ゲノムインプリンティング異常症5疾患の実態把握に関する全国多施設共同研究

文献情報

文献番号
201024217A
報告書区分
総括
研究課題名
ゲノムインプリンティング異常症5疾患の実態把握に関する全国多施設共同研究
課題番号
H22-難治・一般-162
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
有馬 隆博(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 松原 洋一(東北大学 大学院医学系研究科 )
  • 八重樫 伸生(東北大学 大学院医学系研究科 )
  • 栗山 進一(東北大学 大学院医学系研究科 )
  • 加藤 聖子(順天堂大学 医学部産婦人科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
先天性ゲノムインプリンティング (GI) 異常症の発症頻度、病態、治療実態の把握と試料を収集し、遺伝子診断を行なう。
研究方法
(1)多施設共同(産婦人科、小児科、重症心身障害施設を含めた)の全国調査を行なった。(2)患者の頬粘膜細胞DNAを用い、原因遺伝子のメチル化の解析を行なった。
結果と考察
(1)調査対象施設総数3158のうち、1602施設から有効回答があり(有効回答率56.3%)、報告患者総数は1818人であった(BWSが216人、ASが415人、PWSが992人、SRSが161人、TNDMが34人)。各疾患の年齢別推移では、AS以外の4疾患で、近年増加傾向にあることが示唆され、特にBWS、SRSは最近5~10年間に急増している傾向がみられた。(2)頬粘膜細胞DNAを用い、メチル化の解析を行なった、現在までに、75名の解析を行ない、そのうち異常を認めた症例は、BWSが1人、ASが5人、PWSが8人、SRSが4人で、ARTは、SRSの2例と関連していた。症例数が圧倒的に少ないため、結論を出すまでに至っていない。結果と考察:生殖補助医療(ART)の普及により、これら疾患の発生頻度の増加が世界中で注目されている。疫学調査の結果、少なくともPWS、BWS、AS、SRSの疾患のそれぞれ1.5%、8.6%、1.6%、9.5%が不妊治療を受けていたことが判明した。また、そのほとんどの症例は体外受精(IVF)あるいは顕微授精(ICSI)によるもので、平成17年度のIVF+ICSIの出生児は年間約1万人で全出生児の0.86%であることを考慮すると、特にSRSでは11.2倍、BWSでは10倍と圧倒的な高リスクである事が判明した。これには、ARTが、ゲノムインプリンティングが確立する時期の配偶子を操作する事が原因であると推察されているが、この実態も全く不明である。
結論
今後さらに解析を進め、メチル化異常の頻度、程度との関連性について疾患別に交絡要因を考慮し、正確に評価する必要がある。晩婚化、少子化により今後もART出生児が増加すると予想される。ARTと先天性ゲノムインプリンティング病との関連性については、早急に実態を把握し、適切な対応をとる必要性があり、次世代社会の最重要な課題であると考える。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024217Z