Alagille症候群など遺伝性胆汁うっ滞性疾患の診断ガイドライン作成、実態調査並びに生体資料のバンク化

文献情報

文献番号
201024218A
報告書区分
総括
研究課題名
Alagille症候群など遺伝性胆汁うっ滞性疾患の診断ガイドライン作成、実態調査並びに生体資料のバンク化
課題番号
H22-難治・一般-163
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
須磨崎 亮(筑波大学 大学院人間総合科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 瀧本 哲也(国立成育医療センター臨床研究センター)
  • 小崎健次郎(慶應義塾大学医学部)
  • 木村 昭彦(久留米大学医学部)
  • 田澤 雄作(仙台医療センター小児科)
  • 乾 あやの(横浜済生会市東部病院・小児科)
  • 鹿毛 政義(久留米大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
Alagille症候群(ALGS)の正確な診断法の確立とその全国的な普及
本症の全国調査による臨床データの蓄積と診療ガイドラインの作成
研究方法
本年度は全国二次調査を実施して詳細な臨床データの蓄積を行う。特に、大きな手術侵襲や長期に渡りQOLを低下させる合併症について重点的に調査する。また、各種の遺伝性胆汁うっ滞症の診断法について検討し、本症との鑑別診断の概要を明らかにする。今年度は新たにミトコンドリア肝症を検討対象に加える。
結果と考察
ALGSにおける肝移植率は19.2%であった。肝移植例には、乳児期早期に胆道閉鎖症として手術を受けた症例が複数含まれていた。最近、ALGSに胆道閉鎖症の手術を行うと長期予後が悪いとの報告があるので、胆管閉鎖を伴うALGSの診療方針を再検討する。肝移植時のドナー検索により親のALGSが判明した症例があった。軽症ALGSであっても、ドナーには不適である。生体肝移植が多いわが国の事情を考慮すると、常染色体優性の本症ではしばしば起こる現象であろう。両親がドナー候補となるALGSの生体肝移植では、遺伝子検査を含めた精密な保因者診断のシステムを整える必要がある。
頭蓋内出血は3例あり、欧米からは脳血管奇形がALGS患者の死因の多数を占めると報告されているので、これが関与していないか検討中である。スクリーニング検査で脳動脈瘤が発見された例もあったので、この点はALGSを診療する上で重要な情報である。成長障害や発達遅滞を伴う症例が多くみられ、本症では長期にわる包括的なケアが重要な事が判明した。
ALGSを正確に診断するためには、類縁疾患との鑑別が重要である。このためには、詳細な臨床像の分析に加えて、肝病理検査、尿中胆汁酸分析、ミトコンドリア蛋白の解析、遺伝子検査など各種の特殊検査が適切に行われる必要があることが判明した。
結論
本年度の研究によって、ALGS患者の抱える問題点の解明と診療上極めて重要な新たな知見が得られた。さらに、本症に類縁の進行性家族性肝内胆汁うっ滞症や良性反復性肝内胆汁うっ滞症、先天性胆汁酸代謝異常症、ミトコンドリア肝症について、実用的な診断法を見出すことができた。今後、これらの成果を社会に広く周知して、我が国におけるALGSを含む遺伝性胆汁うっ滞症の診療水準の向上に寄与していく予定である。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024218Z