家族性血小板異常症に関する調査研究

文献情報

文献番号
201024267A
報告書区分
総括
研究課題名
家族性血小板異常症に関する調査研究
課題番号
H22-難治・一般-212
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
黒川 峰夫(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 憲史(日本赤十字社医療センター)
  • 臼杵 憲祐(NTT東日本関東病院)
  • 高橋 強志(三井記念病院)
  • 小松 則夫(順天堂大学医学部)
  • 原田 浩徳(広島大学原爆放射線医科学研究所)
  • 齋藤 明子(独立行政法人国立病院機構 名古屋医療センター臨床研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
13,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
家族性血小板異常症(FPD)は常染色体優性遺伝形式をとり、高率に急性骨髄性白血病(AML)や骨髄異形成症候群(MDS)などを発症する稀な疾患である。この疾患の本態として白血病関連遺伝子RUNX1の変異が発見され、その報告数は増え続けている。本調査研究においては、その実態が殆ど把握されていない希少疾患であるFPDについて、有病率や、診断基準につながる病態の把握を行うとともに、この疾患の自然史や予後など、治療方針の決定につながるデータを収集する。
研究方法
血液疾患の診療に携わる全国の主要な施設に対してアンケート調査を実施し、血小板減少やAMLの家族歴をもつ家系の概数を予測する調査を行った。候補となる家系については、引き続いてその遺伝形式、末梢血血算データ、血小板機能異常の有無、感染症や奇形その他の遺伝性疾患の合併の有無など、疾患の病態の把握につながる基礎データを収集中である。さらに、施設倫理委員会の承認と患者の同意のもと、患者および家族の血液細胞と非血液細胞のゲノムを収集し、RUNX1をはじめとする先天性血小板減少症の遺伝子変異を解析する。
結果と考察
全国の主要な血液疾患診療施設489施設を対象に、罹患家系の抽出を目的とした予備調査を行った。血小板減少の家族歴を認める家系が34家系、そのうちFPDと診断済みの家系が3家系であった。臨床情報が得られた家系が19家系であり、このうち追跡可能な家系が11家系であった。これらについては、詳細な二次調査を行い、さらに現在順次同意を取得し、検体の収集を開始している。さらに、既に発見されているRUNX1変異については、その生物学的な意義を細胞および個体造血において評価している。これまでのFPDの報告は全世界で20家系程度であったが、初めての全国的調査によって血小板減少を伴う家系が34家系認められた。すなわち、FPDの頻度は正しく認識されておらず、適切なフォローを受けることなく白血病発症まで見逃されている可能性がある。
結論
これまで実態が明らかとなっていなかったFPDについて全国調査を行い、新たに候補となる家系を抽出するとともに、臨床所見および遺伝子診断のための検体の収集を開始した。FPDについてはこうした知見を集積することにより疾患の自然史や長期予後を明らかにし、白血病進行の時期の予測や造血幹細胞移植の適応の決定など、治療指針の制定につなげる。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201024267C

成果

専門的・学術的観点からの成果
家族性血小板異常症(FPD)は極めてまれな遺伝性疾患であり、その自然経過や予後、白血病移行の時期などの臨床的な特徴が知られていない。本研究において全国に広く症例を収集することによって、疾患の全体像を明らかにすることを目標とした。本調査によって60家系の血小板減少家系が収集され、その臨床情報や遺伝子変異プロファイルの集積がなされた。またFPDの腫瘍発症における原因遺伝子変異を同定したことから今後の治療法開発や経過観察法の確立につながる可能性がある。上記の成果を論文投稿中である。
臨床的観点からの成果
FPDは稀な疾患であることからこれまで十分に認知されておらず、診断基準や治療指針についても明らかになっていない。今回初めての全国調査により疾患が全国より広く収集され、遺伝子診断を含めた疾患の正確な診断を行い、臨床情報を収集する基盤が初めて構築された。引き続き臨床所見を遺伝子変異と関連付けて収集することにより、診断基準や治療指針の策定につなげる。
ガイドライン等の開発
暫定的な診断基準を作成し、全国レベルでその遺伝形式、末梢血血算データ、血小板機能異常の有無、感染症や奇形その他の遺伝性疾患の合併の有無などの病態把握につながるデータを収集している。FPDについての全例に近い症例とその病態を集積し、登録症例の予後から当疾患の長期予後、臨床経過を明らかにする。さらに、遺伝子変異から長期予後を予測する診断指針を策定する。今後、適切なフォローアップ方法、造血幹細胞移植の適応の有無と治療開始時期の最適化など、治療指針の策定を目指す。
その他行政的観点からの成果
現状では、一元的な症例登録システムが存在しないことから、疾患の自然史など予後予測の根拠となる臨床データは皆無で、不十分な治療や過剰な治療による再発・死亡や患者の苦痛を招く可能性がある。しかも、孤発性の造血器腫瘍の症例の中にRUNX1の変異も報告されており、その一部にFPDからの発症が含まれている可能性もあることから、FPDの実際の頻度は過小評価されている可能性が高い。当調査研究による一元的な症例登録により、疾患の実態把握が可能となる。
その他のインパクト
FPDの正確な頻度や進展のリスク、至適な治療法は世界的にも未解決の課題であり、一元的な症例登録システムによる疾患の集積と遺伝子変異解析を組み合わせた研究は、世界的にも例のない独自のものである。また、当疾患患者の皮膚線維芽細胞から樹立したiPS細胞を用いた解析について学会発表を行い、複数の新聞に取り上げられた。成果については論文投稿中である。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
28件
その他論文(英文等)
53件
学会発表(国内学会)
64件
学会発表(国際学会等)
17件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024267Z