リンパ浮腫治療へのbreakthroughを目指して

文献情報

文献番号
201024209A
報告書区分
総括
研究課題名
リンパ浮腫治療へのbreakthroughを目指して
課題番号
H22-難治・一般-154
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
福田 尚司(国立国際医療研究センター 心臓血管外科)
研究分担者(所属機関)
  • 浜崎 辰夫(国立国際医療研究センター研究所 細胞組織再生医学研究部)
  • 記村 貴之(国立国際医療研究センター研究所 細胞組織再生医学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
リンパ浮腫は、現在までに有効な治療法が確立されていない。私たちは現在までに、この疾患に対し比較的積極的に対応してきたが、この経験の中で、抗血小板療法としてシロスタゾールを投与したリンパ浮腫患者に、症状の寛解が見られた症例を経験した。これは、PDE3(cGMP-inhibited phosphodiesterase)阻害作用による、リンパ管内皮細胞活性化効果の影響が関与していると推測している。この推測を検証すべく、今研究の実施を計画した。
研究方法
今研究は臨床研究と基礎研究パートに分かれる。前者は、評価項目を理学所見、皮膚毛細血流、CTによる皮下断面積およびシンチグラフィにてシロスタゾールおよびアスピリンのリンパ浮腫に対する効果を判定するRCTである。また、後者では、ヒトリンパ管内皮細胞、トランスジェニックリンパ浮腫マウスおよびマウスリンパ浮腫モデルを用い、今仮説の検証および作用機序の同定を行う。
結果と考察
臨床研究パートでは、14名の中間報告を行う。患側肢の疼痛評価をVASにより行い、両群間における有意差は認めないが、両群とも治療後の疼痛が軽減する傾向を認めた。治療開始1か月後のCTによる皮下面積測定では、シロスタゾール群で7例中6例、また、アスピリン群では6例中3例に改善を認めた。
基礎研究パートでは、ヒトリンパ管内皮細胞の増殖能についての検討により、VEGFの存在下ではシロスタゾールの効果は限定的である一方、VEGFを除いた培地ではシロスタゾールによる有意な増殖促進効果が確認された。
結論
今研究の臨床パートでは、リンパ浮腫に対する治療効果を主要評価項目としたランダム化比較試験である。また、その機序を明らかにするための、基礎研究を伴っている。
臨床研究部分においては、患者14名分のデータを基にした中間報告を行った。
リンパ浮腫に対する治療において、一定の効果が期待できる可能性が示唆された。
 基礎研究部分においては、ヒトリンパ管内皮の培養細胞を用いた実験系で、シロスタゾールは細胞の増殖を促進する効果を有することが確認された。また、リンパ流障害を有するトランスジェニックマウスに対して、シロスタゾールは生存率を改善する可能性があると考えられる。さらに尾のリンパ浮腫モデルマウスにおいて、シロスタゾールは浮腫を軽減する傾向が認められた。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024209Z