侵入に関わる共通抗原を用いたコクシジウムの感染防御

文献情報

文献番号
199700830A
報告書区分
総括
研究課題名
侵入に関わる共通抗原を用いたコクシジウムの感染防御
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
笹井 和美(大阪府立大学農学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 新興・再興感染症研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
Toxoplasma、NeosporaおよびEimeriaを含むコクシジウム亜綱に属する原虫による感染症は世界各国で発生している。ヒトではToxoplasmaによる流産や奇形児の発生が大きな問題となっており、妊婦前に使用できる安全なワクチンの開発が試みられているが、いまだに解決していない。家畜においては、感染予防に抗コクシジウム剤の投与が行われているが、薬剤耐性株の出現や環境汚染を避けるために、ワクチンの開発が急務となっている。コクシジウム亜綱の原虫については、合成抗原によるワクチン開発の試みがなされてきた。(Karim et al., Infect. Immun. 1996)。しかし、現在のところ野外応用が可能なものはない。一方でリコンビナント蛋白を作る技術が進歩し(Luckow et al., Biotechnology 1988)、あとは感染防御にとって的確な抗原を選択する段階に入っている。当該研究においては、原虫のcDNAライブラリーを作製し、原虫の宿主侵入に重要な役割を演じる種々の抗体を用いたスクリーニングにより、ワクチン候補となるようなタンパクを分子生物学的手法を用いて作製することを第一の目標とした。作成したリコンビナントワクチンを野外で大規模に試験し、その感染防御能が確認できれば、 人獣共通伝染病であるトキソプラズマ症やネオスポラ症の予防および獣医公衆衛生にとって重要課題の1つであるコクシジウム症対策に解決の糸口を与えると期待される。
研究方法
Eimeria acervulina に対するcDNAライブラリー作製のために、E. acervulinaのオーシストからチオシアン酸グアニジン法によりmRNAを調製した。このmRNAとUNIZAP XR Kit (pBluescript, Stratagene)を用いてcDNAライブラリーを作製した。E. acervulinaタンパクをコードするcDNAクローンの選択においては、cDNAライブラリーをE. coli, XL1-Blue, MFR株に感染させ、cDNAがコードしたタンパクをナイロンフィルターメンブレンにブロットし、E. acervulinaコーノイド特異的鶏モノクローナル抗体およびE. acervulina特異的兎ポリクローナル抗体を1次抗体として、picoBlue immunoscreening Kit (Stratagene)により陽性プラークを特定した。陽性プラーク同様の方法で再度スクリーニングすることによりE. acervulinaタンパクをコードするcDNAを特定した。E. acervulinaリコンビナントタンパクを三次元構造を維持し、なおかつ大量に生産するために、バキュロウィルスを用いた発現系を利用する。方法としては、陽性cDNAをEcoRIで消化し、Prep-A-Gene reagent (BioRad)により精製、T4 DNAリガーゼを用いてpMalcプラスミッドにライゲイトし、トランスベクターであるバキュロウィルスpAcにインサートし、リン酸カルシウム法によりSf-9昆虫細胞に導入し、最終的にリコンビナントタンパクを得た。
結果と考察
兎ポリクローナル抗体を用いたスクリーニングにおいては、E. acervulinaのスポロゾイトをコードするcDNAクローンが検出された。リコンビナントタンパクは分子量19kDaで0.7 kbのcDNAによりコードされたものであった。鶏モノクローナル抗体によるスクリーニングは擬陽性のクローンが多数存在し、非特異的反応を抑制する種々の方法を用いることにより、1次スクリーニングを終了した。以後サブクローニングにより、コーノイドをコードするcDNAクローンを決定し、前述の方法を用いてリコンビナントタンパクを作製する予定である。
結論
兎ポリクローナル抗体を用いた系で得られた分子量19 kDaのリコンビナントタンパクおよび鶏モノクローナル系において得られるであろうリコンビナントタンパクを用いて、鶏コクシジウム症の感染防御試験を行い、そのワクチンタンパクとしての有用性を引き続き検討することにより、その感染防御能が確認できれば、 人獣共通伝染病
であるトキソプラズマ症やネオスポラ症の予防および獣医公衆衛生にとって重要課題の1つであるコクシジウム症対策に解決の糸口を与えると期待される。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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研究報告書(紙媒体)