正常眼圧緑内障の病態解明と治療薬の開発

文献情報

文献番号
201027030A
報告書区分
総括
研究課題名
正常眼圧緑内障の病態解明と治療薬の開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
H20-感覚・一般-003
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
田中 光一(国立大学法人 東京医科歯科大学 大学院疾患生命科学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 原田 高幸(東京都神経科学総合研究所)
  • 布施 昇男(東北大学大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
正常眼圧緑内障の病態は不明であり、有効な治療法はない。我々は、グルタミン酸トランスポーター GLAST, EAAC1欠損マウスが、ヒト正常眼圧緑内障のモデル動物であることを報告した。本研究では、正常眼圧緑内障患者のグルタミン酸トランスポーター遺伝子GLAST, EAAC1の詳細な解析を行い、グルタミン酸トランスポーターの遺伝異常が緑内障の発症に関与しているかどうか明らかにし、新しい診断法を確立する。また、モデル動物を用いて正常眼圧緑内障の病態解明と新規治療薬の開発を行なう。

研究方法
1.正常眼圧緑内障患者のグルタミン酸トランスポーターGLAST, EAAC1の遺伝子解析:グルタミン酸トランスポーター遺伝子GLAST、EAAC1遺伝子の全てのエクソンの配列を解析した。
2.神経保護薬のモデル動物を用いた薬効評価:グルタミン酸受容体NR2B選択的阻害剤、EAAC1を活性化する化合物を、モデル動物に投与し、網膜神経節細胞の細胞数を定量することにより、神経保護効果を検討した。
3.Dock3の網膜神経節細胞保護効果の解析:Dock3過剰発現マウスを作製し、GLAST欠損マウスと交配し、網膜神経節細胞の数を定量し、Dock3に網膜神経節細胞を保護する機能があるか解析した。
結果と考察
GLASTのエクソン7に見つけた4つ緑内障関連変異の中で、2つはアミノ酸置換を伴うミスセンス変異で、のこりの2つはアミノ酸置換を伴わないサイレンス変異であった。アミノ酸置換を伴う変異に関してグルタミン酸取り込み能を調べたところ、1種類のミスセンス変異では取り込み能の低下を確認できた。この結果は、GLASTの遺伝子異常によるグルタミン酸輸送活性の低下が、緑内障の発症に関与していることを示している。また、グルタミン酸受容体NR2B選択的阻害剤に網膜神経節細胞の保護効果が見られた。さらに、Dock3の過剰発現により、GLAST欠損マウスで見られる網膜神経節細胞の変性は抑制された。
結論
グルタミン酸トランスポーターGLASTの遺伝子変異が緑内障の発症に関与することが明らかになった。これらの結果は、緑内障の早期診断に役立つだけでなく、緑内障の個別化医療にも応用できる。また、緑内障の新規治療薬に成り得るHON0001を見つけた。さらに、Dock3が、網膜神経節細胞の保護作用を持つことを明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
201027030B
報告書区分
総合
研究課題名
正常眼圧緑内障の病態解明と治療薬の開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
H20-感覚・一般-003
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
田中 光一(国立大学法人 東京医科歯科大学 大学院疾患生命科学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 原田 高幸(東京都神経科学総合研究所)
  • 布施 昇男(東北大学大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
正常眼圧緑内障の病態は不明であり、有効な治療法はない。我々は、グルタミン酸トランスポーター GLAST, EAAC1欠損マウスが、ヒト正常眼圧緑内障のモデル動物であることを報告した。本研究では、正常眼圧緑内障患者のグルタミン酸トランスポーター遺伝子GLAST, EAAC1の詳細な解析を行い、グルタミン酸トランスポーターの遺伝異常が緑内障の発症に関与しているかどうか明らかにし、新しい診断法を確立する。また、モデル動物を用いて正常眼圧緑内障の病態解明と新規治療薬の開発を行なう。
研究方法
1.正常眼圧緑内障患者のグルタミン酸トランスポーターGLAST, EAAC1の遺伝子解析:グルタミン酸トランスポーター遺伝子GLAST、EAAC1遺伝子の全てのエクソンの配列を解析した。
2.神経保護薬のモデル動物を用いた薬効評価:網膜神経節細胞の保護効果の可能性のある化合物・遺伝子に関して、モデル動物を用い、網膜神経節細胞の細胞数を定量することにより、神経保護効果を検討した。
3.Dock3の網膜神経節細胞の網膜神経節細胞保護効果の解析:Dock3過剰発現マウスとGLAST欠損マウスを交配し、網膜神経節細胞の数を定量し、Dock3に網膜神経節細胞を保護する機能があるか解析した。
結果と考察
GLASTのエクソン7に見つけた4つ緑内障関連変異の中で、2つはアミノ酸置換を伴うミスセンス変異で、残の2つはアミノ酸置換を伴わないサイレンス変異であった。アミノ酸置換を伴う変異に関してグルタミン酸取り込み能を調べたところ、1種類のミスセンス変異では取り込み能の低下を確認できた。この結果は、GLASTの遺伝子異常によるグルタミン酸輸送活性の低下が、緑内障の発症に関与していることを示している。また、IL-1, arundic acid、水素水、HON0001には、GLAST遺伝子改変マウスの網膜神経節細胞の変性を抑制する効果があった。さらに、Dock3は軸索伸長効果のみならず、網膜神経節細胞の変性抑制効果もあることがわかった。
結論
グルタミン酸トランスポーターGLASTの遺伝子変異が緑内障の発症に関与することが明らかになった。これらの結果は、緑内障の早期診断に役立つだけでなく、緑内障の個別化医療にも応用できる。また、緑内障の新規治療薬に成り得るHON0001, arundic acid、水素水を見つけた。さらに、Dock3が、網膜神経節細胞の保護作用を持つことを明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201027030C

成果

専門的・学術的観点からの成果
緑内障の発症にGLASTの遺伝子異常が関与することを明らかにしたことは、緑内障の病態解明に大きな貢献をした。新しい作用機序に基づく神経保護薬の候補を多く見つけた点、Dock3が軸索の再生を促進することを見つけた点は、十分な学術的な意義を有するものと考えられる。
臨床的観点からの成果
緑内障の患者のみに見られるGLASTのミスセンス変異を見つけ、その変異体がグルタミン酸取り込み能の低下をもたらすことを明らかにした。また、多くの神経保護薬の候補を見つけ、今後の神経保護研究に期待が持てる展開となった。加えて視神経軸索再生がおきるDock3過剰発現マウスの作製とそのメカニズムの解明が順調に進んだことから、当初の目標はほぼ達成したと考えられる。
ガイドライン等の開発
緑内障のみに見られた変異は、緑内障の遺伝子診断として有効である。
その他行政的観点からの成果
来るべき高齢化社会においては緑内障患者数の増加は確実な状況であり、本研究成果は緑内障の新規治療法の開発に貢献し、活力ある高齢化社会の実現に役立つ。
その他のインパクト
「Dock3による視神経の損傷再生」の研究成果については平成22年5月に毎日新聞、河北新報、信濃毎日新聞、中部経済新聞、大分合同新聞、Yahooトピックスなどで紹介された。 また、一般向けの研究成果報告会(緑内障の診断・治療・研究の最前線)を2011年1 月21日東京医科歯科大学で行った。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
8件
その他論文(和文)
6件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
12件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
3件
「取得」3件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

特許の名称
Mouse deficient in glutamate transporter GLAST function.
詳細情報
分類:
特許番号: U.S. Patent Application No: 10/553, 051
発明者名: Tanaka k & Harada t
権利者名: Tanaka k & Harada t
取得年月日: 20090818
国内外の別: USA
特許の名称
Mouse deficient in glutamate transporter GLAST function.
詳細情報
分類:
特許番号: European Patent No: 1619248
発明者名: Tanaka k & Harada t
権利者名: Tanaka k & Harada t
取得年月日: 20120613
国内外の別: EU
特許の名称
Mouse deficient in glutamate transporter GLAST function.
詳細情報
分類:
特許番号: Canadian Patent No: 2522597
発明者名: Tanaka k & Harada t
権利者名: Tanaka k & Harada t
取得年月日: 20121015
国内外の別: Canada

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Namekata K, Harada C,Kohyama K et al.
Interleukin-1 stimulates glutamate uptake in glial cells by accelerating membrane trafficking of Na+/K+-ATPase via actin depolymerization.
Molecular and Cellular Biology , 28 (10) , 3273-3280  (2008)
原著論文2
Namekata K, Harada C,Guo X et al.
nterleukin-1 attenuates normal tension glaucoma-like retinal degeneration in EAAC1 deficient mice.
Neuroscience Letters , 465 (2) , 160-164  (2009)
原著論文3
Harada C, Namekata K, Guo X et al.
ASK1 deficiency attenuates neural cell death in GLAST deficient mice, a model of normal tension glaucoma.
Cell death and differentiation , 17 (11) , 1751-1759  (2010)
原著論文4
Namekata K, Harada C,Taya C et al.
Dock3 induces axonal outgrowth by stimulating membrane recruitment of the WAVE complex.
Proceedings of the National Academy of Sciences of the U.S.A. , 107 (16) , 7586-7591  (2010)
原著論文5
Woltjer RL, Duerson K, Fullmer JM et al.
Aberrant detergent-insoluble EAAT2 accumulates in Alzheimer’s disease.
ournal of Neuropathology and experimental Neurology , 69 (7) , 667-676  (2010)
原著論文6
Harada C, Guo X, Namekata K et al.
Glia- and neuron-specific    functions of TrkB signaling during retinal degeneration and regeneration.
Nat Communication , 2 , 189-197  (2011)
原著論文7
Hayashi H, Eguchi Y, Fukuchi-Nakanishi Y et al.
A potential therapeutic function of apolipoprotein E-containing lipoproteins for normal tension glaucoma.
J Biol Chem , 287 (30) ,  25395-25406  (2012)
原著論文8
Bai N, Hayashi H, Aida T et al.
Dock3 interaction with a glutamate-receptor NR2D subunit preotects neurons from excitotoxicity.
Mol Brain , 6 , 22-  (2013)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
201027030Z