地方公共団体におけるこども虐待事例の検証方法と効果的な活用のための研究

文献情報

文献番号
202527017A
報告書区分
総括
研究課題名
地方公共団体におけるこども虐待事例の検証方法と効果的な活用のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24DA0501
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
澁谷 昌史(関東学院大学 社会学部)
研究分担者(所属機関)
  • 中板 育美(武蔵野大学 看護学部)
  • 川松 亮(明星大学 人文学部)
  • 上野 昌江(四天王寺大学 看護学部)
  • 大竹 智(立正大学 社会福祉学部)
研究区分
こども家庭科学研究費補助金 分野なし 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和8(2026)年度
研究費
6,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
児童虐待の防止等に関する法律に基づき、国及び地方公共団体においては児童虐待を受けた児童がその心身に著しく重大な被害を受けた事例の分析を行うものとされている。しかし、死亡事例であっても全事例が検証されているわけではない。また、検証結果は施策や実践等の改善に結びつけられることが期待されるが、実際には検証結果の活用自体が行われていないところも珍しくない。死亡事例等の検証及び検証結果の活用が行われない状況を踏まえつつ、積極的に検証等を行っている自治体での取り組みを明らかにし、それを「子ども虐待重大事例検証の手引き」(以下、検証の手引き)改訂に反映させる。
研究方法
研究は3か年かけて実施する。1年目は質問紙調査により実態を把握し、2年目はヒアリング調査により検証方法及び検証結果の活用についての知見を収集し、3年目は検証の手引き改訂案を作成し、検証事務局を主たる対象とする講習会を実施する。あわせて、検証結果を活用したモデル研修案を作成し、自治体の協力を得て実施する。
本年度(2年目)は、1年目の質問紙調査結果に基づき、過去5年以内に死亡事例等が発生し検証を行ったとの回答があった自治体のうち、とくに検証が困難となりやすい状況と関連している事項及び検証結果の活用に関して特徴的な取組をしている14自治体を選定し、ヒアリング調査を実施した(2025年8月~2026年2月)。
結果と考察
自治体を対象とするヒアリングは、本研究班が選定した14自治体すべてに対して行うことができた。ヒアリング結果について、報告書作成までを分析する班(検証班)と、検証結果の活用について分析する班(研修班)にわかれて考察を加えた(いずれの班も、母子保健を専門とする研究分担者と児童福祉を専門とする研究分担者から構成)。
検証班では、検証組織から報告書の作成・公表に至るプロセスで何が起きているのかを分析した。とくに検証に必要な情報収集に関しては、関係機関との日頃からの連携と関連していることがうかがわれた。他方、要保護児童対策地域協議会等で接点の少ない関係機関等から情報収集する場合には、検証の法的根拠などを丁寧に説明するプロセスが必須となっていた。また、関係機関のない事例は検証対象となりにくい実態があった。孤立した妊娠・出産・子育てに気づき、支援していく方策を探るために検証という機会をどのように活用するかも、検証の手引きで共有していく必要があると考えられた。そのほか、警察からの情報収集、報告書の公表にあたっての個人情報の扱い、裁判記録の扱いや当事者ヒアリング、事例担当者のケアなども自治体単位での検討では工夫に限界があることがわかった。これらのことを含めて検証方法の標準化を図っていく必要性が示された。
研修班では、検証委員会から報告書が出された後、その共有や活用(研修含む)について焦点をあてた分析を進めた。その結果、自らの自治体で行った検証結果については施策見直しや研修などで活用が図られていたが、国や他自治体での検証結果については具体的な活用には結びついていない傾向がみられた。また、検証結果の活用状況を継続的にモニタリングしているところはほとんどなく、とくに支援者ひとり一人にまで検証からの学びが発生しているかについては把握しきれなかった。研修機関の調査からは、重大事例を用いた研修では受講者の実践状況を踏まえたプログラム設計や、後付けバイアスを避けることをテーマにした研修が行われていることがわかった。総じて、検証結果の共有・活用でもさまざまな工夫がなされてはいるが、検証結果の活用のあり方について参考になるような情報を広く共有する必要性が高く、とくに個人情報の保護は検証結果の共有・活用でも基本的考え方を示す必要性が明らかであった。
本調査では、検証の手引きに盛り込むべき事項について多くの知見が得られたが、とくにふたつの研究班に共通して、検証に母子保健の担当者・有識者が関与すること、基礎自治体が検証に関与する範囲を広げること、個人情報の保護についての考え方を整理すること、検証のための情報収集場面に限らず事例担当者のケアのあり方について検討すべきことが指摘された。
結論
3か年研究の2年目として、検証を「結果の活用」に志向したものとすること、そしてその主たるフィールドとして「市町村」にクローズアップするとともに、都道府県の市町村支援機能を強化することの重要性について示唆された。検証をめぐる諸課題は、検証の手引き改訂のみで全解するわけではないが、各自治体の工夫を練り込んだ手引きは重要なツールとなる。3年目には、ここまでの研究成果を踏めて検証の手引き改訂を進めるとともに、検証結果を活かしたモデル研修を実施し、妊産婦や子ども、子育て家庭にかかわるすべての人たちが検証事例に学ぶ機会を創出しやすくする。

公開日・更新日

公開日
2026-07-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-07-10
更新日
-

収支報告書

文献番号
202527017Z