「脊髄損傷後の歩行機能回復のための新たなニューロリハビリテーション方法の開発」

文献情報

文献番号
201027013A
報告書区分
総括
研究課題名
「脊髄損傷後の歩行機能回復のための新たなニューロリハビリテーション方法の開発」
課題番号
H21-障害・一般-005
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
赤居 正美(国立障害者リハビリテーションセンター 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 緒方 徹(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
  • 中澤 公孝(東京大学大学院総合文化研究科)
  • 飛松 好子(国立障害者リハビリテーションセンター 病院)
  • 神作 憲司(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
  • 梅崎 多美(国立障害者リハビリテーションセンター 学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
体重免荷によるトレッドミル歩行は「正常な歩行動作を再現することにより種々の求心性感覚入力を脊髄パターン発生器(CPG)に与え、その活動を改善する」と考えられているが、その歩行機能の再獲得に至る神経生理学的機序は未だ明らかではない。本研究では、歩行機能再獲得の鍵と目される脊髄CPGに着目し、その活動を励起させる神経生理学的機序を検索し、それを基に新たな神経リハビリテーション方法を開発する。


研究方法
平成22年度には、脊髄CPGの特性についての昨年度の知見を応用し、歩行運動出力を適切に促すための具体的な方法の検索と、実際に脊髄不全損傷者に実施することで歩行機能がどのように変化するかを実験的に検討した。
具体的には、動力型歩行補助装置(Lokomat)による外的な歩行キネマティクスの形成を軸として、歩行運動出力を促通すると考えられる種々の末梢性感覚情報、異なる体肢からの神経情報、付加的な電気刺激による感覚入力、脳からの重畳的な随意神経指令を組みあわせた新たな方法を考案、3ヶ月の歩行リハビリテーション実施による訓練効果の定量的把握を行った。合わせて脊髄における組織破壊に由来する微量物質(バイオマーカー)を指標に組織損傷の程度を推測し、臨床的機能予後との関連を検討した。
結果と考察
本年度は、active assistive trainingの重要性が証明された初年度の結果を踏まえたプロトコールを作成した。不全脊髄損傷患者に対し、週3回のLokomatトレーニングを12週間行い、その効果を前後の測定によって検証した。12週間のトレーニング実験を5名終了する予定であったが、このたびの震災により2名が期間延長となった。
いずれの被験者においても歩行動作の改善、痙性麻痺の減少傾向が認められた。皮質脊髄路興奮性を反映する運動誘発電位は、トレーニング当初は発現しなかった前脛骨筋の応答がトレーニング後で発現するなど、中枢神経の可塑的変化を支持する結果が得られた。体重支持・抗重力的に働く大腿直筋の活動がトレーニング経過に伴って増加する傾向、さらに、伸張反射感受性の過剰亢進によって生じると思われる遊脚期後半の一過性の大腿二頭筋の活動がトレーニング後に減弱する傾向、が認められた。

結論
残りのトレーニング実験結果の集約を図るとともに、トレーニング実験を進める過程で被験者の歩行特性に応じた装置の動作設定の見直しやトレーニングプロトコルのアップデートなど、適宜評価・改善を行う。

公開日・更新日

公開日
2011-05-31
更新日
-

収支報告書

文献番号
201027013Z