ゲノム異常症としての歌舞伎症候群原因遺伝子同定と遺伝子情報に基づく成長障害治療可能性の研究開発

文献情報

文献番号
201024222A
報告書区分
総括
研究課題名
ゲノム異常症としての歌舞伎症候群原因遺伝子同定と遺伝子情報に基づく成長障害治療可能性の研究開発
課題番号
H22-難治・一般-167
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
吉浦 孝一郎(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 木下 晃(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科 )
  • 新川 詔夫(北海道医療大学)
  • 太田 亨(北海道医療大学 個体差健康科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
13,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は (1) 未だ原因不明である歌舞伎症候群(新川-黒木症候群)の原因遺伝子の同定と病態生理の解明,(2) 病態生理,分子病態にもとづいた歌舞伎症候群の症状,特に出生後成長障害,女児の思春期早発の治療方針策定の基礎データを得ることである。本年度は,歌舞伎症候群患者原因遺伝子単離に注力した。
研究方法
北海道医療大学の研究分担チームから供給された63名の歌舞伎症候群患者試料の中から典型的な症例を選んでexome解析を行い,歌舞伎症候群原因遺伝子を同定する。
結果と考察
 Washington University との協力によって10名の歌舞伎症候群患者の exome 解析を行った。患者共通に truncation type の変異が存在する遺伝子を選択していくことにより,MLL2 遺伝子の変異が歌舞伎症候群患者に見られることが同定できた。MLL2 の変異は,歌舞伎症候群患者の約80% に認められ MLL2 の truncation type 変異すなわち機能喪失をもたらす変異が歌舞伎症の原因となっていることが明らかとなった。臨床遺伝医により診断確実な歌舞伎症例でかつ Washington University で解析していない8例を対象として,長崎大学で変異解析を行った。1例で1塩基欠失(frameshift),2例で nonsense mutation,1例でエキソンの最終塩基の G to A transition,1例でアルギニンからグルタミンへの missense mutation が見つかった。3例は塩基変異を確認できなかった。
 今回の研究でMLL2変異が歌舞伎症候群の原因の一つとなっていることは明らかである。70~80% の患者において完全長のタンパク質が合成されない truncation 型の変異が検出される。しかし,残りの 20~30% の患者には MLL2 の変異が認められず,他の遺伝子変異によって歌舞伎症候群が発症していることが考えられる。
結論
exome解析によって歌舞伎症候群の原因遺伝子の一つMLL2遺伝子を明らかにした。次世代型シーケンサーによる原因不明の遺伝子疾患の解析は非常に有用であることが示された。特に,歌舞伎症候群は,次世代型シーケンサー+exome解析によって原因遺伝子が明らかにされた最初の常染色体優性疾患である。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024222Z