那須ハコラ病の臨床病理遺伝学的研究

文献情報

文献番号
201024191A
報告書区分
総括
研究課題名
那須ハコラ病の臨床病理遺伝学的研究
課題番号
H22-難治・一般-136
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 準一(明治薬科大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
  • 天竺桂 弘子(明治薬科大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
那須ハコラ病(Nasu-Hakola disease; NHD)は、多発性骨嚢胞による病的骨折と白質脳症による若年性認知症を主徴とし、DAP12, TREM2遺伝子機能喪失変異による常染色体劣性遺伝性疾患である。DAP12は破骨細胞の細胞膜上でTREM2と会合し、シグナルを伝達するアダプター分子である。白質脳症発症機構は明らかではなく、有効な治療法がない難病である。H21-難治-一般-201では、臨床診断基準を作成、全国4071施設にアンケート調査を実施、本邦患者数を約200人と推定、ホームページに患者家族の相談窓口を開設した。H22-難治-一般-136(1年目)では、研究組織を8名(研究協力者6名を含む)に強化、遺伝子検査体制を整備、(1)本邦初のTREM2変異NHD1家系を遺伝学的に精査し、罹患脳の遺伝子発現プロフィールを解明する、(2)本邦NHDの剖検脳組織におけるTREM2発現分布を解明する、(3)DAP12欠損ヒトミクログリア創薬モデル系を樹立することを目的とした。
研究方法
文書同意を取得後、NHD1家系3例を遺伝学的に精査した。凍結脳のRNAを用いてmicroarrayでtranscriptomeを解析した。別のNHD3例(DAP12 141delG)とコントロール8例の前頭葉・海馬脳組織を免疫組織化学的に解析した。ヒトミクログリア細胞株HMO6に遺伝子を導入し、DAP12発現陽性・陰性安定細胞株を樹立した。
結果と考察
NHD1家系を遺伝学的に精査し、世界で2家系目のTREM2遺伝子変異c.482+2T>Cを見出した(Eur J Neurol 2011, in press)。罹患脳における炎症と神経変性の同時進行からなる分子病態を解明し、新規バイオマーカーを同定した(GEO GSE25496に登録)。患者生検皮膚より線維芽細胞株を樹立した(iPS細胞バンクに登録)。マウスにおける過去の報告に反して、ヒト脳ではTREM2は少数の単球・マクロファージ・神経細胞、DAP12はミクログリアに発現していることを証明した(Neuropathology 2011, in press)。またDAP12発現陽性・陰性ミクログリア細胞株の樹立に成功した。さらにカイコモデル系を用いて、酸化ストレス誘導性細胞死に対する防御分子を同定した(PLoS One 2011, in press)。脳における炎症の抑制と神経変性の防御が治療戦略上重要と考えられた。
結論
現在まで国内外を通じ、NHDの治療薬開発を目指した研究はなく、本研究の成果は厚生労働行政を主導とするNHD患者のQOL向上につながると思われる。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024191Z