リン酸化タウの凝集阻害及び分解促進を標的とした新しいアルツハイマー病の根本治療法に関する研究

文献情報

文献番号
201026005A
報告書区分
総括
研究課題名
リン酸化タウの凝集阻害及び分解促進を標的とした新しいアルツハイマー病の根本治療法に関する研究
課題番号
H21-認知症・一般-002
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
武田 雅俊(大阪大学大学院 医学系研究科 情報統合医学講座(精神医学))
研究分担者(所属機関)
  • 工藤 喬(大阪大学大学院 医学系研究科 情報統合医学講座(精神医学))
  • 高島 明彦(理化学研究所 脳科学総合研究センター)
  • 長谷川 成人(財団法人東京都医学研究機構 東京都精神医学総合研究所)
  • 田中 稔久(大阪大学大学院 医学系研究科 情報統合医学講座(精神医学))
  • 数井 裕光(大阪大学大学院 医学系研究科 情報統合医学講座(精神医学))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
11,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
タウ凝集阻害やその分解促進を行うことでシナプス消失、神経脱落を抑制し、ADの根本的治療法を確立する事を目的とする。
研究方法
顆粒状タウ凝集体阻害物質の探索として、化合物バンクから化合物マイクロアレイを作製し、それらをリコンビナントヒトタウ溶液と反応後、抗タウ抗体によって陽性の化合物を得た。重合核導入によりタウ凝集体を形成する新規細胞モデルの構築は、精製タウをヘパリン存在下で線維化し、リポフェクションで3リピート/4リピートタウ発現細胞に導入した。小胞体(ER)ストレスによる神経細胞内タウ凝集の検討では、タウの5’UTRの影響や、タウのユビキチン化およびタウのE3ライゲースであるCHIPのERストレス下での変化についても検討した。シャペロンBiPを誘導するコンパウンドBIXのERストレス負荷後投与の効果を検討するため、中大脳動脈閉塞マウスに虚血後脳室内投与し効果を検証した。ADに対するタウ線維凝集阻害物質の臨床治験をおこなうため、ADの臨床症状を広範に評価する項目を検討した。
結果と考察
マイクロアレイにより選ばれた顆粒状タウ凝集阻害物質候補の中から、SPRによって親和性の高い顆粒状タウ凝集体凝集阻害物質約100種類が得られた。タウ重合核導入モデルでは、4リピート(4R)タウを発現する細胞に4Rタウ線維を導入するとリン酸化タウ陽性の凝集体形成が観察された。このモデルは、今後タウ凝集阻害物質のスクリーニングに役立つと考えられる。ERストレスはタウ蛋白の上昇をもたらすし、ERストレス後のタウに結合するユビキチン量は低下し、CHIP量の低下が観察された。この現象もタウ凝集に対する薬物開発に大きなヒントとなると考えられる。BIXのERストレス負荷後投与の効果についての検討を行ったところ、虚血後の5分後と3時間後BIX投与が、有意に虚血巣を減少させることができた。脳虚血はERストレスのモデルであり、タウ凝集を阻害する意味でBIXの効果が期待された。また、タウオパチーの臨床治験に特化した診断プロトコールの作成し、臨床治験に備えた。ADの認知機能の評価には、信頼性、および過去の研究における使用頻度からMMSEとADASが有用であると考えられた。
結論
タウの凝集阻害と分解促進に観点を絞って治療法を検討した結果、顆粒状タウ凝集阻害物質やシャペロン誘導剤が、候補としてあげられた。

公開日・更新日

公開日
2011-06-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201026005Z