新しいアッセイ法による認知症治療薬の効果判定

文献情報

文献番号
201026021A
報告書区分
総括
研究課題名
新しいアッセイ法による認知症治療薬の効果判定
課題番号
H22-認知症・若手-008
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
二井 勇人(東北大学 大学院農学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 石浦章一(東京大学 大学院総合文化研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
2,726,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アルツハイマー病の原因となる、アミロイドβ蛋白質(Aβ)の生成には、β、γセクレターゼの2つのプロテアーゼが関与する。私たちは、酵素機能が依然として不明なヒトγセクレターゼ複合体を酵母に再構成し、試験管内でγセクレターゼ活性を測定できる系を世界で初めて開発した。また、βセクレターゼ(BACE1)について、活性化機構の知見を積み重ねて阻害剤を開発してきた。本研究の目的は、β、γセクレターゼの酵素機能を解明し、私たちが明らかにした特徴から新たな治療法を提案することである。
研究方法
ヒトγセクレターゼを構成する4つの遺伝子(プレセニリン、ニカストリン、Aph-1、Pen2)とヒトアミロイド前駆体(APP)断片を酵母細胞内に導入し、その膜画分を調製し、試験管内でAβを生成する事が可能になった。Aβの生成に影響を及ぼす、①反応条件、②サブユニットのアイソフォーム、③家族性アルツハイマー病プレセニリン変異体を解析した。次に、β切断部位にフェニルノルスタチンを配した種々の新規KMI化合物によるAβ生成阻害活性を、BACE1安定発現HEK293細胞を用いてスクリーニングした。
結果と考察
①γセクレターゼの酵素学的性質を解析した結果、アルツハイマー病患者脳において減少するリン脂質プラズマローゲンによって、γセクレターゼが阻害された。また、プロリン異性化酵素Pin1により、毒性の強いAβ分子種(Aβ42とAβ43。数字はアミノ酸の長さ。)が増加した。本研究により、Aβ生成へのプラズマローゲンとPin1の直接的な関与が証明された。
γセクレターゼ活性測定の結果、②プレセニリン2は、プレセニリン1と比較して10分の1程度のAβ生成活性しかない事、③家族性アルツハイマー病のプレセニリン変異体は、野生型に比べて低いAβ生成活性しかもたないが毒性の高いAβ分子種の割合は上昇する事が明らかになった。
新規KMI化合物から、脳内・細胞内への透過性や安定性における改善が期待される非ペプチド性化合物を見出した。
結論
酵母Aβ生成系を用いて、γセクレターゼの酵素学的な性質を解明した。プラズマローゲンやプロリン異性化酵素Pin1との関連は、これまでには考えられていなかった全く新しい治療への方向性を生み出した。また、新規KMI化合物の同定をうけ、来年度以降γセクレターゼ阻害剤の探索を行い、両者の併用によるモデルマウスの治療実験を行いたい。

公開日・更新日

公開日
2011-06-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201026021Z