マイクロポンプシステムを用いた分子シャペロンとして働く薬物投与による遺伝性難聴の革新的治療法の創生

文献情報

文献番号
201027041A
報告書区分
総括
研究課題名
マイクロポンプシステムを用いた分子シャペロンとして働く薬物投与による遺伝性難聴の革新的治療法の創生
課題番号
H21-感覚・一般-007
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
和田 仁(東北大学 大学院工学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 小林 俊光(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 宇佐美 真一(信州大学 医学部)
  • 池田 勝久(順天堂大学 大学院医学研究科)
  • 芳賀 洋一(東北大学 大学院医工学研究科)
  • 平澤 典保(東北大学 大学院薬学研究科)
  • 中村 浩之(学習院大学 理学部)
  • 津本 浩平(東京大学 大学院新領域創成科学研究科)
  • 石原 研治(茨城大学 教育学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本人の遺伝性難聴の主な原因の1つは,内耳に発現する膜タンパク質pendrinの遺伝子変異により機能が低下するためであると考えられている.これまで我々は,pendrinと相同性が高い膜タンパク質prestinの研究を行ってきた.そして,変異prestinがサリチル酸により機能が回復することを発見した.そこで,本研究では,変異prestin同様,機能が低下した変異pendrinの機能を回復させる薬剤を特定するとともに,薬剤を内耳に投与するための,埋め込み型ドラッグデリバリーシステムを開発し,遺伝性難聴の革新的治療法の開発を目指す.
研究方法
まず,日本人で最も多いミスセンス変異pendrin H723RをHEK293細胞に発現させ,薬剤候補であるサリチル酸およびその誘導体が変異pendrinの局在に与える影響を蛍光免疫染色法を用いて解析した.次に,サリチル酸は耳毒性を有することが知られているので,通常マウスの蝸牛内にサリチル酸を投与し,聴力に影響を与えない閾値濃度を検証した.その後,pendrin H723Rを持つノックインマウスを作製し,聴力検査を行った.さらに,治療薬を内耳投与する為の埋込み型ポンプを改良し,適切な量の送液が可能であるか検討を行った.
結果と考察
変異pendrin H723Rを細胞膜に移行促進する薬剤としてサリチル酸およびその誘導体が効果的であることが分かった.また,通常マウスの蝸牛内にいくつかの濃度のサリチル酸を投与したところ,聴力を失わない閾値濃度を判定できた.また,マウス型の変異pendrinを持つノックインマウスにおいて,生後7?22週齢では1匹を除いて聴力が正常であった.ヒトでは幼少時に進行して聴力が低下することが知られているので,継続して聴力変化を追跡する.現在,ヒト型の変異pendrinを持つノックインマウスも作製中である.さらに,適切な量の送液が可能な改良したマイクロポンプを作製できた.
結論
前年度より,培養細胞においてpendrin変異体の機能回復にサリチル酸が有効であることが示されており,実際に生きている通常マウスに投与した場合,どのような影響が見られるか検証したところ,高濃度で聴力が低下したが,時間経過とともに聴力が回復する濃度および聴力が低下しない濃度が分かり投与濃度の基準が決定できた.また,ヒトに実装でき得るマイクロポンプが試作できた.

公開日・更新日

公開日
2011-07-12
更新日
-

収支報告書

文献番号
201027041Z