障害者の自立支援と「合理的配慮」に関する研究-諸外国の実態と制度に学ぶ障害者自立支援法の可能性-

文献情報

文献番号
201027001A
報告書区分
総括
研究課題名
障害者の自立支援と「合理的配慮」に関する研究-諸外国の実態と制度に学ぶ障害者自立支援法の可能性-
課題番号
H20-障害・一般-001
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
勝又 幸子(国立社会保障・人口問題研究所 情報調査分析部)
研究分担者(所属機関)
  • 遠山 真世(立教大学 コミュニティ社会福祉学部)
  • 土屋 葉(愛知大学 文学部)
  • 岡部 耕典(早稲田大学 文学学術院)
  • 星加 良司(東京大学大学院 教育学研究科)
  • 白瀬 由美香(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障応用分析研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
目的は障害者自立支援法の理念である自立と完全社会参加と平等を理論的及び実践的に捉えながら、将来日本が「障害者権利条約」を批准するための条件整備に必要な要件を明らかにすることである。本研究の特色は条約批准を前提として、障害者への「合理的配慮」を達成するために、日本において何を改善・整備しなければならないかを具体的に示唆していくことを目標とした。
研究方法
本研究は3年計画である。最終年度にあたる平成22年度は、本研究の集大成として、各分担研究者および研究協力者ごとに過去2年間の研究をまとめ、政策提言につなげることを目標とした。特に、各研究者に対しては政策のなかで「合理的配慮」を位置付けことを意識してまとめるように依頼した。
結果と考察
(1)就労:欧米諸国の「合理的配慮」の具体的な内容を概観・整理し、「保護雇用」について概念と国内外における実践を紹介した。 (2)地域生活と生活の自律:アメリカとカナダにおけるパーソナルアシスタントを基礎とする援助付自律のスキームについて紹介・評価した。 (3)地域格差と地方分権:国と自治体との関係は、給付はナショナルスタンダードではなく「ナショナルミニマムの保障」を国が行い、自治体は地域のニーズに合った実行に役割があると結論づけた。また、イギリスの考察から、自治体をサービスの直接的な提供者又は間接的な調整者から、情報提供者・権利擁護者への役割をシフトさせる必要がある。(4)障害種別:精神障害者の就労場面における「合理的配慮」についてまとめ、障害別個別配慮の必要性を示した。(5)ジェンダー:障害のある女性の「役割への支援」の重要性を明らかにし、母親役割への支援の重要性を確認した。第3次男女共同参画基本計画において、子育てをする障害がある女性の課題、また、DV被害に多い、障害がある女性の課題を記していたことを評価しながらも、具体的な支援の不足を指摘した。
結論
合理的配慮の内容を決定する過程の特徴には「個別化」と「協議・交渉過程」の両方が不可欠要素、障害者福祉にそれらの「プロセスの導入」必要であることをあらわしている。合理的配慮は、一方的な専門家の介入ではなく、「当事者の判断を如何に支援するか」が重要である。障害者権利条約批准後に専門家に期待されることのひとつは、「合理的配慮」を、支援に組み込み、当事者の自律(自立)の実現に寄与することである。

公開日・更新日

公開日
2011-06-02
更新日
-

文献情報

文献番号
201027001B
報告書区分
総合
研究課題名
障害者の自立支援と「合理的配慮」に関する研究-諸外国の実態と制度に学ぶ障害者自立支援法の可能性-
課題番号
H20-障害・一般-001
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
勝又 幸子(国立社会保障・人口問題研究所 情報調査分析部)
研究分担者(所属機関)
  • 遠山真世(立教大学 コニュニティ社会福祉学部)
  • 土屋 葉(愛知大学 文学部)
  • 岡部 耕典(早稲田大学 文学学術院)
  • 星加 良司(東京大学 大学院 教育学研究科)
  • 白瀬 由美香(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障応用分析研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、障害者権利条約の批准を見据えて、障害者政策における解決すべき課題を、「合理的配慮」という言葉の理解を深めながら、多方面から検討することを目的に実施された。1年目が「障害者権利条約」を障害者の自立と完全社会参加から理解する、2年目が当事者が求める「合理的配慮」を理解する、3年目が実際の政策のなかで「合理的配慮」を位置付けるとした。
研究方法
研究体制は5名の分担研究者及び11名の研究協力者を組織した。(以下、分担研究者と研究協力者を総称して参加研究者と呼ぶ。)研究の進め方としては、研究会方式をとった。参加研究者には、年度当初に、研究目標の設定を依頼し、年度末にその目標に照らしあわせて研究報告を行い原稿の寄稿をもとめた。障害者権利条約の条文のなかから焦点を当てる条文を選び、「合理的配慮」をキーワードとして、研究の視点に共通性を確保した。また、サブタイトルに明記したように、国際比較の視点を重要視して、諸外国の障害者政策に関する知見を考察に含めることを求めた。3年間で19回の研究会を開催し、 延べ12名の講師を招いて講義を受けた。また、最終年には外国人研究者招へいを機に公開研究会を実施した。
結果と考察
主な結果としては、福祉的就労・保護雇用などの、合理的配慮を伴う就労形態について、自立支援法で移行期にある授産施設や福祉作業所について、インタビュー調査を実施し課題を整理した。社会的作業所などの障害者にとっての第3の雇用機会の創出についても情報を収集した。パーソナルアシスタント制度やその財源調達方法インディペンデントファンドなどの北米における調査から、合理的配慮を組み込んだ地域生活の制度設計の必要性があきらかになった。
結論
合理的配慮との実態についての結論は、定義としてではなく、合理的配慮の内容を決定する過程の特徴には「個別化」と「協議・交渉過程」の両方が不可欠要素であるという視点である。
「合理的配慮の欠如が障害者の人権を脅かすものである」というコンセンサスは人々の間で簡単にとれるとは思われない。例えばアメリカのADAにおける多くの訴訟により、差別の実態が明らかになるプロセスが必要であろう。一方で、すでに地域社会や労使関係の中で実現されている合理的配慮の存在を壊すようなことが無いよう、訴訟や不服申し立てのような手続きだけに依存した硬直的な制度や政策にならぬような注意が必要である。

公開日・更新日

公開日
2011-06-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-03-01
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201027001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
障害者権利条約において差別の新定義として「合理的配慮の欠如」が提起されている。「合理的配慮」を労働・福祉・制度など様々な側面から理解するために、学際的なアプローチができた。
臨床的観点からの成果
精神障害者の一般就労については、精神保健福祉専門職の視点からの分析が行われた。
ガイドライン等の開発
知的障害者の生活自律については、米国カリフォルニア州の自立生活支援の研究から明らかにした。知的障害者の支援された意思決定について、カナダの制度の研究から明らかにした。
その他行政的観点からの成果
障害者の支援付雇用については、社会的事業所など(箕面市・滋賀県・札幌市等)の実態についてフィールド調査をもとに紹介した。
その他のインパクト
公開シンポジウムの開催:ジェンダーと障害「障害のある女性にとって合理的配慮とは何か」2010年12月4日(土)場所:戸山サンライズ大研修室

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
17件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
19件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
岡部耕典
知的障害者が『自分の家』で暮らすための支援―アメリカ・カリフォルニア州のサポーテッドリビング・サービス
ノーマライゼーション , 20 (12) , 44-47  (2009)
原著論文2
中原 耕
居住に関する権利と施設入所-国連の障害者政策を通して-
同志社大学大学院社会福祉学論集 ,  (24) , 24-41  (2010)
原著論文3
岡部耕典
ポスト障害者自立支援法の福祉政策
明石書店  (2010)
原著論文4
岡部耕典
第7章 自立生活
松井亮輔・川島聡 編『概説障害者権利条約』法律文化社 , 95-110  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201027001Z