精神科薬物療法アルゴリズムの最適化と均てん化に関する研究

文献情報

文献番号
201027050A
報告書区分
総括
研究課題名
精神科薬物療法アルゴリズムの最適化と均てん化に関する研究
課題番号
H20-こころ・一般-003
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 元一郎(慶應義塾大学 医学部精神神経科)
研究分担者(所属機関)
  • 大久保 善朗(日本医科大学 精神医学教室)
  • 本橋 伸高(山梨大学大学院 医学工学総合研究部精神神経医学講座)
  • 渡邊 衡一郎(慶應義塾大学 医学部精神神経科)
  • 齊藤 卓弥(日本医科大学 精神医学教室)
  • 落 裕美(久留米ヶ丘病院)
  • 原 広一郎(浅井病院 精神科)
  • 富田 悠介(井之頭病院)
  • 平野 仁一(大泉病院)
  • 田 亮介(駒木野病院)
  • 稲垣 中(慶應義塾大学大学院 健康マネジメント研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本の精神科薬物治療においては向精神薬の多剤大量療法の問題が指摘されており、統合失調症やうつ病に対する精神科薬物療法ガイドラインの早急な整備が望まれている。これらの疾患に対する治療ガイドラインの作成・整備・普及には、薬物療法アルゴリズムの確立が必須である。本研究の目的は、統合失調症とうつ病において、アルゴリズムによる治療群(ALGO: Algorithm-guided treatment)と従来治療による治療群(TAU: treatment as usual)の比較を行う介入研究によってアルゴリズムの有効性を検証することである。
研究方法
統合失調症薬物療法アルゴリズムの実施のために、まずアルゴリズムの作成と実行可能性の検討を行い、measurement-based careの実現のための専任クリニカルコーディネーターの設定、および主治医と独立した評価者による臨床転帰評価の信頼性の検討を行った。また症例登録・アルゴリズム運用のための基本的なルールを設定し、症例の背景データ・処方薬物療法・CGIやPANSSなどの転帰情報・PANSSの改善率の入力・送信システムの開発を行った。
結果と考察
研究に登録された症例はALGO群34例、TAU群6例、4週後の追跡時にはALGO群20例、TAU群4例であった。PANSSの得点は両群でほぼ同様に低下し症状の改善が明らかであったが、両群の差は認められなかった。抗精神病薬CPZ換算一日総投与量はTAU群で急速かつ直線的に増加したが、ALGO群ではほぼ横ばいか若干減少していた。この傾向は、追跡24週後でも認められた。12週後におけるDIEPSSの得点はALGO群に比較してTAUで高く、TAU群でより多くの錐体外路症状が生じていることが示唆された。これらの所見は、今回の薬物療法アルゴリズムに従った治療を行えば、抗精神病薬の使用量を増加させること無く、また錐体外路症状を発生させること無く、統合失調症の精神症状や社会的機能障害を軽快に導くことができることを明らかにしている。
結論
今回の研究は統合失調症薬物療法アルゴリズムを用いた治療が有用であることを示している。今回構築したアルゴリズムとデータの収集および管理システムを用いて登録症例および長期追跡例を増やすことにより、我が国の実情に即した薬物療法アルゴリズムの確立が可能になると思われる。

公開日・更新日

公開日
2011-06-09
更新日
-

文献情報

文献番号
201027050B
報告書区分
総合
研究課題名
精神科薬物療法アルゴリズムの最適化と均てん化に関する研究
課題番号
H20-こころ・一般-003
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 元一郎(慶應義塾大学 医学部精神神経科)
研究分担者(所属機関)
  • 大久保 善朗(日本医科大学 精神医学教室)
  • 本橋 伸高(山梨大学大学院 医学工学総合研究部精神神経医学講座)
  • 渡邊 衡一郎(慶應義塾大学 医学部精神神経科)
  • 齊藤 卓弥(日本医科大学 精神医学教室)
  • 落 裕美(久留米ヶ丘病院)
  • 原 広一郎(浅井病院 精神科)
  • 鈴木 健文(井之頭病院)
  • 富田 悠介(井之頭病院)
  • 平野 仁一(大泉病院)
  • 岸本 泰士郎 (大泉病院)
  • 田 亮介(駒木野病院)
  • 稲垣 中(慶應義塾大学大学院 健康マネジメント研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本の精神科薬物治療においては向精神薬の多剤大量療法の問題が指摘されており、統合失調症やうつ病に対する精神科薬物療法ガイドラインの早急な整備が望まれている。これらの疾患に対する治療ガイドラインの作成・整備・普及には、薬物療法アルゴリズムの確立が必須である。本研究の目的は、統合失調症とうつ病において、アルゴリズムによる治療群(ALGO: Algorithm-guided treatment)と従来治療による治療群(TAU: treatment as usual)の比較を行う介入研究によってアルゴリズムの有効性を検証することである。
研究方法
統合失調症薬物療法アルゴリズムの実施のために、まずアルゴリズムの作成と実行可能性の検討を行い、またmeasurement-based careの実現のためのアルゴリズム研究専任のクリニカルコーディネーターの設定、および主治医と独立した評価者による臨床転帰評価の信頼性の検討を行った。また症例の導入に関する基本的ルールを明確にし、アルゴリズム運用のための基本的ルールを設定し、症例の背景データ・処方薬物療法・CGIやPANSSなどの転帰情報・PANSSの改善率の入力・送信システムの開発を行った。
結果と考察
研究に登録された症例はALGO群34例、TAU群6例、4週後の追跡時にはALGO群20例、TAU群4例であった。PANSSの得点は両群でほぼ同様に低下し症状の改善が明らかであったが、両群に差は認められなかった。しかし抗精神病薬CPZ換算一日総投与量がTAU群で急速かつ直線的に増加したのに対して、ALGO群ではほぼ横ばいか若干減少していた。この傾向は追跡24週後でも認められた。また12週後におけるDIEPSSの得点はALGO群に比してTAU群で高く、TAU群でより多くの錐体外路症状が生じていることが示唆された。これらの所見は、今回の薬物療法アルゴリズムに従った治療を行えば、抗精神病薬の使用量を増加させること無く、また錐体外路症状を発生させること無く、統合失調症の精神症状や社会的機能障害を軽快に導けることを明らかにしている。
結論
今回の検討では、薬物療法アルゴリズムに従った治療を行えば、抗精神病薬の使用量を増加させること無く精神症状や社会的機能障害を軽快に導くことができ、アルゴリズムを用いた治療が有用であることが示された。今回構築したアルゴリズムとデータの収集および管理システムを用い、登録症例および長期追跡例を増やすことにより、我が国の実情に即した薬物療法アルゴリズムの確立が可能になると思われる。

公開日・更新日

公開日
2011-06-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201027050C

成果

専門的・学術的観点からの成果
日本の精神科薬物治療においては向精神病薬の多剤大量療法の問題が指摘されており、特に統合失調症に対する精神科薬物療法ガイドラインの整備が望まれている。今回我々は統合失調症薬物療法アルゴリズムを確立し、その有用性を確認した。今後、アルゴリズムの普及および均てん化を行うことにより、多剤大量療法から単剤処方への変化や、症状管理的治療からQOL重視の治療への改善、入院治療から外来治療への治療戦略の転換など、医療経済的視点からの有効性も期待される。
臨床的観点からの成果
今回我々が作成した統合失調症における薬物療法アルゴリズムに従った治療を行うことで、抗精神病薬の使用量を増加させることなく、また、錐体外路症状を発生させることなく、統合失調症の精神症状や社会的機能障害を軽快に導くことができることが明らかとなった。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
25件
研究代表者の件数
原著論文(英文等)
36件
研究代表者の件数
その他論文(和文)
26件
研究代表者の総説など
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
61件
研究代表者の件数
学会発表(国際学会等)
6件
研究代表者の件数
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
統合失調症の新規評価尺度(FACT-Sz,TIP-Sz)の考案および信頼性の実証

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Jinichi Hirano, Koichiro Watanabe, Takefumi Suzuki, et.al
An open-label study of algorithm-based treatment versus treatment-as-usual for patients with schizophrenia: Algorithm-based treatment for schizophrenia
Neuropsychiatric Disease and Treatment. , 9 , 1553-1564  (2013)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
201027050Z