軟骨無形成症の病態解明と治療法の開発

文献情報

文献番号
201024250A
報告書区分
総括
研究課題名
軟骨無形成症の病態解明と治療法の開発
課題番号
H22-難治・一般-195
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
安井 夏生(徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 運動機能外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 芳賀 信彦(東京大学 医学部附属病院リハビリテーション科)
  • 松井 好人(富山大学 大学院医学薬学研究部)
  • 鬼頭 浩史(名古屋大学 医学部附属病院科整形外科)
  • 奥住 成晴(地方独立行政法人神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター肢体不自由児施設)
  • 高村 和幸(福岡市立こども病院・感染症センター整形外科)
  • 長谷川 奉延(慶應義塾大学 医学部小児科学)
  • 親泊 政一(徳島大学 疾患ゲノム研究センター生体機能分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
軟骨無形成症(ACH)は四肢短縮型低身長を呈する骨系統疾患の代表であり、FGFR3遺伝子のG380R変異により発症する。FGFR3はチロシンキナーゼ型受容体であり、リガンド(FGF)が結合すると2量体を形成し骨成長に対し負のシグナルを伝達するとされる。FGFR3のG380R変異では常にスイッチ・オンになり続ける(constitutive active)ことにより軟骨成長が抑制されると考えられている。軽症型の軟骨低形成症(HCH)にはFGFR3のN540K変異が、重症型の致死型骨異型性症(TD)にはK650E変異が報告されているが、それぞれの発症機序は不明である。我々は変異FGFR3遺伝子が小胞体ストレスを介して軟骨細胞のアポトーシスを誘導するのではないかと考え以下の実験を行った。
研究方法
現在までにACH, HCH, TD につき報告されている21種類の変異FGFR3 のDNA constructを全て作成し、軟骨細胞に導入した。FGFR3タンパクの発現パターンをimmunoblot法で確認し、細胞内でのFGFR3の局在に違いがあるかを免疫染色により観察した。変異型FGFR3発現細胞が小胞体ストレスを起こしているかどうかを定量的RT-PCRを用いて、それぞれ野生型のFGFR3を導入した場合と比較検討した。
結果と考察
野生型のFGFR3は小胞体で合成された後、糖鎖修飾をうけ高分子化して細胞膜に運ばれるが、K650N変異や K650Q変異を持つ FGFR3は小胞体に蓄積したまま細胞膜には運ばれないことが明らかとなった。定量的RT-PCRで Bip(小胞体ストレスマーカー)や CHOP(細胞死のマーカー)の発現をみると、K650M、K650NやX807C などの変異型 FGFR3を導入した場合は、野生型のFGFR3を導入した場合と比べて、Bip、CHOPともに強く発現していた。
結論
変異FGFR3タンパクは小胞体に蓄積し、小胞体ストレスを介して軟骨細胞をアポトーシスに導いている可能性がある。小胞体ストレスを緩和することができれば、ACH/HCH/TD の新しい治療法の開発につながる可能性があると考える。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024250Z