精神障害者の退院促進と地域生活支援のための多職種によるサービス提供のあり方とその効果に関する研究

文献情報

文献番号
201027002A
報告書区分
総括
研究課題名
精神障害者の退院促進と地域生活支援のための多職種によるサービス提供のあり方とその効果に関する研究
課題番号
H20-障害・一般-004
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 順一郎(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所社会復帰研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 萱間 真美(聖路加看護大学)
  • 大嶋 巌(日本社会事業大学)
  • 西尾 雅明(東北福祉大学)
  • 瀬戸屋 雄太郎(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所社会復帰研究部 )
  • 瀬戸屋 希(聖路加看護大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
7,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ア.重度精神障害者を地域で支援する多職種サービスの内容及び役割、イ.訪問看護等、地域支援サービスの効果、ウ.ACT等多職種サービスの立ち上げ支援方法、エ.今後のデイケアのあり方、を明らかにする。
研究方法
1)ACT、訪問看護等のサービス分析
ACT、訪問看護、精神科デイケア各約10カ所・各最大10名の2年間の追跡調査
2)精神科訪問看護のケア内容と効果に関する研究
訪問看護を新規開始した患者200名を対象に2年間の追跡調査
3)ACT等多職種サービスの立ち上げ支援研究
ACTを立ち上げた、又は準備中の5事業体を対象とした調査及びヒアリング
4)デイケアの機能の実態把握の研究
全国の精神科デイケア等実施機関1654ヶ所に郵送調査
結果と考察
1)ACT群では多職種による中頻度・長めのコンタクト時間・地域も含めた訪問支援が展開。具体的支援の実施率が高く包括的。訪問看護群は低頻度・短いコンタクト時間。観察・アセスメント領域の支援実施率が高くモニタリング機能の重視が示唆。デイケア群は高頻度・長めのコンタクト時間が特徴的だが個別的関与が少なく支援場所は事業所に限定。生活の具体的状況への対応に限界。
2)6ヵ月後調査では訪問看護ステーション(ST)群の73.2%、病院訪問看護群の81.6%が訪問を継続。1年後で各70.7%、77.6%。中断理由では入院による一時中断が最多。ST群では転居、経済的理由による中断、医療機関変更、症状安定による終了も。1年間での入院経験者はST群で36.6%、病院群31.6%。
3)以下の重要項目が挙げられた。研修面)先行チームによる研修、クロストレーニング。経営面)経営や制度の研修、先行チームの情報収集。連携面)先行チームによる講演、地域の各種関係会議への出席。チーム形成面)問題解決の共有等の企画、スタッフ家族へのサポート等。
4)デイケアの利用者への訪問支援は55.1%の機関で実施。うち59.6%が院内訪看と連携、34.1%でデイのスタッフが週1回以上の訪問を提供。ひきこもり状態の人への訪問支援はデイケアスタッフの割合が多かった。
結論
民間精神科病院が、医療の中核を担ってきた本邦の精神科医療において、病床削減・多職種アウトリーチチームあるいはデイケアの充実を同時に行い、精神科スタッフの役割のシフトの実施が必要。本研究はその一助となることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2011-09-05
更新日
-

文献情報

文献番号
201027002B
報告書区分
総合
研究課題名
精神障害者の退院促進と地域生活支援のための多職種によるサービス提供のあり方とその効果に関する研究
課題番号
H20-障害・一般-004
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 順一郎(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所社会復帰研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 萱間 真美(聖路加看護大学)
  • 大嶋 巌(日本社会事業大学)
  • 西尾 雅明(東北福祉大学)
  • 瀬戸屋 雄太郎(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所社会復帰研究部)
  • 瀬戸屋 希(聖路加看護大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ア.重度精神障害者を地域で支援する多職種サービスの内容及び役割、イ.訪問看護等、地域支援サービスの効果、ウ.ACT等多職種サービスの立ち上げ支援方法、エ.今後のデイケアのあり方、を明らかにする。
研究方法
1)ACT、訪問看護等のサービス分析
ACT、訪問看護、精神科デイケア各約10カ所・各最大10名の2年間の追跡調査
2)精神科訪問看護のケア内容と効果に関する研究
訪問看護を新規開始した患者200名を対象に2年間の追跡調査
3)ACT等多職種サービスの立ち上げ支援研究
ACTを立ち上げた、又は準備中の5事業体を対象とした調査及びヒアリング
4)デイケアの機能の実態把握の研究
全国の精神科デイケア等実施機関1654ヶ所に郵送調査
結果と考察
1)ACT群では多職種による中頻度・長めのコンタクト時間・地域も含めた訪問支援が展開。具体的支援の実施率が高く包括的。訪問看護群は低頻度・短いコンタクト時間。観察・アセスメント領域の支援実施率が高くモニタリング機能の重視が示唆。デイケア群は高頻度・長めのコンタクト時間が特徴的だが個別的関与が少なく支援場所は事業所に限定。生活の具体的状況への対応に限界。
2)6ヵ月後調査では訪問看護ステーション(ST)群の73.2%、病院訪問看護群の81.6%が訪問を継続。1年後で各70.7%、77.6%。中断理由では入院による一時中断が最多。ST群では転居、経済的理由による中断、医療機関変更、症状安定による終了も。1年間での入院経験者はST群で36.6%、病院群31.6%。
3)以下の重要項目が挙げられた。研修面)先行チームによる研修、クロストレーニング。経営面)経営や制度の研修、先行チームの情報収集。連携面)先行チームによる講演、地域の各種関係会議への出席。チーム形成面)問題解決の共有等の企画、スタッフ家族へのサポート等。
4)デイケアの利用者への訪問支援は55.1%の機関で実施。うち59.6%が院内訪看と連携、34.1%でデイのスタッフが週1回以上の訪問を提供。ひきこもり状態の人への訪問支援はデイケアスタッフの割合が多かった。
結論
民間精神科病院が、医療の中核を担ってきた本邦の精神科医療において、病床削減・多職種アウトリーチチームあるいはデイケアの充実を同時に行い、精神科スタッフの役割のシフトの実施が必要。本研究はその一助となることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2011-09-05
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201027002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
今後の我が国の地域精神科医療の主力になるであろう、ACT(Assertive Community Treatment:包括型地域生活支援プログラム)、精神科訪問看護、精神科デイケアについて、現時点における、対象者像、サービスの内容、転機について、1年間のフォローアップ調査により明らかにした。
今後、我が国において地域精神保健を進めていく上で、その機能分化やシステム作りについて検討していく必要があり、この成果は、今後の地域精神科医療のモデルづくりに基礎となる有用なデータとなる。
臨床的観点からの成果
ACT、訪問看護、デイケアの具体的なサービスの領域、内容、頻度、方法などを明確にした。それぞれのサービスの差異が明確であり、地域精神医療のシステム形成に、これらのサービスをどのように位置づけるかについて一定の示唆を得ることが出来た。
このことで、重要精神障害者を地域にて支えるこれらのサービスが今後より一層普及することが期待される。また、国際的に見ても地域精神保健サービスが十分でない地域は多く、国際学会等で成果を発表することにより、それらの国々への参考となったと考えられる。
ガイドライン等の開発
ACT立ち上げ支援マニュアルの作成
その他行政的観点からの成果
今後、ACT、訪問看護、デイケアの診療報酬上の評価を行うにあたって、基礎資料の一部となる。とくに、訪問系の精神医療活動は、いまだ評価が低いため、有用なサービスのありかたを示し、その診療報酬上の評価を提案することは、脱施設化の施策を進めるにあたって重要である。
その他のインパクト
デイケアについては今後、アウトリーチも含め、利用者の地域生活に益するような、一定の質の確保が必要。そのための標準化のための資料になりうる。また、訪問看護も多職種による訪問チームへのリフォームが求められており、その指針をこの調査資料から得ることが出来る。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
中医協資料に本研究での結果を使用http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001bu83.html 資料(総-4-2)のうちの47,48ページのパワーポイント
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
吉田光爾,瀬戸屋雄太郎,瀬戸屋希,他
重症精神障害者に対する地域精神保健アウトリーチサービスにおける機能分化の検討;Assertive Community Treatmentと訪問看護のサービス比較調査(続報) ~1年後追跡調査からみる支援内容の変化~
精神障害とリハビリテーション , 17 (1) , 39-49  (2013)
原著論文2
吉田光爾,瀬戸屋雄太郎,瀬戸屋 希,他
重症精神障害者に対する地域精神保健アウトリーチサービスにおける機能分化の検討;Assertive Community Treatmentと訪問看護のサービス比較調査より
精神障害とリハビリテーション , 15 (1) , 54-63  (2011)

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
2017-05-23

収支報告書

文献番号
201027002Z