内臓錯位症候群の疫学と治療実態に関する研究

文献情報

文献番号
201024226A
報告書区分
総括
研究課題名
内臓錯位症候群の疫学と治療実態に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-171
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
中西 敏雄(学校法人 東京女子医科大学 医学部循環器小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 松岡 瑠美子(東邦大学 医学部小児科第1講座)
  • 西澤 勉(自治医科大学 医学部感染・免疫学講座ウィルス学部門)
  • 白石 公(国立循環器病センター 小児循環器診療部)
  • 山岸 敬幸(慶應義塾大学 医学部小児科)
  • 小川 俊一(日本医科大学 医学部小児科)
  • 賀藤 均(国立成育医療センター 循環器科)
  • 松裏 裕行(東邦大学 医学部小児科)
  • 竹島 浩(京都大学 大学院薬学研究科)
  • 石川 司朗(福岡市立こども病院・感染症センター 循環器科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究目的:無脾症と多脾症からなる内臓錯位症候群は、複雑心奇形に内臓異常や免疫低下を合併する症候群である。希な原因不明の疾患で、未だ効果的な治療方法は未確立、予後不良である。我が国の内臓錯位症候群患者を診療している主要施設による多施設共同疫学研究を行い、内臓錯位症候群の病態把握、自然歴の把握、手術法と手術時期、感染予防や予後、疾患関連遺伝子の検索に関するデータ分析を行い内臓錯位症候群における治療、管理のための指針を作成することを目的とする。
研究方法
研究方法:先天性心疾患を伴う内臓錯位症候群の小児の病歴簿を調べ、病態、診断方法、心奇形の組み合わせ、手術法、手術成績、予後、内臓奇形の頻度、重症細菌感染症の頻度、罹患歴、抗生剤投与、ワクチン接種の有無、重症感染からの死亡率等のデータを多施設共同で調べるため、142項目からなる調査票を作成した。これを各施設の研究分担者に配布し、本症候群の実態把握を行った。
結果と考察
結果と考察:無脾症641例、多脾症370例、コントロール527例の合計1538例のデータを収集した。1960から2011年に診察した無脾症は男性362名、女性2769名、平均年齢8.9歳(日令1日ー42歳)、人年法による観察人年は4643人年であった。多脾症は男性189名、女性181名、平均年齢14.2歳(日令2日ー69歳)、観察人年は4026人年であった。重症感染症は無脾症で127名、多脾症で33名に認めた。また、重症感染症の年齢分布において無脾症、多脾症共に10歳未満が最も多かった。重症感染症の年間罹患率(患者1万人対)は、無脾症で274、多脾症で82であった。無脾症患者における重症感染症の罹患率は、内臓錯位症候群を伴わない先天性心疾患患者に比べて、高率であった。特に、肺炎球菌感染症が、無脾症の重症感染症患者の24%を占めた。また、無脾症患者において、細菌ワクチン接種や予防的抗生物質内服投与を行なった患者群と行わなかった患者群では、重症感染症の頻度に有意差を認め、細菌ワクチン接種や予防的抗生物質内服投与は、重症感染症の頻度を減らす可能性があった。
結論
結論:予想以上に無脾症患者における重症感染症の罹患率が高いことが解った。このデータは、世界でも初めて得られたデータである。重症感染症の治療、予防が重要であるが、感染症治療予防の改善法については、さらなる検討が必要である。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024226Z