Fuchs角膜内皮変性症および関連疾患に関する調査研究

文献情報

文献番号
201024237A
報告書区分
総括
研究課題名
Fuchs角膜内皮変性症および関連疾患に関する調査研究
課題番号
H22-難治・一般-182
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
坪田 一男(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 榛村 重人(慶應義塾大学 医学部)
  • 西脇 祐司(慶應義塾大学 医学部)
  • 稲富 勉(京都府立医科大学 医学部)
  • 島崎 潤(東京歯科大学 市川総合病院)
  • 大橋 裕一(愛媛大学 医学部)
  • 杉山 和久(金沢大学 医学部)
  • 天野 史郎(東京大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
Fuchs角膜内皮変性症(以下F症)は滴状角膜と呼ばれる特徴的な角膜所見を呈し、原発性に角膜内皮が障害され、進行性に内皮細胞数の減少をきたす疾患で、進行すると水疱性角膜症となり視力は手動弁ないし光覚弁にまで低下する。F症の原因は未だ特定されておらず、その根本的な治療は開発されておらず、進行をくいとめる治療や予防法も開発されていない。水疱性角膜症に進行すると視力回復には角膜移植以外に方法はなく,水疱性角膜症は角膜移植の最も主要な適応疾患となっている。本研究の目的は、本邦でのF症の実態把握と治療指針となる重症度分類の作定および原因因子の解明である。
研究方法
(1)平成21年度から、参加施設においてF症および滴状角膜症例の臨床調査を開始した。各施設の眼科外来で角膜内皮細胞検査を受けた全症例のデータを集計し、角膜内皮細胞所見と臨床所見をもとに抽出した症例を分類した。角膜内皮細胞数と年齢との散布図をノンパラメトリック密度解析することで分布を視覚化した。(2)また、東京歯科大学市川総合病院で白内障手術を施行した、術前角膜内皮細胞密度が1000 cells/mm2未満であった50例62眼(後述する新重症度分類におけるpre-FCD症例20眼を含む)について、白内障手術による手術前後の角膜内皮細胞密度減少率と水疱性角膜症の発症率を調査した。
結果と考察
(1)計1971症例3281眼につき解析を行った。角膜内皮細胞数と年齢との散布図から、滴状角膜症例は内皮細胞減少率1.4%の減少曲線と減少率2.0%の減少曲線により3群(AGC、BGC、pre-FCD)に分類できることが示された。角膜浮腫の有無の判定をこの基準線を用いて行うと、感度93.75%、特異度96.21%であり、この分類法は新しい重症度分類として妥当であることが示された。(2)興味深いことに、pre-FCDは、他の内皮細胞減少症例と比較すると、白内障術後の内皮細胞減少率は同程度で、術後の水疱性角膜症への移行率はむしろ低い傾向にあった。この結果は、F症では角膜内皮細胞減少に対し、なんらかの代償作用が働いている可能性を示唆すると考えられる。
結論
滴状角膜のみられる症例を、AGC、BGC、pre-FCDの3群に分ける新規重症度分類を作成した。今後は角膜内皮移植適応および全層角膜移植適応と新重症度分類との相関を検証し、重症度分類が手術術式の決定にも有用であるか検討する必要がある。また、F症には内皮細胞減少に対するなんらかの内皮細胞機能の代償作用の存在が示唆され、今後は基礎的研究によりこの代償作用の解明を進めていく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024237Z