文献情報
文献番号
201024272A
報告書区分
総括
研究課題名
リジン尿性蛋白不耐症の最終診断への診断プロトコールと治療指針の作成に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-217
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 勉(秋田大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 遠藤 文夫(熊本大学 医学部)
- 高柳 正樹(千葉県こども病院)
- 奥山 虎之(国立成育医療研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
リジン尿性蛋白不耐症は臨床的に多様な疾患であり、診断法や治療法として確立されたものは今まで存在せず、加えて希少疾患であることからも最新治療の導入は欧米諸国と比較すると進んでいない。本研究ではわが国における本疾患患者の現況について調査し、効率的な診断、治療法について多施設による前方視的検証モデルの構成を行うことを目指した。また本疾患の主要な治療薬である「L-シトルリン」は欧米で使用が広まりつつあるが、わが国ではこの薬剤は認可されておらず、本邦での治療成績も不明であった。これに関し治療効果を検証することを目的とした。
研究方法
はじめに本疾患の発生状況を調査した。全国の基幹病院小児科3037施設、内科(神経、腎臓、内分泌)1637施設に対し患者診療の有無について質問した。「患者あり」と回答した施設を対象に、二次調査表を郵送し、臨床所見や治療とQOLの評価に関する調査を試みた。「L-シトルリン」に関しては、投与量、検査所見、症状改善度、副作用などに関し評価した。
結果と考察
一次調査では35症例の回答があり、二次調査ではそのうち33症例から回答を得た。
高アンモニア血症の既往、蛋白嫌い、血清LDH・フェリチン上昇の各項目は8割以上の患者で陽性であり、本疾患を考える重要な所見であることが確認された。一方、神経学的合併症を有する症例は以前に比べ減少し、疾患認知度の広がりや薬物治療の奏功している可能性が推測された。
治療においては、30/33例もの症例が「L-シトルリン」を使用しており、過去に多かった安息香酸ナトリウムやフェニル酢酸ナトリウムの使用数は著減していた。この現使用患者30名における有用性の評価では、意識障害や高アンモニア血症の改善、蛋白摂取量増加をはじめとした多彩な臨床効果が報告され、患者のQOLを著明に改善していることが明らかになった。ただし、治療量のシトルリン投与には経済的な問題も存在することから、早期診断の確立に加え、シトルリン投与が円滑に行われる環境の整備もまた重要であることが認識された。
高アンモニア血症の既往、蛋白嫌い、血清LDH・フェリチン上昇の各項目は8割以上の患者で陽性であり、本疾患を考える重要な所見であることが確認された。一方、神経学的合併症を有する症例は以前に比べ減少し、疾患認知度の広がりや薬物治療の奏功している可能性が推測された。
治療においては、30/33例もの症例が「L-シトルリン」を使用しており、過去に多かった安息香酸ナトリウムやフェニル酢酸ナトリウムの使用数は著減していた。この現使用患者30名における有用性の評価では、意識障害や高アンモニア血症の改善、蛋白摂取量増加をはじめとした多彩な臨床効果が報告され、患者のQOLを著明に改善していることが明らかになった。ただし、治療量のシトルリン投与には経済的な問題も存在することから、早期診断の確立に加え、シトルリン投与が円滑に行われる環境の整備もまた重要であることが認識された。
結論
リジン尿性蛋白不耐症の初めての全国調査を展開し、小児科・内科領域から35例の返答を得た。また、 L-シトルリン内服は患者のQOLを大きく改善していることが明らかになり、早期診断の確立に加え、L-シトルリン投与が円滑に行える環境を整えることが必須と考えられた。徐々に成人患者数が増加していることも判明し、長期的な予後を見据えた治療を目指すことが望まれる。
公開日・更新日
公開日
2011-12-27
更新日
-