Pasteurella multocida の病原因子の作用機構の研究

文献情報

文献番号
199700827A
報告書区分
総括
研究課題名
Pasteurella multocida の病原因子の作用機構の研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
堀口 安彦(大阪大学微生物病研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 新興・再興感染症研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
平成10(1998)年度
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 ヒトパスツレラ症の原因菌であるPasteurella multocida の病原因子としての毒素(PMT)の役割を解明するため、その作用機構を分子レベルで解析することを試みた。PMTの生物活性には Bordetella 壊死毒(DNT)のそれと多数の共通点が認められている。そこで我々はPMTの作用機序を解明するための第一段階として類似点の多いPMTとDNTの両毒素の細胞に対する作用を比較検討した。
研究方法
 1)DNA合成に対する作用:マウス線維芽細胞Swiss3T3を用いて3H-thymidineの取り込み試験を行なった。2)骨芽細胞の分化に対する作用:マウス骨芽細胞MC3T3-E1 の分化指標としてalkaline phosphatase (ALP)活性を測定した。3)低分子量GTP結合蛋白 Rho に対する作用:MC3T3-E1に毒素を作用させた後、細胞破砕物にC3 酵素を加え、[32P]NAD 存在下でADP-リボシル化しSDS-PAGE後、オートラジオグラフィーでRhoを検出し、電気泳動移動度を比較した。4)アクチン線維の染色:細胞を固定後、ローダミン-ファロイジンで染色した。5)細胞内フォスフォリパーゼ活性の測定:3H-inositolで標識した細胞を破砕し、生成された3H-inositol phosphate 量を測定した。
結果と考察
 PMTとDNTは同様に毒素作用後12時間の遅延時間の後、細胞のDNA合成を促進した。PMTとDNTは0.1 ng/ml以上の濃度で、ALP活性の発現を顕著に抑制 した。PMTもDNT同様に細胞のアクチン線維の収束を引き起こした。PMT処理細胞ではDNT処理細胞で見られるような脱アミド化されたRhoは認められなかった。PMT処理細胞ではフォスフォリパーゼCの活性が顕著に亢進しているが、DNT処理細胞ではそのような変化が認められないことがわかった。我々はこれまでにDNTがRhoに直接作用して下流のRho依存性の情報伝達系を活性化することを報告してきた。今回の結果からPMTの作用機序はDNTのそれとは明らかに異なるが、部分的にはDNTと同様にRho依存性情報伝達系を介して、その作用を発現していることがわかった。Rhoの上流にはPMTで活性化されるフォスフォリパーゼCがあるのではないかと考えられる。
結論
 PMTは標的細胞のフォスフォリパーゼcを活性化する。これと連鎖してRhoが活性化され、見かけ上DNTと類似の効果を標的細胞に起こすものと考えられた。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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研究報告書(紙媒体)