アミロイドイメージングを用いたアルツハイマー病の発症・進展予測法の実用化に関する多施設大規模臨床研究

文献情報

文献番号
201026002A
報告書区分
総括
研究課題名
アミロイドイメージングを用いたアルツハイマー病の発症・進展予測法の実用化に関する多施設大規模臨床研究
課題番号
H20-認知症・一般-005
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
石井 賢二(地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター 研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 岩坪 威(東京大学大学院 医学系研究科 神経病理学分野)
  • 渡辺 恭良(独立行政法人 理化学研究所 分子イメージング科学研究センター)
  • 千田 道雄(財団法人先端医療振興財団 先端医療センター 映像医療研究開発部門)
  • 須原 哲也(独立行政法人 放射線医学総合研究所 分子神経イメージング研究グループ)
  • 田代 学(東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター)
  • 加藤 隆司(独立行政法人 国立長寿医療研究センター 脳機能画像診断開発部)
  • 尾内 康臣(浜松医科大学 分子イメージング先端研究センター)
  • 塩見 進(大阪市立大学大学院 医学研究科 核医学)
  • 松成 一朗(先端医学薬学研究センター 臨床研究開発部)
  • 百瀬 敏光(東京大学医学部付属病院 放射線科)
  • 織内 昇(群馬大学大学院 医学系研究科 放射線診断核医学)
  • 佐藤 元(東京大学大学院 医学系研究科 公衆衛生学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
19,044,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、認知症の最大の原因であるアルツハイマー病(AD)の克服に向けて、病態の進展を最も早期から客観的に示す指標(サロゲートマーカ)として期待されているアミロイドイメージングの検査方法を標準化し、ADの発症・進展予測法を確立、実用化する。これにより、AD根本治療薬の治験における評価スタンダードを提供するとともに、治療対象者を早期に抽出し、認知症による要介護者減少のための認知症検診の実用化への道を拓く。
研究方法
本邦でアミロイドイメージングの臨床研究を実施している全てのPET施設を組織することを目標に、J-ADNI参加施設を核とし、J-ADNI外の施設も研究協力者として取り込み、共通の標準化検査法を普及させる。厚労科学・ナノメディシン研究課題による新規製剤開発プロジェクトと連携し、その症例蓄積と臨床評価を促進すとともに、厚労省長寿科学・経産省NEDOによるJ-ADNI臨床研究プロジェクトと強力に連携し、そのアミロイドイメージング評価を担い、技術的な支援を行う。これまでに本研究により薬剤合成、撮像の標準化とプロトコル作成が完了しており、現時点でアミロイドイメージングを実施している国内20施設がこれに準拠した検査を実施し、症例の蓄積を継続した。
結果と考察
平成20年度は [C-11]PiB PET実施9施設と[C-11]BF-227 PET実施2施設で研究体制を組織し、薬剤合成、撮像法のプロトコル策定、施設認定を実施し検査法の標準化を行った。平成21-22年度は実施施設基盤を更に整え、症例を蓄積し、技術的問題の解決、基礎的な検討を行うと共に、種々の解析方法の開発を行った。本邦症例の健常者(HC)、軽度認知障害(MCI)、AD各群における陽性率、はHC 21%、MCI 71%、AD 89%であり、APOE ε4保有者における陽性率の高さが明らかとなった。国外のUS-ADNIやAIBL研究と互換性のあるデータが得られ、アミロイド陽性率やAPOE ε4の影響について人種間差は少ないことが分かった。
結論
3年の目標であるアミロイドイメージングの国内における標準化と検査施設基盤の構築を達成した。今後、更に技術的検討、解析法の開発を重ねると共に、長期追跡例、剖検例を含めた症例の蓄積を行い、アミロイドイメージングの臨床的意義を明らかにし、アルツハイマー病の発症予測法の確立を目指す。

公開日・更新日

公開日
2011-06-28
更新日
-

文献情報

文献番号
201026002B
報告書区分
総合
研究課題名
アミロイドイメージングを用いたアルツハイマー病の発症・進展予測法の実用化に関する多施設大規模臨床研究
課題番号
H20-認知症・一般-005
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
石井 賢二(地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター 研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 岩坪 威(東京大学大学院 医学系研究科 神経病理学分野)
  • 渡辺 恭良(独立行政法人 理化学研究所 分子イメージング科学研究センター)
  • 千田 道雄(財団法人先端医療振興財団 先端医療センター 映像医療研究開発部門)
  • 須原 哲也(独立行政法人 放射線医学総合研究所 分子神経イメージング研究グループ)
  • 田代 学(東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター)
  • 加藤 隆司(独立行政法人 国立長寿医療研究センター 脳機能画像診断開発部)
  • 尾内 康臣(浜松医科大学 分子イメージング先端研究センター)
  • 塩見 進(大阪市立大学大学院 医学研究科 核医学)
  • 松成 一朗(先端医学薬学センター 臨床研究開発部)
  • 百瀬 敏光(東京大学医学部付属病院 放射線科)
  • 織内 昇(群馬大学大学院 医学系研究科 放射線診断核医学)
  • 佐藤 元(東京大学大学院 医学系研究科 公衆衛生学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、認知症の最大の原因であるアルツハイマー病(AD)の克服に向けて、病態の進展を最も早期から客観的に示す指標(サロゲートマーカ)として期待されているアミロイドイメージングの検査方法を標準化し、ADの発症・進展予測法を確立、実用化する。これにより、AD根本治療薬の治験における評価スタンダードを提供するとともに、治療対象者を早期に抽出し、認知症による要介護者減少のための認知症検診の実用化への道を拓く。
研究方法
本邦でアミロイドイメージングの臨床研究を実施している全てのPET施設を組織することを目標に、J-ADNI参加施設を核とし、J-ADNI外の施設も研究協力者として取り込み、共通の標準化検査法を普及させる。厚労科学・ナノメディシン研究課題による新規製剤開発プロジェクトと連携し、その症例蓄積と臨床評価を促進すとともに、厚労省長寿科学・経産省NEDOによるJ-ADNI臨床研究プロジェクトと強力に連携し、そのアミロイドイメージング評価を担い、技術的な支援を行う。これまでに本研究により薬剤合成、撮像の標準化とプロトコル作成が完了しており、現時点でアミロイドイメージングを実施している国内20施設がこれに準拠した検査を実施し、症例の蓄積を行っている。
結果と考察
平成20年度は [C-11]PiB PET実施9施設と[C-11]BF-227 PET実施2施設で研究体制を組織し、薬剤合成、撮像法のプロトコル策定、施設認定を実施し検査法の標準化を行った。平成21-22年度は実施施設基盤を更に整え、症例を蓄積し、技術的問題の解決、基礎的な検討を行うと共に、種々の解析方法の開発を行った。本邦症例の健常者(HC)、軽度認知障害(MCI)、AD各群における陽性率、はHC 21%、MCI 71%、AD 89%であり、APOE ε4保有者における陽性率の高さが明らかとなった。国外のUS-ADNIやAIBL研究と互換性のあるデータが得られ、アミロイド陽性率やAPOE ε4の影響について人種間差は少ないことが分かった。
結論
当初の目標であるアミロイドイメージングの標準化と国内における施設基盤整備を達成した。今後、更に技術的検討、解析法の開発を重ねると共に、長期追跡例、剖検例を含めた症例の蓄積を行い、アミロイドイメージングの臨床的意義を明らかにし、アルツハイマー病の発症予測法の確立を目指す。

公開日・更新日

公開日
2011-06-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201026002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
アミロイドイメージングの実用化により、アルツハイマー病のアミロイド仮説が人を対象として検証可能となった。本研究による多施設の症例蓄積から、わが国における各臨床区分におけるアミロイド陽性率が明らかとなり、脳内βアミロイド蓄積に対して、年齢とAPOEε4がきわめて強い影響を持つことが示され、これは欧米人と日本人で同様であることがわかった。アミロイドイメージングを病態進展マーカとして、アルツハイマー病の無症候期から発症前期における病態研究と介入研究への道が拓かれた。
臨床的観点からの成果
アミロイド陽性軽度認知障害は高率にアルツハイマー病に移行することが分かった。また、今後の追跡研究により、健常者におけるアルツハイマー病発症予測も可能となる。アミロイドイメージングを軸にアルツハイマー病発症の危険因子、予防因子の探索を進めることができると共に、根本治療薬の開発を加速化できる。また、従来臨床的な鑑別が難しかった非アルツハイマー病型認知症疾患をアミロイド蓄積の有無によって明確に鑑別できることが明らかとなった。アルツハイマー病以外の認知症疾患の病態理解を進めることができる。
ガイドライン等の開発
アミロイド診断薬の薬剤合成、撮像法に関するプロトコル、読影法のガイドライン、被験者に対する結果開示の指針を作成し、現時点でわが国でアミロイドイメージングを実施している全施設がこれに準拠した検査を実施している。また、J-ADNI参加施設のために実施した施設認定を、J-ADNIに参加していない施設でも実施し、技術共有とレベルの向上を図った。
その他行政的観点からの成果
本研究を通して、優れたアミロイドイメージング診断技術と標準的検査法を共有する施設基盤が形成された。これにより、将来の多施設臨床研究や治験に、欧米に遅れることなく対応することができる。アミロイドイメージングによるアルツハイマー病発症予測法と、認知症鑑別診断法が確立することにより、根本治療薬の開発、発症予防法の開発が促進され、アルツハイマー病の発症遅延、介護負担の軽減へとつなげることができると期待される。
その他のインパクト
本研究の内容は、読売新聞、日本経済新聞、共同通信、NHK、Medical Tribune、Carrier Brainなどで紹介された。また、各学会でも取り上げられ、シンポジウムや特別講演などで専門家向けの講演を41回行った。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
32件
その他論文(和文)
21件
その他論文(英文等)
4件
学会発表(国内学会)
91件
学会発表(国際学会等)
29件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
46件
一般向け講演5件、医師・研究者向け講演41件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kambe T, Motoi Y, Ishii K, et al.
Posterior cortical atrophy with [11C]Pittsburgh compound B accumulation in the primary visual cortex.
Journal of Neurology , 257 (3) , 469-471  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
2016-09-13

収支報告書

文献番号
201026002Z