中條ー西村症候群の疾患概念の確立と病態解明に基づく特異的治療法の開発

文献情報

文献番号
201024230A
報告書区分
総括
研究課題名
中條ー西村症候群の疾患概念の確立と病態解明に基づく特異的治療法の開発
課題番号
H22-難治・一般-175
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
古川 福実(和歌山県立医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 金澤 伸雄(和歌山県立医科大学 医学部)
  • 有馬 和彦(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 井田 弘明(久留米大学 医学部)
  • 吉浦 孝一郎(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
中條-西村症候群(ORPHA 2615, MIM 256040)は、乳幼児期に凍瘡様皮疹で発症し,弛張熱や結節性紅斑様皮疹を伴い、次第に顔面・上肢を中心とした上半身のやせと拘縮を伴う長く節くれ立った指趾が明らかになる特異な遺伝性炎症・消耗性疾患である。本研究は、本疾患の病態解明と特異的治療法の開発を目標とする。
研究方法
本研究班では、症例の蓄積があり臨床疫学的アプローチを担当する和歌山県立医科大学皮膚科学教室を中心に、分子遺伝子学的アプローチを担当する長崎大学人類遺伝学教室、細胞生物学的アプローチを担当する同大学病態解析学教室により平成22年度に組織された「中條―西村症候群の疾患概念の確立と病態解明へのアプローチ」班を発展的に継続し、細胞生物学的アプローチを長崎大学分子設計学教室と久留米大学呼吸器・神経・膠原病内科学教室が共同で担当するように変更した。
結果と考察
(1) 患者ゲノムのホモ接合部マッピングにより、免疫プロテアソームのサブユニットをコードするPSMB8遺伝子のホモ変異を同定した。検索しえた患者全てに同じ変異を認め、強いfounder effectを伴った。(2) 患者由来不死化リンパ球株において、プロテアソームサブユニットの合成・成熟が阻害され、キモトリプシン様、トリプシン様、カスパーゼ様蛋白分解活性はいずれも低下し、特にキモトリプシン様活性の低下が著明であった。(3) 患者病変部皮膚に浸潤する細胞には、シグナル伝達に関わるK63よりもプロテアソームの識別に関わるK48ポリユビキチン鎖の蓄積が著明であり、患者由来初代培養線維芽細胞を用いたEMSA法にて、NF-kB0102 p65の挙動は健常者由来細胞と差がなかった。(4) 患者血清・患者由来線維芽細胞培養上清ともにIL-6の高値を認めた。関西と東北地方の300床以上の病院の関連各科を対象に行った追加疫学調査では新たな症例は見出されなかったが、海外よりPSMB8遺伝子変異による類似疾患の報告があった。
結論
本研究によって、プロテアソーム病という新たな疾患概念が生まれつつあり、今後、iPS細胞やノックインマウスも用いた更なる研究の進展によって、病態の全体像が明らかとなり、特異的に作用する分子標的薬の適応あるいは開発につながれば、患者や家族に福音をもたらすのみならず、医学研究領域に本邦発の大きなインパクトを与えることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024230Z