遺伝性脳小血管病の病態機序の解明と治療法の開発

文献情報

文献番号
201024182A
報告書区分
総括
研究課題名
遺伝性脳小血管病の病態機序の解明と治療法の開発
課題番号
H22-難治・一般-127
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
小野寺 理(新潟大学 脳研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 西澤 正豊(新潟大学 脳研究所)
  • 水野 敏樹(京都府立医科大学 神経内科学)
  • 冨本 秀和(三重大学大学院 医学系研究科 神経病態内科学)
  • 伊東 史子(筑波大学大学院 人間総合科学研究科 実験病理・病理学)
  • 丹羽 正美(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科 神経薬理学分野)
  • 佐藤 俊哉(新潟大学 脳研究所)
  • 内野 誠(熊本大学大学院 生命科学研究部 神経内科学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年の,脳小血管に首座をもつ病態が高頻度で指摘されるようになった.しかし診断基準が確立されておらず,有効な治療方法も確立されていない.希に,遺伝性脳小血管病が報告されている.遺伝性脳小血管病には,常染色体性優生遺伝形式をとるCADASILや,劣性遺伝形式をとるCARASILが知られている.しかしその正確な疾患頻度,病像は不明である.本研究班では本邦における,遺伝性脳小血管病の頻度,および症状を明らかとし,これらの遺伝子変異が,血液脳関門や,脳小血管に与える影響を検討する.
研究方法
本邦における遺伝性脳小血管病患者の実態調査を行う.病態機序の解明については,CARASILはTGF-βファミリーのシグナル伝達の更新によるので,これをモデルマウスで検証する.さらに,血管内皮特異的にTGF-βファミリーシグナルを抑制した遺伝子改変マウスを用いる.これらの脳小血管病モデルマウスにて脳小血管病を引き起こす遺伝子の機能,およびその遺伝子の下流のシグナル伝達を検討する.加えて培養血液脳関門を用い,CADASIL,CARASILの遺伝子変異を導入し,疾患関連血液脳関門モデル細胞培養系を確立する.
結果と考察
本症の暫定診断基準を作成した.従来の診断基準と比し,本診断基準ではprobable 62%,possible 35%と感度が上昇した.HTRA1の遺伝子欠損マウスの網羅的発現解析により,TGF-βファミリー遺伝子ネットワークの発現が脳内で亢進していることを確認した.CADASILの凍結切片による診断の有効性を確認し,皮質性認知症の特徴を有することを明らかにした。アンジオテンシンII受容体拮抗薬の血液脳関門保護効果を明らかにした。血流の低下後に、血行を再建しても微小循環が回復しないno reflow現象の発症機序に焦点をあて、二光子励起レーザー顕微鏡で微小循環を観察し,原因として血球のrolling、adhesionの関与を見いだした。TGF-βシグナルを完全に消失した血管内皮細胞を検討し,同細胞はシェアストレスに応答せず、TGF-βシグナルがシェアストレスを介し血管の恒常性を維持している事を示した.
結論
臨床面から本症の特徴が明らかになり,また薬剤スクリーニングの系,有効薬剤の候補が得られている.病態面からも,TGF-βシグナルと脳微小循環の解明が順調に進んでいる.

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024182Z