海外における感染症発生時対応のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
199700820A
報告書区分
総括
研究課題名
海外における感染症発生時対応のあり方に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
梅田 珠美(国立感染症研究所国際協力室)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 新興・再興感染症研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新興再興感染症が世界的に注目を集め地球規模の対策の必要性が強調されている現在、我が国にとっても国内対策と同様に、国際的な対策への協力が重要である。特に途上国における感染症集団発生の対策活動に対して日本人が人的貢献を行うことが期待され、WHO等からも正式に要請されている。また、日本人専門家が、国外のアウトブレイク対策に積極的に参加することにより、国内に常在しない病原体の国内への侵入阻止を図ることができるほか、万一国内に発生した場合の対策のノウハウを蓄積することができる。しかし国外で新興・再興感染症等が発生した場合に、日本の専門家が迅速に原因調査及び感染拡大防止活動に参加するメカニズムは存在しない。このため本、研究所においては、最も有効な専門家派遣等のシステムを考案し評価する。
研究方法
 1.WHOがアウトブレイク対策のために、現地に専門家チームを派遣するなどの対応を行った事例をWHOに照会し調査した。その結果WHO本部において象牙海岸、ガボンのエボラ出血熱、キプロスの髄膜炎、旧ザイールのサル痘、ケニヤのリフトバレー熱等のアウトブレイクに対し介入を行った。これらの事例をもとに、アウトブレイクが予想される主な感染症、求められる協力活動の内容を検討した。
2.国際的なアウトブレイク対応に関心が深いと思われる国内の感染症専門家を対象として、アンケート調査を行った
3.海外における感染症アウトブレイク時の国内対応フロー図を作成し、関係機関のコメントを得た。また、実際にWHOの要請に応えてマレーシアに派遣した事例等を題材として、国内外の専門家によるケーススタディを行った。
結果と考察
 結果=WHOがアウトブレイク対策のために、現地に専門家チームを派遣するなどの対応を行った事例をWHOに照会し調査した結果、WHO西太平洋地域においては、1995年から1998年初めにかけて対応した感染症アウトブレイクは16件であった。その内訳を見るとデング熱、コレラ、ジフテリアが多かったほか、髄膜炎、新型インフルエンザ、原因不明の急性死、サルのエボラ・レストンウイルス集団感染などがあり、派遣された専門家は、病原体の確認、流行状況の調査を行った。また、ベクターコントロールや予防接種等の対策が強化された。アウトブレイク発生国は、モンゴル、カンボジア、マレーシア、フィリピン、ラオス、中国、サモア、クック諸島、フィジー、トンガなどであった。これらの事例をもとに、アウトブレイクが想定される主な感染症、求められる協力活動の内容を検討した。
国際的なアウトブレイク対応に関心が深いと思われる国内の感染症専門家を対象として、アンケート調査を行った。その際、WHOが行う専門家チーム派遣の条件や活動内容を情報提供した上で、同様の活動に参加する意志を問うたところ、116人の回答者中、77人が「参加の意志があり登録に同意する」と回答し、34人が「現時点では登録を希望しないが将来参加する意志がある」と回答した。これらの日本人専門家の専門分野、経験年数、協力分野などを分析し、海外のアウトブレイク対応への参加が円滑に行われるための条件を明らかにした。
考察=過去にWHOがアウトブレイク対策のために現地に専門家チームを派遣するなどの対応を行った事例を照会し調査して、想定される感染症アウトブレイクの内容と、WHOの対応状況を明らかにし、日本の専門家に期待される役割を考察することができた。
結論
WHOのアウトブレイク対策の調査及び国内の感染症専門家へのアンケート調査により、今後WHOが行う専門家派遣チームの専門家登録に資することができた。さらに、海外でのアウトブレイク対応のために日本人専門家が派遣された実例もふまえ適切な対応システムを検討する事ができた。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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研究報告書(紙媒体)