急性大動脈症候群に対する予防治療の指針作成に向けた基礎研究

文献情報

文献番号
201024195A
報告書区分
総括
研究課題名
急性大動脈症候群に対する予防治療の指針作成に向けた基礎研究
課題番号
H22-難治・一般-140
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
宮田 哲郎(東京大学 医学部附属病院血管外科)
研究分担者(所属機関)
  • 石坂 信和(大阪医科大学 内科学Ⅲ:循環器内科)
  • 今井 靖(東京大学医学部橋渡し研究支援プログラム)
  • 小野 稔(東京大学医学部附属病院 心臓外科)
  • 小櫃 由樹生(東京医科大学 外科学第2講座)
  • 重松 宏(東京医科大学 外科学第2講座)
  • 高本 眞一(東京大学医学部)
  • 竹谷 剛(東京大学医学部附属病院 心臓外科)
  • 出口 順夫(埼玉医科大学総合医療センター 血管外科)
  • 平田 恭信(東京大学医学部附属病院 先端臨床医学開発講座)
  • 保科 克行(東京大学医学部附属病院 血管外科)
  • 宮田 裕章(東京大学医学部附属病院 医療品質評価学)
  • 森田 啓行(東京大学医学部附属病院 健康医科学創造講座)
  • 師田 哲郎(東京大学医学部附属病院 心臓外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本人の「急性大動脈症候群」発症の臨床像を詳細に記載し、またゲノム解析など基礎研究を併用しカギとなるリスク素因を同定すること、すなわちリスクコントロール・最適治療選択・予防治療開発のための基礎デ―タを得ることを目的に本研究を進めた。
研究方法
○胸部大動脈手術例のリスク分析
日本成人心臓血管外科手術データベース(JCVSD)に登録された胸部大動脈手術(2004-2008年施行)データ13,436例を対象に緊急手術A群(4,518例)と、待機手術B群(8,918例)の2群に分け、術前因子・術後アウトカムを比較した。

○腹部大動脈破裂のリスク分析
腹部大動脈瘤症例103例に関する後ろ向き調査で,瘤拡大速度に関連する因子を検討。

○腹部大動脈瘤、特に家族性症例のゲノム解析
腹部大動脈瘤手術患者25例のゲノムDNAを対象に平滑筋ミオシン、平滑筋アクチンの全長をシークエンス解析した。

○腹部大動脈瘤症例の冠状動脈病変
腹部大動脈瘤に対する待機的手術前に心臓カテーテル検査を施行した170症例を対象に解析をおこなった。
結果と考察
○胸部大動脈手術例のリスク分析
術前因子解析では、A群で年齢が若く、体表面積が小さく、クレアチニン値が高い。手術死亡リスクモデル解析の結果、A群では神経学的障害既往、再手術、低左心機能がB群に比して重要であることが判明した。

○腹部大動脈破裂のリスク分析
瘤拡大速度に関連する因子を検討、瘤径以外の因子として、動脈瘤の家族歴を有する症例、COPD合併症例では瘤拡大速度が大きいことが明らかになった。家族歴を有する腹部大動脈瘤患者は破裂および瘤急速拡大の高リスク群と見なすべきである。

○腹部大動脈瘤、特に家族性症例のゲノム解析
2家系で平滑筋ミオシン遺伝子の変異を発見した。「瘤破裂・瘤急速拡張予測には動脈瘤の家族歴がカギ」という上記事実と考え合わせると、今後新しい臨床マーカーとして期待できる。

○腹部大動脈瘤症例の冠動脈病変
動脈瘤症例で冠病変の合併頻度は高いものの、冠病変合併例で必ずしも瘤拡大が速いとは限らず、むしろ逆相関を示唆するデータも得られ始めている。因果関係を含めて解析中である。
結論
ハイリスク群の絞込みに向けてデータ収集を効率的に展開し、臨床的提言をおこなう上で有用な、日本人における「急性発症」「重症化」「死亡」のリスクマーカーに関して基礎データを得ることができた。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024195Z