胎児仙尾部奇形腫の実態把握・治療指針作成に関する研究

文献情報

文献番号
201024213A
報告書区分
総括
研究課題名
胎児仙尾部奇形腫の実態把握・治療指針作成に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-158
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
北野 良博(独立行政法人国立成育医療研究センター 外科系専門診療部外科)
研究分担者(所属機関)
  • 左合 治彦(独立行政法人国立成育医療研究センター 周産期診療部)
  • 臼井 規朗(大阪大学大学院医学系研究科 小児成育外科)
  • 田口 智章(九州大学大学院医学研究院 小児外科学分野)
  • 金森 豊(東京大学大学院医学系研究科 生殖・発達・加齢医学専攻 小児医学講座 小児外科学)
  • 米田 光宏(大阪府立母子保健総合医療センター 小児外科)
  • 中村 知夫(独立行政法人国立成育医療研究センター 周産期診療部新生児科)
  • 野坂 俊介(独立行政法人国立成育医療研究センター 放射線診療部放射線診断科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、胎児仙尾部奇形腫の治療実態と自然歴を明らかにし、胎児治療を含めた周産期の治療指針の基盤となる情報を集積して、患児を合併症なく救命するための集学的治療指針を作成することである。
研究方法
国内周産期センターのうち、調査研究の応諾が得られた施設において、2000年1月1日から2009年12月31日までの期間に、仙尾部奇形腫と出生前診断された症例を対象として、症例調査票を用いた調査研究を実施した。
結果と考察
出生前診断された仙尾部奇形腫97例を検討の対象としたが、これはこの間にわが国で発生した本症例数の約半数にあたると推計された。症例数の年次推移は、最近の数年間で著増傾向が認められた。11例で人工妊娠中絶が選択され、86例に妊娠が継続されたが、うち3例は子宮内胎児死亡し、11例が出生後に死亡した。以上の結果は、過去の内外の諸家の報告と比べても良好であった。従って、人工妊娠中絶を除いた本症の生存率は83.7%であった。分娩時期が早いこと、腫瘍構成成分に充実部分が多いこと、病理組織診断が未熟奇形腫であること、腫瘍が大きいこと、増大速度が速いことなどが生命予後不良の因子であった。分娩時期が早まるリスク因子として胎児水腫徴候が挙げられた。従って、胎児水腫や胎児心不全の発生に注意しながら、少しでも分娩時期を遅らせることが生命予後の改善に繋がる可能性が示唆された。出生後は96.3%の症例に手術が行われ、うち31%に腫瘍栄養血管の先行遮断が行われた。出生後の主たる死因は出血死であった。手術例のうち、約16%に周術期合併症を認め、退院例のうち、約18%に術後後遺症を認めた。また、少なくとも6例に悪性化を含む腫瘍の再発を認めた。
結論
わが国の主要施設で、過去10年間に出生前診断された仙尾部奇形腫の約半数を集計し、その治療実態と自然歴を明らかにした。わが国の胎児仙尾部奇形腫の生存率は、過去の諸家の報告に比べても良好であった。出生前診断率の向上に伴い、今後も症例数の増加が予想される本症については、胎児治療も含めて、患児を合併症なく救命するための集学的治療指針を作成することが急務であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024213Z