非もやもや病小児閉塞性脳血管障害の実態把握と治療指針に関する研究

文献情報

文献番号
201024179A
報告書区分
総括
研究課題名
非もやもや病小児閉塞性脳血管障害の実態把握と治療指針に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-124
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
宮本 享(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 冨永 悌二(東北大学 医学系研究科)
  • 中川原 譲二(中村記念病院 脳神経外科)
  • 宝金 清博(北海道大学 医学研究科)
  • 永田 泉(長崎大学 医歯薬学総合研究科)
  • 高橋 淳(京都大学 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本邦の小児閉塞性脳血管障害はもやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)がその大半を占めるが、初発症状および検査所見がこれに類似しながらも同疾患診断基準を満たさず、臨床経過も明らかに異なるものが存在する。しかしその治療指針は確立されておらず、詳細な疫学データも存在しない。本研究は、本邦における「非もやもや病小児閉塞性脳血管障害」の実態を把握し、治療指針を確立することを目的とする。
研究方法
平成21年度には各分担研究者所属施設におけるデータベースを作成し、症例を解析した。平成22 年度はさらに症例数を増やすために各分担研究者所属施設の関連施設に範囲を広げて臨床像を詳細に調査、解析した。
結果と考察
小児(発症時18歳未満)閉塞性脳血管障害(頭蓋内血管狭窄/閉塞)治療症例数:187例
上記中、もやもや病・片側性もやもや病・類もやもや病の症例数:148例
「非もやもや小児閉塞性脳血管障害」の症例数:39例(21%)
「非もやもや」に該当する症例の平均発症年齢は10.7歳、男:女=1.4:1、発症形態は完成梗塞25、TIA4、脳出血2、その他8であった。完成梗塞25例、TIA4例は全員一側上下肢麻痺を呈した。病変血管については48.7%でICAがinvolveされており、56.4%でMCAがinvolveされていた。また梗塞部位は基底核が多数を占めた(80%)。大半の例で発症急性期以後は血管病変の悪化はなく、自然寛解現象も38.5%にみられた。多くは内科的に治療が行われ、初回治療後の再発率は低く(9.7%:平均観察期間3.3年)、予後は初回イベントで決まる傾向にあった。
もやもや病と異なり、初回発作を厳重な管理・治療でしのぎきれば再発が少ないことが示された。これは小児虚血型もやもや病の多くが進行性であり積極的なバイパス手術が勧められるのとは対照的である。ただ、初回発作で重篤な後遺症を負う事例も存在し、この病態を過小評価することはできない。
結論
頭蓋内血管狭窄部位がもやもや病と類似していても、臨床経過が大きく異なる。外科治療の適応は限られるが、初回の厳重な管理・治療が必要でありそれにより予後が決まる。的確な治療法選択のために、もやもや病との鑑別診断が適切に行われなければならない。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024179Z