高率に汚染卵を産出する鶏モデルを用いた腸炎菌ワクチンの効果判定

文献情報

文献番号
199700829A
報告書区分
総括
研究課題名
高率に汚染卵を産出する鶏モデルを用いた腸炎菌ワクチンの効果判定
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
宮本 忠(大阪府立大学農学部獣医内科学教室)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 新興・再興感染症研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、Salmonella Enteritidis(SE)に起因する食中毒が世界的に急増し、わが国においても、多くの発生がみられている。SEによる食中毒の原因食品の大部分は鶏卵であり、鶏卵のSE汚染防止は食品衛生対策上の最重要課題となっている。鶏卵のSE汚染防止対策のひとつとして欧米を中心にワクチン接種が試みられてきたが、一般に、SE感染鶏群における汚染卵産出率は低く、試作されたワクチンが汚染卵産出防御に本当に有効かどうかの判定は非常に困難であった。そこで、我々は、SEを卵管膣部に投与することにより、高率に汚染卵が産出されることをみいだし、今回、この高率に汚染卵を産出する鶏モデルを用い、SE不活化ワクチンが汚染卵産出を抑制できるかどうかを検討した。
研究方法
供試鶏は36-45週齢の白色レグホン系のDeKalb-TX35の産卵鶏40羽を、供試菌は食中毒患者糞便由来のSEファージ4型を、供試ワクチンとしてはオイルアジュバントSE 不活化ワクチンを用いた。 供試鶏はワクチン群とコントロール群の2群に分け、ワクチン群はSE不活化ワクチン0.5mlを3週間隔で2回皮下接種し、コントロール群は生理食塩水0.5mlを3週間隔で2回皮下接種した。両群とも2回目の接種2週間後に107CFUのSEを、人工受精の要領に従って、卵管膣部内に投与した。初回ワクチン接種前とワクチン接種後剖検まで、毎週採血を行い、SEの熱処理抽出(HE)抗原を用いたELISA法により、SE血清IgG、IgM、IgA抗体価を測定した。SE投与後毎日各群から得た卵を回収し、卵殻外面、卵殻内面、卵内容に分けてSEの有無を検査した。SE投与後2, 4, 7, 9, 11, 14日目にクロアカと卵管膣部よりスワブ材料を採取し、SEの有無を検査した。また、投与後7日目と14日目に各群剖検し、クロアカ、卵管各部(漏斗部、膨大部、狭部、子宮部、膣部)、卵巣、盲腸、脾臓、肝臓、卵管内の卵から材料を採取してSEの有無を調べた。卵管各部とクロアカについてはSEの菌数も測定した。
結果と考察
SE血清IgG、IgA抗体価はワクチン接種後2週目よりあきらかに上昇し、2回目ワクチン接種後は軽度に上昇した。SE血清IgM抗体価はワクチン接種後1週目より上昇し、2回目ワクチン接種後は抗体価の上昇は認められなかった。コントロール群ではSE投与後抗体価の上昇がみられた。卵では、コントロール群でSE投与後2週間の間に全体で37%の汚染卵がみられ、ワクチン群では、19%の汚染卵が産出され、ワクチン群ではコントロール群と比べ汚染卵産出率が有意に低下していた。また、卵殻外面、卵殻内面、卵内容のすべての部位において、ワクチン群はコントロール群と比べSEの検出率は有意に低下していた。卵内容からはコントロール群で16%、ワクチン群で8%、SEが検出された。クロアカおよび卵管膣部でのスワブ材料からはSEが高率に検出され、ワクチン群とコントロール群では有意な差はなかった。剖検時のクロアカにおけるSEの菌数はコントロール群よりもワクチン群の方が低く、 SE投与7日後における差は有意であった。一方、卵管膣部でのSEの菌数は有意差がなかった。脾臓、肝臓、盲腸、卵巣において、ワクチン群のSE陽性率はコントロール群の陽性率と比べ低い傾向にあり、とくにSE投与後7日目の脾臓と卵巣では、ワクチン群の陽性率はコントロール群の陽性率と比べ有意に低かった。卵管各部ではSE陽性率は低くワクチン群とコントロール群とで陽性率に有意差は認められなかった。卵管内の卵では、コントロール群の子宮部の2個の卵の卵内容のみからSEが検出された。
ワクチン群では、コントロール群と比べ、汚染卵数が少なく、クロアカでのSEの菌数が少なかったこと、さらに卵巣と脾臓でのSEの検出率が低かったことから、本ワクチンは有効であると考えられた。本鶏モデルは高率に汚染卵を産出し、また、ワクチン接種により、SE汚染卵数が有意に低下したことから、本鶏モデルは試作ワクチンの汚染卵産出防御効果を評価するのに有用であると考えられた。
結論
卵管膣部内にSEを直接投与することにより、高率に汚染卵が産出されることが再確認された。今回用いた不活化ワクチンの接種により、汚染卵産出率が有意に減少し、本鶏モデルは試作ワクチンの汚染卵産出防御効果を評価するのに有用であると考えられた。

公開日・更新日

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