ロイス・ディーツ症候群の診断・治療のガイドライン作成および新規治療法の開発に向けた臨床所見の収集と治療成績の検討

文献情報

文献番号
201024210A
報告書区分
総括
研究課題名
ロイス・ディーツ症候群の診断・治療のガイドライン作成および新規治療法の開発に向けた臨床所見の収集と治療成績の検討
課題番号
H22-難治・一般-155
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
森崎 裕子(国立循環器病研究センター 研究所分子生物学部)
研究分担者(所属機関)
  • 荻野 均(国立循環器病研究センター)
  • 東 将浩(国立循環器病研究センター)
  • 白石 公(国立循環器病研究センター)
  • 森崎 隆幸(国立循環器病研究センター)
  • 圷 宏一(日本医科大学)
  • 古庄 知己(信州大学)
  • 水野 誠司(愛知県心身障害者コロニー)
  • 平田 恭信(東京大学)
  • 小崎 健次郎(慶應義塾大学)
  • 渡邉 航太(慶應義塾大学)
  • 河野 淳(神戸大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
13,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ロイス・ディーツ症候群(LDS)はTGF-β受容体(TGFBR1 / TGFBR2)の遺伝子変異による常染色体優性遺伝性結合織疾患として近年新規に提唱された疾患で、血管病変を主に様々な全身症状を伴う。マルファン症候群(MFS)との異同性がしばしば問題になる場合もあるが、大動脈病変の進行がMFSより早いとされ、治療管理の上からもMFSとLDSとを区別すべきである。本研究の目的は、遺伝子診断で確定したLDS症例を抽出しLDSとその他のマルファン症候群(MFS)等類縁の結合織疾患の臨床像を、臨床所見、自然歴を含めて集積し、本疾患に特徴的な所見を検索し、有効な治療法を探索することを目的とした。
研究方法
昨年度までに国循にて遺伝子診断を行った27例に、今年度に新たにLDSと診断された11例、関連協力機関で解析された4例を加えた計42例のうち、詳しい臨床所見の得られた40例を対象として、共通の臨床情報シートや臨床カルテを元に臨床像の検討を行った。
結果と考察
1)「眼間解離・二分口蓋垂・血管蛇行」は、それぞれ検討した症例の約70-90%と高頻度で認め、診断上重要な所見であると考えられた。また、MFSとの比較では、クモ状指の頻度がやや低く、また、皮膚線条、水晶体亜脱臼の合併をほとんど見ない点が重要である。その他、「透過性の薄い皮膚」などの皮膚異常を約半数で、またこれまでに報告はないが、何らかの網膜形成異常を、比較的高頻度で認めた。血管外病変に乏しく家族性大動脈瘤あるいは若年性大動脈瘤と診断されている症例も、特にTGFBR1遺伝子変異例で多く認めた。
2)LDS患者に対する内科的治療は、β遮断薬あるいはロサルタンが投与されている症例が多かったが、症例数が少なく統計的な治療効果の判定は難しい。大動脈手術成績は、早期、遠隔期とも満足すべきものであった。
結論
LDSとMFSとは、一部の所見については確かにオーバーラップするものもあるが、臨床所見や臨床経過からみても明らかに異なる疾患概念である。一般的に血管系病変の進行がMFSに比べて早く、小児期に血管外科的介入が必要とされる例も少なくない。治療面では、LDSは、適切な疾患管理により大動脈解離等の重篤な合併症を予防することが可能であり、QOLと予後の改善のためには早期診断と適切な介入が必須であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024210Z