マルファン症候群の日本人に適した診断基準と治療指針の作成

文献情報

文献番号
201024198A
報告書区分
総括
研究課題名
マルファン症候群の日本人に適した診断基準と治療指針の作成
課題番号
H22-難治・一般-143
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
平田 恭信(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 今井 靖(東京大学 医学部附属病院)
  • 縄田 寛(東京大学 医学部附属病院)
  • 竹下 克志(東京大学 医学部附属病院)
  • 永原 幸(東京大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々は関連する院内8科で横断的に本症患者を診療するマルファン外来を開設し、各科が同時に診療する体制を整え、下記を検討した。
研究方法
(1)マルファン症候群における臨床データベースの構築
(2)マルファン症候群におけるDNAチップを用いた遺伝子解析
(3)大動脈瘤を有する症例に対する薬物ならびに外科的治療の解析
(4)当院におけるマルファン症候群患者の分娩例の解析
(5)血中TGFβ濃度の測定
(6)歯周病と病態との関連性の解析
結果と考察
1. マルファン専門外来受診者427名、うち380症例につきGhent基準を評価した。平均年齢28.4(3-81)歳、女性が196名(51.6%)であった。Ghent基準陽性は109症例(28.7%)であり、小児例が23名含まれていた。Ghent陽性成人例においてバルサルバ洞拡大が85.1%、水晶体脱臼が56.3%と高率に認められた一方、骨の大基準を満たしたのは17.4%と低かった。
2. Ghent基準陽性かつFBN1遺伝子異常陽性は87例中39例と約6割で認められ、特にGhent陽性例では76.5%にFBN1変異を認め、73種類の遺伝子変異が検出された。逆にFBN1遺伝子異常例の約4分の1の症例ではGhent基準を完全には満たすことができなかった。
3. 以上よりマルファン症候群においては大動脈の異常・水晶体異常が特に診断的意義が高かった。
4. 当院における最近3年間のマルファン症候群患者の分娩成績は6例の内、3例で解離等の心血管イベントを主に産褥期に起こした。残る3例の内、1例は胎児が死亡した。
5. 32名のマルファン症侯群の患者においてTGFβ1濃度は有意に高値を示した(1.50±0.41[SD] ng/ml vs. 1.20±0.28 ng/ml, p=0.001)。
6. マルファン症候群では残存歯数は26.6本、歯周ポケットの深さPDが4mm以上の部位を有する者は78%に達した。主要歯周病原細菌であるPgとAaの両陽性患者では家族歴、骨病変、皮膚病変の陽性率が高かった。
7. 投薬と大動脈径拡張速度との関係ではARB投与群では有意に大動脈基部の拡張速度を減少させた。

結論
1. 我々は遺伝子診断の迅速化・低コスト化を図るためDNAチップによる遺伝子解析を実施、約7割の症例において遺伝子変異を検出しえた。
2. 現診断基準は日本人には厳格に過ぎる可能性がある。
3. 本症患者においては、年齢の割に歯周病の罹患率は高率であり、歯周病菌陽性率も高率であることが推定される。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024198Z