新生児および乳児肝血管腫に対する治療の実態把握ならびに治療ガイドライン作成の研究

文献情報

文献番号
201024208A
報告書区分
総括
研究課題名
新生児および乳児肝血管腫に対する治療の実態把握ならびに治療ガイドライン作成の研究
課題番号
H22-難治・一般-153
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
黒田 達夫(国立成育医療研究センター 外科系専門診療部 外科)
研究分担者(所属機関)
  • 熊谷 昌明(国立成育医療研究センター 固形腫瘍科)
  • 野坂 俊介(国立成育医療研究センター 放射線科)
  • 中澤 温子(中川 温子)(国立成育医療研究センター 病理)
  • 星野 健(慶應義塾大学 小児外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新生児や乳児にみられる肝血管腫の中には、稀少ではあるが、特異な病態から治療抵抗性で致死的経過をとるものがある。そこで本課題は、新生児、乳幼児の肝血管腫の臨床像を検討し、治療実態の把握とともに様々な先端的治療手技の応用可能性を検証することを目的とする。本症の病理学的背景と病態や臨床像との関連を分析し、これに基づいて先端的治療手技も包括した総合的治療戦略を提唱することを目指す。
研究方法
昨年度までの研究で行なわれた一次調査の結果に基づいて、日本小児外科学会の認定施設38施設に、より詳細な二次調査票を送り、過去5年間に生後12ヵ月未満で診療された肝血管腫症例につき、臨床像、治療と転帰、血液データ、放射線画像データ、病理画像データなどを調査・集計した。全国の11施設で該当する23例が同定され、今年度に集計が可能であった19例につき検討された。さらに分担研究者の施設において、関連する新生児腫瘍症例などの観察研究を行ない、治療のfeasibilityや効果を検討した。
結果と考察
主症状は腹部膨満 (47.4%)、心不全(47.4%), 血液凝固障害(42.1%) および呼吸障害 (31.6%) であった。3例が血液凝固障害及び心不全により死亡していた。1例では肝内血管奇形による肝障害が重篤化し肝移植を要した。ステロイドが使用された13例中3例(23.1%)は治療不応性で、全体で9例(47.4%)はステロイド以外の治療を要した。ベータ・ブロッカーの投与された1例では速やかな反応が見られた。死亡例では、血小板数 (73,300±52,900 vs. 300,000±195,600/mm3 (P<0.03、治療前), 66,300±20,200 vs. 388,700±118,300/mm3 (P<0.003治療後)) が有意に低く、治療後の PT値 (35.0±14.7 vs. 12.1±1.4秒 (P<0.0001)) は有意に延長していた。外科的切除例では血小板数および PT 値の改善が見られたが、肝動脈結紮術や塞栓術の効果は限定的であった。
結論
ステロイドやインターフェロンによる治療に反応しない難治性の肝血管腫においては、低年齢であってもベータ・ブロッカーや積極的な外科治切除、肝移植などの選択肢も考慮してよいものと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024208Z