無症状の一般人(主として妊婦を対象とした)における各種STDの疫学的調査

文献情報

文献番号
199700814A
報告書区分
総括
研究課題名
無症状の一般人(主として妊婦を対象とした)における各種STDの疫学的調査
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
岩澤 晶彦(札幌医科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 塚本泰司(札幌医科大学)
  • 兼元敏隆(国立札幌病院)
  • 藤本征一郎(北海道大学)
  • 工藤隆一(札幌医科大学)
  • 石川睦男(旭川医科大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 新興・再興感染症研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本邦の無症状の一般populationのなかで性感染症(STD)がどれくらい広まっているかを調査する。今まで、症状があり医療機関を受診したSTD患者の臨床dataは散見されるが、無症状の潜在するSTD調査検討を多数例での対象においてなされていないのが現状である。そして、無症状のSTDの実体を把握することで、今後のSTDの予防、重篤な感染症を阻止することが期待できる。一般populationのなかで、検査が比較的容易な妊婦を対象として、無症状でも性器におけるsampleをとり、本邦の無症状のSTDの現状を把握することが、重要であると考えられる。
研究方法
対象は北海道の産婦人科病院と医院を受診した妊婦のうち、検査内容と目的を話しinformed consentにより同意を得られた10代の妊婦である。検査方法は子宮頚部swabを採取し、クラミジアと淋菌の検出を高感度検出法であるPolymerase chain reaction法にて施行した。また、血液を採取し、クラミジアIgA抗体、クラミジアIgG抗体、梅毒トレポネーマ抗原法(TPHA)、HBc抗体検査を行った。
結果と考察
検討した妊婦の子宮頚管におけるクラミジア検出率は22.3% (43/193)、淋菌検出率は6.8% (13/192)であった。血清抗体検査では、クラミジアIgA抗体が28.9% (54/187)、クラミジアIgG抗体が30.8%(57/185)、梅毒トレポネーマ抗原法(TPHA)が0% (0/193)、HBc抗体が3.2% (6/185)であった。無症状のSTDの調査として、無症状の10代妊婦における性器クラミジア感染症が広く蔓延していたことは驚くべき結果であった。なぜなら性器クラミジア感染症を治療せず放置しておくと重篤な感染症へ進展することがあるからである。すなわち、女子ではクラミジア性子宮頸管炎から子宮内膜炎、卵管炎、骨盤腹膜炎になり不妊症になることがあり、男子ではクラミジア性尿道炎から、前立腺炎、精巣上体炎になることがある。そこで、無症状のクラミジア感染症を早期に見つけ治療する意義が出てくる。また、淋菌とB型肝炎ウイルスも少数ながら潜在していたことはクラミジア感染症と同様注目すべき所見であった。
結論
無症状の一般populationのなかで性感染症(STD)がどれくらい広まっているかを、調査可能な妊婦を対象に調査した結果、クラミジア感染症が広く蔓延していた。そのような無症状のクラミジア感染症に対しては重篤な感染症へ進展することがあるので早期に見つけ治療する必要がある。また、少数ながら淋菌とB型ウイルスも検出されたことは注目すべき結果であった。今回の調査で、無症状のSTDの実体を把握することで、今後のSTDの予防、重篤な感染症を阻止することが期待できると思われる。

公開日・更新日

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