香料を含む食品添加物の遺伝毒性評価スキームの構築に関する基盤研究

文献情報

文献番号
202528009A
報告書区分
総括
研究課題名
香料を含む食品添加物の遺伝毒性評価スキームの構築に関する基盤研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24KA1008
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
杉山 圭一(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター ゲノム安全科学部)
研究分担者(所属機関)
  • 本間 正充(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 安井 学(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 古濱 彩子(国立医薬品食品衛生研究所 )
  • 佐々 彰(千葉大学 大学院理学研究院生物学研究部門)
  • 石井 雄二(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 病理部)
  • 鈴木 孝昌(国立医薬品食品衛生研究所 )
研究区分
食品衛生基準科学研究費補助金 分野なし 食品安全科学研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和8(2026)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、in silico、in vitro手法を活用した香料を含む食品添加物の階層的な遺伝毒性評価系スキームの確立を見据えた基盤構築を目指す。
研究方法
in silico手法を用いた香料スクリーニング評価法の提案については、国内での年間使用量の多い200の18類香料について精査を進めた。
グルタチオン補充による第Ⅱ相薬物代謝を評価に入れたin vitro遺伝毒性試験の構築については、Ames試験陽性だがin vivo遺伝毒性試験陰性を示す4-メトキシシンナムアルデヒド(MCA)および6-メトキシキノリン(MQ)について、1 mMグルタチオン(GSH)を補充したTK6試験(GSH-TK6試験)を実施した。
in vitro遺伝毒性試験をプラットフォームとしたエピジェネティック作用評価法の開発と検証については、エピジェネティックな変化を定量可能なepi-TK試験による化合物スクリーニング等を進めた。
包括的毒性試験によるin silico評価系の精緻化については、in silico及びin vitro変異原性試験で陽性となったMCAについて、gpt deltaラットを用いた一般毒性・遺伝毒性・発がん性包括試験を実施した。
DNAメチル化異常を介したゲノム不安定性誘発作用のスクリーニング系の開発については、ナノポア型シークエンサーから得られるmodBamであるファイルをインプットとして、ゲノムDNAのグローバルなメチル化レベルを算出するデータ解析系を確立を試みた。
結果と考察
in silico手法を用いた香料スクリーニング評価法の提案については、整理を行った結果を基に、香料の遺伝毒性・変異原性評価を進める際の優先順位づけを行うスキーム案を提案した。現時点でのスキーム案ではAmes/QSAR予測で陽性となる香料ならびに18類のうちケトン類に分類される香料の評価を優先させる構成となった。
グルタチオン補充による第Ⅱ相薬物代謝を評価に入れたin vitro遺伝毒性試験の構築については、生体内のGSHが比較的高濃度(1~10 mM)に存在していることから、in vitro試験においてもGSHを補完しフォローアップすることで、in vivo試験との相関性を高められる科学的根拠(作用機序)になりうることが示唆された。
in vitro遺伝毒性試験をプラットフォームとしたエピジェネティック作用評価法の開発と検証については、
エピ遺伝毒性試験法(エピTK試験)でstyrene、hydroquinoneの陰性結果を得ると共に、12-O-Tetradecanoyl phorbol-13-acetate(TPA)の毒性をモデルとしてクロマチン構造動態に基づく新規のエピジェネティック評価指標を確立した。
包括的毒性試験によるin silico評価系の精緻化については、本試験条件下におけるMCAのNOAELは150 mg/kg体重/日であることを明らかにした。また、発がん性評価では肝前がん病変マーカ―による検索を行った結果、MCAにラット肝発がん性はないと考えられた。
DNAメチル化異常を介したゲノム不安定性誘発作用のスクリーニング系の開発については、ナノポア型シークエンサーMinIONを用いて、簡便迅速にゲノムDNAのメチル化を解析する系を確立した。
結論
食品添加物ではあるものの少量使用で多品種となる香料においては、その特徴から安全性評価においては妥当性を保持しつつも効率的な評価が求められる。また、遺伝毒性研究は従来のDNAの配列への直接的な障害に加え、クロマチン構造を含むゲノム全体に対する影響評価についても考慮するゲノム毒性とも言うべきより精緻な毒性研究にシフトしつつある。
本研究班では、効率的な評価を可能とするAmes QSARを用いて、香料の評価における優先順位付けスキーム原案について提示できた。また、独自開発となる細胞レベルでのフォローアップ試験の有用性の確認も進めた。クロマチン構造を規定する分子基盤となるエピジェネティックな変化を検出する2つのプラットフォームの構築についても、それぞれサロゲートマーカーの有用性と直接検出の可能性を認めた。in silico及びin vitroで陽性となったMCAの包括的毒性評価については、本剤の安全性評価に有益なデータを取得した。
今年度の成果は、昨年度の成果を基盤としてさらに発展させたものであり、香料の効率的かつ階層的な遺伝毒性評価スキームの構築に直接資する成果と考える。

公開日・更新日

公開日
2026-08-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-08-19
更新日
-

収支報告書

文献番号
202528009Z