ペルーシド角膜辺縁変性の実態調査と診断基準作成

文献情報

文献番号
201024254A
報告書区分
総括
研究課題名
ペルーシド角膜辺縁変性の実態調査と診断基準作成
課題番号
H22-難治・一般-199
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
島崎 潤(東京歯科大学市川総合病院 眼科)
研究分担者(所属機関)
  • 坪田一男(慶應義塾大学医学部 眼科学教室)
  • 稗田 牧(京都府立医科大学 眼科学教室)
  • 前田直之(大阪大学医学部 視覚情報制御学)
  • 西田幸二(大阪大学医学部 眼科学教室)
  • 大橋裕一(愛媛大学医学部 眼科学教室)
  • 村上 晶(順天堂大学医学部 眼科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、ペルーシド角膜変性症(PMCD)に関して、1.患者数の把握、および男女比、発症年齢、などの基本的な情報の収集、2.円錐角膜、球状角膜など角膜の菲薄化・突出をきたす類縁疾患との関連の調査、3.角膜形状解析、角膜厚測定などの新しい検査結果も加味した診断基準の策定、4.進行例に対する外科的治療実態の把握、5.コラーゲン・クロスリンキングの組織学的変化の検討、の5点を目的として行われた。
研究方法
日本角膜学会の円錐角膜ワーキンググループを基盤として、学会員の所属する施設にアンケートを送付して調査を行った。
結果と考察
27施設より回答。データの得られたPMCDおよびその疑い例の症例数は、320例527眼。うち、PMCDの確定例と判断された症例は72眼、疑い例は259眼であり、残りの196眼(37.2%)は診断基準に当てはまらなかった。PMCDと他疾患、特に類縁疾患である円錐角膜との区別が難しい症例が数多く存在することが判明。通常の診断機器ではなく、スリットスキャン式角膜トポグラファ、ペンタカム・前眼部光干渉断層計などの前眼部3次元解析装置による角膜厚分布の測定が正しい診断に欠かせないと考えられる。
患者背景では、男女比が約3:1と男性に多く、片眼性の症例が約3分の1を占めていた。また、アレルギー素因が全体の30%強に認められた。推定発症年齢では、30歳以上と考えられる例が約4割以上を占めていた。
患者情報の内容を吟味したうえで、分担研究者とのディスカッションを重ね、今回世界で初めてPMCDの定義と診断基準を策定した。
今回の検討は、医療機関レベルの解析であり、PMCDの有病率を調べることはできなかった。今後はpopulation-based studyなどの疫学調査によって、疾患頻度を調べることが重要と考えている。その意味でも、今回の検討で疾患の定義と診断基準の作成に至った意義は大きいと考えられる。
結論
ペルーシド角膜変性症に関して、全国調査を行って多数例について解析を行い、初めて定義と診断基準を作成した。これにより、今後本疾患の診断・治療が進むことが期待される。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201024254C

成果

専門的・学術的観点からの成果
今回、500眼を超えるPMCD症例(疑い例を含む)を集め、これまで類を見ない多数例の解析を行うことできた。わが国のPMCD患者は男性に多く、また片眼にのみ異常が認められた例が約3分の1あるなど、患者像が欧米のそれと異なっていた。また、アレルギー素因を有するものが約30%に認められ、類縁疾患である円錐角膜との類似性が示唆された。一方、発症年齢では30歳以上と考えられる例が約4割以上を占めており、20歳前に発症する例がほとんどとされる円錐角膜と対比をなしていた。
臨床的観点からの成果
今回の調査の結果、PMCDは類縁疾患である円錐角膜との移行形も多く存在する一方、その診断は各施設で異なる基準で行われていることが分かった。PMCD患者が高率で屈折矯正手術施設を受診していることが明らかとなったが、本患者がLASIKなどの屈折手術を受けると高率に合併症を生じるため、術前に正しく検出されることが重要である。今回、本疾患の定義と診断基準を定めたことで、診断精度の向上が期待される。
ガイドライン等の開発
今回収集した患者データおよび眼科的所見を基に、初めて本疾患の定義を定めるとともに、診断基準を作成した。今回の基準は、多くの施設で活用可能であるように、細隙灯顕微鏡と角膜形状解析によって判断できるように策定した。今回の調査で得られた527眼のうち、PMCDの確定例と判断された症例は72眼、疑い例は259眼であり、残りの196眼(37.2%)は診断基準に当てはまらなかった。今後さらに診断精度を高めるためには、角膜厚分布をもとにした基準へと移行することが望ましいと思われた。
その他行政的観点からの成果
PMCDは角膜屈折矯正手術の禁忌疾患であり、見逃されてLASIKなどを受けた場合には、術後の角膜拡張症などのために不可逆的な視力障害をきたす危険性が高い。今回、診断基準を作成したことによって、誤って手術を受ける例が減ることが期待される。
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
前田直之
眼画像診断の進歩 治療法選択のための新しい前眼部画像診断法
日本眼科学会誌 , 115 (3) , 297-322  (2011)
原著論文2
Tanaka Y, Baba K, Duncan TJ, Kubota A, et al.
Transparent, tough collagen laminates prepared by oriented flow casting, multi-cyclic vitrification and chemical cross-linking
Biomaterials , 32 (13) , 3358-3366  (2011)
原著論文3
Tanaka Y, Kubota A, Yamato M, et al.
Irreversible optical clearing of sclera by dehydration and cross-linking
Biomaterials , 32 (4) , 1080-1090  (2011)
原著論文4
Duncan TJ, Tanaka Y, Shi D, et al.
Flow-manipulated, crosslinked collagen gels for use as corneal equivalents
Biomaterials , 31 (34) , 8996-9005  (2010)
原著論文5
Kato N, Toda I, Hori-Komai Y, et al.
Phakic intraocular lens for keratoconus
Ophthalmology , 118 (3) , 605-605  (2011)
原著論文6
Kato N, Toda I, Kawakita T, et al.
Topography-guided conductive keratoplasty: treatment for advancedkeratoconus
American Journal of Ophthalmology , 150 (4) , 481-489  (2010)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024254Z