重度障害者意思伝達装置の支給と利用支援を包括するコミュニケーション総合支援施策の確立に関する研究

文献情報

文献番号
201027019A
報告書区分
総括
研究課題名
重度障害者意思伝達装置の支給と利用支援を包括するコミュニケーション総合支援施策の確立に関する研究
課題番号
H22-身体・知的・一般-001
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
井村 保(中部学院大学 リハビリテーション学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
2,510,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
補装具として購入費が支給される重度障害者用意思伝達装置の対象者は、他の補装具のように障害固定のないALS等の進行性の神経疾患(難病)患者も多い。それゆえ、支給決定時に適合確認を行っても、病状の進行に伴い、操作スイッチの不適合が生じることも多く、適切なフォローアップが不可欠である。そのため、その支援としては装置の支給と人的支援を包括した一貫した支援策が必要で、現状調査をふまえて、総合コミュニケーション支援施策の提案を本研究の目的とする。
研究方法
課題①「関連諸制度の調査と整理」は、文献調査を中心に、アンケートあるいはヒアリング調査を実施、課題②「導入相談から利用支援までの継続フォローアップの試行と評価」は、アンケート調査や仮定した支援体制モデルを実証実験した。課題③「本体支給と継続フォローアップを盛り込んだ包括的なコミュニケーション総合支援施策を提案」は、課題①②の結果および諸制度の状況分析をふまえてまとめた。
結果と考察
意思伝達装置の利用対象者については、単に障害者という枠組みではなく、常に医療的なケアの必要な難病患者であることから、身体障害者支援と難病医療対策の狭間に入り、主体的な支援者が不確定になりやすいことが確認でした。また、装置を必要とする患者数が絶対的に少ないことから、経験豊富な支援者も少なく、また、全ての支援内容をカバーできない中で、試行錯誤している地域も多く、隣接府県の支援策を参考にしている状況があることも推測できた。このような状況が、「安心できる支援体制」の地域格差を生じるとともに、支援体制の充実度合いが、ALS患者における意思伝本体の支給割合(利用割合)与える影響も少なくはないことが、十分に推測できる状況である。
結論
今後、ALS患者等に対する意思伝達装置によるコミュニケーション支援は、装置の支給にこだわることなく、その後の継続的な利用支援を、しかるべき人材が連携して対応することが必要であることが明確になった。このとき、ボランティアに頼るだけでは、安定した支援にならず、その人材確保のためには、職能団体等とも連携して人材育成支援を行うことも大切であるが、人的派遣費用の負担も必要である。また、その財源としてはとして本体支給に関する費用の振替も一案であると結論づけて、私案を提案した。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201027019C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ALS患者等の重度障害者における意思伝達装置の導入現状について明らかにした。これまで、身障および難病に関して、横断的なコミュニケーション支援に関わる調査研究は未見であり、実態調査としては意義深い。意思伝達装置導入支援策について検討した。第1段階として実際に各自治体での検討・試行を容易にするためにも、既存の諸制度を活用する方法での可能な対応を、政策的な漏れの部分に対する提案としてのスクラップ&ビルドの提案。
臨床的観点からの成果
一部のモデル地域で意思伝達装置の導入相談から利用支援までの継続フォローアップの試行と検証・評価を行った。また、支援に関わる施策や対応の策定状況と、実際の支援者・家族等が感じる支援の実情の比較を行い、制度があっても、対応できる人材が不足している現状を示した。
ガイドライン等の開発
現時点ではない
その他行政的観点からの成果
本研究の成果である支援費用の試算等を、補装具評価検討会WG5(重度障害者用意思伝達用地に係る調査)に参考提出し、平成24年度価格改定にむけたアンケート調査案を検討した。
また、本研究結果の経年変化をふまえた研究成果(平成25年度障害者対策総合研究事業による課題)を、第22回補装具評価検討会(平成26年3月14日)にて報告した。
その他のインパクト
「平成23年度障害者対策総合研究推進事業(身体・知的等障害分野)一般向け研究成果発表会に採択され、平成24年2月17日に”シンポジウム「重度障害者用意思伝達装置」の導入と支援のために”を開催した(聴衆、約100名)。
NHK(Eテレ)ハートネットTV(平成25年4月24日放送)内で、本研究調査結果であるALS認定患者の意思伝達装置利用率が引用される。

発表件数

原著論文(和文)
2件
「重度障害者用意思伝達装置」の支給状況と利用実態調査結果の考察」(中部学院大学・中部学院大学短期大学部 研究紀要) 他
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
「シンポジウム/「重度障害者用意思伝達装置」の導入と支援のために」(日本リハビリテーション工学協会「リハビリテーションエンジニアリング」、27(3),153-154頁)
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
重度障害者用意思伝達装置の利用支援体制のあり方について」-利用実態調査から見えてきた課題-(日本社会福祉学会 第58回全国大会) 他
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
本研究における課題が補装具評価検討会でも議論され、その課題について調査を進めるために、平成25年度障害者対策総合研究事業に採択された。(平成26年度も継続)
その他成果(普及・啓発活動)
3件
平成23年度障害者対策総合研究推進事業(前述)のほか、2件のセミナー等で成果と課題を報告。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
井村 保
「重度障害者用意思伝達装置」の支給状況と利用実態調査結果の考察
中部学院大学・中部学院大学短期大学部 研究紀要 , 12 , 41-50  (2011)
原著論文2
井村 保
「重度障害者用意思伝達装置」利用支援に関する地域格差の現状
中部学院大学・中部学院大学短期大学部 研究紀要 , 13 , 13-23  (2012)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
201027019Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,510,000円
(2)補助金確定額
1,444,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,066,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 人件費 0円
諸謝金 80,000円
旅費 517,645円
調査研究費 427,009円
委託研究費 420,000円
間接経費 0円
合計 1,444,654円

備考

備考
預金利息および自己資金にて充当。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-