CTL誘導ペプタイドワクチンによるサイトメガロウイルス感染症の克服に関する研究

文献情報

文献番号
199700824A
報告書区分
総括
研究課題名
CTL誘導ペプタイドワクチンによるサイトメガロウイルス感染症の克服に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
角田 卓也(和歌山県立医科大学)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 新興・再興感染症研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国でも、AIDSの蔓延や移植医療の普及、高齢者に対する拡大手術の増加に伴い、免疫抑制によるcompromised hostが問題となっており、AIDSのCMV脳炎や骨髄移植後のCMVによる間質性肺炎・肝炎・腸炎は致死的でさえある。本研究の目的は、生体のウイルス排除機構の中心的役割を担っているCTLを活性化するpeptideをmappingし、免疫ワクチン源とすることでCMV感染症を制御する治療法を確立することである。
研究方法
1.HLA classI拘束性CMV pp65特異的CTLクローンの樹立
CMVはfibroblastには感染するがT細胞には感染しない特性を利用し、CMVを感染させた自己のfibroblastを刺激細胞として用い、CMV特異的CTLを誘導し、さらにlimiting dilusion法で、CMV pp65特異的CTLクローンを樹立した。
2. pp65 truncated recombinant vaccinia virusの樹立
pp65をN末端より100アミノ酸ごと制限酵素でtruncateしたmutation formを作り、vaccinia virusのvectorであるpSC11MCSにligateし種々のrVacをhomologous recombinationで樹立した。
結果と考察
結果=樹立したCTLクローンが、CMV pp65特異的か否かを、full length pp65 rVacに感染した自己のEBV immortalized cell(LCL)を標的細胞としてクローム遊離試験(CRA)で決定し、同様にHLA class I拘束性をfull length pp65 rVacに感染した種々のLCLに対する障害活性および抗HLA class I抗体によるblocking assayにて決定したところ、HLA B35およびHLA A24拘束性pp65特異的CTLクローンの樹立に成功した。full length(606)-pp65 rVac、458(Not I site)-pp65 rVac、383(Hind?site)-pp65 rVac、316(Sma I site)-pp65 rVac、225(BstEII site)-pp65 rVac、122(BsrBI site)-pp65 rVac、0-pp65 rVacを樹立した。また、T7 tag認識シークエンスを組み込み樹立したrVacのタンパク発現をT7 tag抗体を用いWestern blotting法で確認した。樹立したCTLクローンを用いて、各種のpp65 truncated rVacを感染した自己の標的細胞としてCRAを施行したところ、pp65のC末端から数えて225番目までのtruncationでは細胞障害活性は消失せず、122アミノ酸までtruncateすると細胞障害活性を失ったことからcytotoxic peptideは122から225番目の間に存在することが証明できた。
考察=CMV感染症に対して、抗ウイルス薬ガンシクロビルが切り札的に使用されているが、強い骨髄抑制作用と耐性化のため満足する効果を上げていないのが現状である。今回、生体のウイルス排除機能を強化することでCMV感染症を克服すべくCTL誘導cytotoxic peptideのmappingを目的に本研究を実施した。CMV感染に対する免疫療法として、CMVの核マトリックスタンパクであるpp65特異的CTLクローンを誘導し骨髄移植患者に移入する養子免疫療法が施行され、CMV感染症の発症を予防できたとの報告があり、CTLが臨床的にもウイルスを排除することが証明された。われわれが、独自にmappingしたペプタイドをワクチン源として接種することにより、生体内でCTLを強力に誘導することができれば、CMV感染症を阻止できる。われわれの独創的なペプタイドmapping法は、従来のHLA class Iアンカー部位による予測的な方法ではなく、実際にCTLを樹立し、pp65をtruncationしたrecombinant vaccinia virus (rVac)を用いることで確実なペプタイドをmappingできることが特徴である。しかも、 rVacを一度樹立すれば、あらゆるHLA class Iに対するmappingも可能となる。このペプタイドワクチン療法は臨床応用を考慮すると、養子免疫療法で指摘されている特殊な細胞培養施設や、コンタミネーション、さらに治療にかかる膨大な経費など、種々の問題を克服できる。
結論
CMV pp65特異的HLA B35拘束性のcytotoxic peptideのresponsible elementを、pp65をN末端より順にtruncateしたrecombinant Vaccinia Virusを樹立し、決定した。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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研究報告書(紙媒体)