ATR-X(X連鎖αサラセミア・精神遅滞)症候群の診断及び治療方法の更なる推進に関する研究

文献情報

文献番号
201024169A
報告書区分
総括
研究課題名
ATR-X(X連鎖αサラセミア・精神遅滞)症候群の診断及び治療方法の更なる推進に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-114
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
和田 敬仁(地方独立行政法人 神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター 神経内科)
研究分担者(所属機関)
  • 小坂 仁(地方独立行政法人 神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター 神経内科)
  • 黒澤健司(地方独立行政法人 神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター 遺伝科)
  • 齋藤伸治(北海道大学大学院医学研究科小児科学分野)
  • 福嶋義光(信州大学医学部 遺伝医学・予防医学講座)
  • 田辺秀之(総合研究大学院大学 先導科学研究科)
  • 松本直通(横浜市立大学医学部 遺伝医学)
  • 岡本伸彦(大阪府立母子保健総合医療センター研究所)
  • 後藤雄一(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 神経研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ATR-X(X連鎖αサラセミア・精神遅滞)症候群は、X染色体上に局在するATRX遺伝子の変異により発症するX連鎖性精神遅滞症候群の一つであり、多彩な症状を特徴とする。世界では200症例近くが診断されている希な疾患である。その病態はほとんど解明されていない。本研究の目的は、ATR-X症候群の臨床および分子遺伝学的診断体制を確立すると共に、患者の臨床情報をデータベース化することにより、その医療情報を医療者および患者・家族に提供するためのシステムを構築し、診断基準や治療法を確立するとともに、基礎的研究のための基盤整備を行い、病態解明を進めることである。
研究方法
臨床研究:1.全国の医師よりATR-X症候群が疑われる、あるいは鑑別疾患として考えられる症例をご紹介いただき、ATRX遺伝子の分子遺伝学的解析および医療情報の集積。2.医療情報提供の場としてホームページの作成や患者・ご家族を中心とした勉強会の開催。
基礎研究:3.迅速でより精度の高い診断方法の開発とその有用性を検討。 4.ATR-X症候群の病態解明のため、精神遅滞患者を対象に、アレイを用いたCNV解析によるATRX遺伝子の欠失の有無を検討。5.3D-FISHを用いて、Xqと16pの染色体テリトリーの差異を患者および健常者のリンパ芽球を用いて検討。6.鑑別診断としてのSLC9A6遺伝子変異の解析
結果と考察
臨床研究:1.現在までに70症例を超えるATR-X患者の医療情報を集積し、臨床診断基準を作成し、アメリカ人類遺伝学会で試案として提示した。来年度は、この診断基準の妥当性を検討していく予定である。2.ホームページの作成あるいは勉強会の開催は、ATR-X症候群の周知にも貢献し、診断あるいは鑑別診断として検討される症例が増え、一定の効果があった。
基礎研究:3.本年度は検査の依頼のあった15症例中10例でATRX遺伝子変異を検出した。4.ATRX 遺伝子のnull変異が致死的であることが示唆された。5.ATRX蛋白の遺伝子の空間配置の特異性に関わる機能の可能性が示唆された。6.SLC9A6遺伝子変異による発症機構を明らかにした。
結論
来年度に向け、臨床および基礎研究の基盤が整備された。臨床研究では、診断基準の確立とATRX遺伝子変異のない症例に関する検討、基礎研究では、患者皮膚線維芽細胞よりiPS細胞化をすすめ、病態解明に役立てていきたい。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024169Z