ビオチン代謝異常症の鑑別診断法と治療方法の開発

文献情報

文献番号
201024165A
報告書区分
総括
研究課題名
ビオチン代謝異常症の鑑別診断法と治療方法の開発
課題番号
H22-難治・一般-110
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 洋一(千葉大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 平成22年度の目的は以下の4点である。
(1)アンケート調査によって、食物アレルギー等の治療のための特殊ミルクによる栄養性ビオチン欠乏症の発生頻度を把握する。
(2)アンケート調査等によって、先天性ビオチン代謝異常症の患者数を把握する。
(3)先天性ビオチン代謝異常症の既知の遺伝子に異常のない症例の、新たな遺伝子の同定を試みる。
(4)ビオチン代謝異常症に関するウェブ上の情報サイトを開発する。
研究方法
 目的の(1)と(2)のため、全国の小児科のある病院を対象にアンケート調査を行った。2946病院を病院規模ごとに抽出率を変え、921病院を選び、1次調査をおこなった。(3)については、候補遺伝子としてSLC19A3、SLC16A1の変異スクリーニングと全エクソンシークエンスを行った。
結果と考察
アンケートは2010年11月に発送し、2011年4月時点で、589(64%)の病院からの回答を得た。
(1)栄養性ビオチン欠乏症の発生頻度
 栄養性ビオチン欠乏症の症例は、2.5%の病院で経験していると推定された。直近の10年間で、年間に平均7例以上栄養性ビオチン欠損症が発生していると推定された。
(2)先天代謝異常症の発生状況
 アンケート調査で、過去1年間、先天性ビオチン代謝異常症の症例があったかどうかを尋ねた。この1年間に新たに発症した先天代謝異常症はなかった。
 研究代表者のホロカルボキシラーゼ(HLCS)欠損症についての診断経験と、平成21年度の研究班の報告から、この28年に27例のHLCS欠損症が確認された。HLCS欠損症の年間の発症率は100万人に1人を下回っていると思われる。一方、ビオチニダーゼ(BTD)欠損症は、2例のみが確認できた。BTD欠損症は、HLCS欠損症より、さらに少ないと推定された。
(3)先天性代謝異常症の新たな遺伝子異常の同定
 HLCSとBTD遺伝子に異常の見つからなかった症例5例について、 SLC19A3とSLC16A1の変異は見つからなかった。次に全エクソンのシークエンシングを行った。2例について結果を得た。現在、病因となる可能性のある変異の同定を試みている。
(4)ビオチン代謝異常のウェブサイトの開発
ビオチン代謝異常症を疑われた児の親が、ウェブの情報を見たことから、千葉大学附属病院遺伝子診療部を受診することとなった。

結論
 栄養性と先天性のビオチン代謝異常症の罹患率の疫学調査から、栄養性ビオチン欠乏症の発生頻度が初めて明らかとなった。
HLCSとBTDの遺伝子診断は、先天性のビオチン代謝異常を否定するために、必要であると思われた。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024165Z