文献情報
文献番号
201026008A
報告書区分
総括
研究課題名
かかりつけ医のための認知症の鑑別診断と疾患別治療に関する研究
課題番号
H21-認知症・一般-005
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
池田 学(熊本大学 大学院生命科学研究部)
研究分担者(所属機関)
- 橋本 衛(熊本大学 医学部)
- 水上勝義(筑波大学 大学院人間総合科学研究科)
- 博野信次(神戸学院大学 人文学部)
- 今村 徹(新潟医療福祉大学 大学院医療福祉学研究科)
- 数井裕光(大阪大学 大学院医学系研究科)
- 森 悦朗(東北大学 大学院医学系研究科)
- 上村直人(高知大学 医学部)
- 福原竜治(愛媛大学 医学部)
- 品川俊一郎(東京慈恵会医科大学)
- 荒井由美子(国立長寿医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
18,810,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
各認知症性疾患でみられるBPSDの特徴について検討を行い、かかりつけ医用の認知症鑑別診断マニュアルの基礎資料を作成する。
研究方法
疾患別の認知症の精神症状・行動障害(BPSD)の頻度と内容、各症状に対する介護者の負担感の調査をNPIなど共通の評価尺度で行い、各施設のデータを専用のデータベースに保存する。並行して各疾患とBPSDに関する個別の研究を実施する。得られた疾患別のBPSDの頻度と内容などを参考にし、日常診療の中で実施可能な、各認知性疾患の早期鑑別診断方法の検討を継続する。
結果と考察
嫉妬妄想を認めた認知症患者の半数はレビー小体型認知症(DLB)であり、嫉妬妄想を認めた頻度もDLB患者で最も高く、鑑別診断に有用である可能性が示唆された。DLBの前駆段階のうつ状態についての検討では、DLBと診断される前に気分障害と診断されることが多いこと、DLBの前駆段階でみられるうつ状態では、希死念慮を示す例が比較的多いことが示唆された。また、DLBの中核症状である認知機能変動を評定するShort Fluctuations Questionnaire(SFQ)の妥当性を検討し、SFQはDLBの認知機能変動を検出するツールとして、かかりつけ医の認知症臨床の現場で有用であると考えられた。左前部視床梗塞の検討では、言語性記憶障害,言語障害(失名辞と喚語困難),および無為が特徴であることが示された。また、アルツハイマー病(AD)患者において、MRIにて皮質下虚血性病変を認める群の方が実行機能、注意などの前頭葉機能障害が有意に強く、さらに幻覚、妄想が重度であり、ADにおける皮質下虚血性病変は、妄想の危険因子となる可能性が示された。また、ADにおける興奮の神経基盤を検討した結果、ADの興奮は「抵抗」、「暴力」に分類可能であり、それぞれには異なる神経基盤が関与していることが示唆された。認知症の未治療期間とBPSDの検討では、認知症患者では未治療期間がBPSDに関連することが示された。これらの得られた知見をふまえて、パンフレット「アルツハイマー病の正しい理解」、「レビー小体型認知症の正しい理解」を作成し、かかりつけ医へ配布し、認知症診療技術の向上をはかった。
結論
疾患別のBPSDの頻度と内容、各症状に対する介護者の負担感の調査を実施した。特に、今年度はDLBならびに皮質下虚血性病変を伴うADのBPSDの特徴を明らかにした。
公開日・更新日
公開日
2011-07-08
更新日
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