ボルナ病ウイルスに対する人血中抗体価測定法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
199700816A
報告書区分
総括
研究課題名
ボルナ病ウイルスに対する人血中抗体価測定法の確立に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
西藤 岳彦(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 新興・再興感染症研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ボルナ病ウイルス (BDV) は元来ウマに致死的脳炎を引き起こす原因ウイルスとして知られていたが、近年人の精神疾患との関連が指摘されている。人におけるボルナ病ウイルスの侵淫状況を疫学的に調査するためには、高感度で特異性の高いアッセイ系の確立が重要である。特異性の高いアッセイ系に必要な条件として、アッセイ系に用いる抗原の精製度と、収量は疫学調査の実践面で決して無視できないものである。本研究では、人におけるBDVに対する血中抗体の検索に必要なウイルス由来タンパク質 (BDV p40) を大腸菌で発現したのち、クロマトグラフィーの組み合わせによって純粋に均一なレベルにまで精製するための方法を検討した。
研究方法
BDV p40のORFを含み、大腸菌内でGSTとの融合蛋白としてp40を発現するプラスミドpGEX-p40を用い、培養後菌体破砕物からイオン交換カラム等の組み合わせによって純度の高いBDV p40タンパク質を精製する方法を検討した。
結果と考察
2 litterのL brothで培養したpGEX-p40を持つ大腸菌を遠心によって回収し、TritonX-100を含む緩衝液に懸濁後、菌体を超音波破砕した。可溶化画分を回収し、それをGluthathion-Sepharose Pre-packカラム(ファルマシア社)に菌体由来可溶性蛋白を吸着させた後に、5mM Gluthathion でGST-p40融合蛋白を溶出した。溶出したGST-p40をFactor Xaで処理することによってGSTとp40を開裂させた。Factor Xa処理したものを、再度Gluthathion-Sepharose Pre-packカラムにかけることにより反応溶液からGSTを除いた。GSTを除いた反応液をDEAE-Sepharoseカラムにかけ、NaClの不連続濃度勾配でp40を溶出、精製した。この操作によって約2mgの精製蛋白が得られることが判明した。
結論
ヒト血清検体中の抗BDV p40抗体を検出するために本研究室で開発されたRS-ELISAを用いる際に、経験的に精製蛋白質のロット差がアッセイ系に重大な影響を与えることが判っていた。そこで本研究では、このようなロット格差の影響を低減させることと、より精製度の高い蛋白を得るために、BDVのp40蛋白質をGSTの融合タンパク質として発現する大腸菌から、大量のp40蛋白質を精製する系を検討した。今回の研究の結果、およそ2リットルの大腸菌培養菌体から2mgの純度の高い精製抗原が得られることが判り、今後のアッセイ系の運用に十分対応できることが明らかにされた。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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研究報告書(紙媒体)