
Brain Research , 1316 , 43-50  (2010)
原著論文8
Tetsuo Kashibayashi, Manabu Ikeda, Kenjiro Komori, et al.
Transition of Distinctive Symptoms of Semantic Dementia during Longitudinal Clinical Observation
Dement Geriatr Cogn Disord , 29 , 224-232  (2010)
原著論文9
Nakataki M, Iga J, Numata S, et al.
Gene expression and association analysis of the epithelial membrane protein 1 gene in major depressive disorder in the Japanese population.
Neurosci Lett. , 489 (2) , 126-130  (2011)
原著論文10
Uchida S, Hara K, Kobayashi A, et al.
Epigenetic status of Gdnf in the ventral striatum determines susceptibility and adaptation to daily stressful events
Neuron , 69 (2) , 359-372  (2011)
原著論文11
Uchida S, Hara K, Kobayashi A, et al.
Impaired hippocampal spinogenesis and neurogenesis and altered affective behavior in mice lacking heat shock factor 1
PNAS , 108 (4) , 1681-1686  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
201027053Z