出生前検査に関する情報提供体制、遺伝カウンセリング体制、支援体制の構築のための研究

文献情報

文献番号
202527003A
報告書区分
総括
研究課題名
出生前検査に関する情報提供体制、遺伝カウンセリング体制、支援体制の構築のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23DA0401
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
三宅 秀彦(お茶の水女子大学)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 重人(京都大学大学院 医学研究科)
  • 西垣 昌和(国際医療福祉大学 大学院医療福祉学研究科)
  • 山田 崇弘(北海道大学病院 臨床遺伝子診療部)
  • 小西 郁生(京都大学 大学院医学研究科)
  • 久具 宏司(国際医療福祉大学 成田薬学部)
  • 小出 馨子(学校法人 昭和医科大学 医学部産婦人科学講座)
  • 佐々木 元子(お茶の水女子大学大学院基幹研究院自然科学系)
  • 澤井 英明(兵庫医科大学 医学部)
  • 鈴森 伸宏(岩手医科大学 大学院医学研究科)
  • 浜之上 はるか(横浜市立大学附属病院 遺伝子診療科)
  • 蒔田 芳男(旭川医科大学 医学部 病院遺伝子診療カウンセリング室)
  • 三浦 清徳(長崎大学)
  • 浦野 真理(東京女子医科大学附属遺伝子医療センター)
  • 遠藤 恵子(山形県立保健医療大学 保健医療学部看護学科)
  • 片岡 弥恵子(聖路加国際大学大学院 看護学研究科)
  • 金井 誠(信州大学医学部附属病院)
  • 佐々木 規子(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 中込 さと子(信州大学 医学部保健学科)
  • 福島 明宗(岩手医科大学 医学部 臨床遺伝学科)
  • 佐々木 愛子(国立成育医療研究センター 周産期母性診療センター)
  • 白土 なほ子(内野 なほ子)(昭和大学  医学部産婦人科学講座)
  • 関沢 明彦(学校法人昭和医科大学 医学部産婦人科学講座)
  • 秦 健一郎(国立成育医療研究センター研究所 周産期病態研究部)
  • 増澤 祐子(新潟県立看護大学 看護学部)
  • 山本 俊至(東京女子医科大学 医学部)
  • 吉橋 博史(地方独立行政法人東京都立病院機構 東京都立小児総合医療センター  遺伝診療部 臨床遺伝科)
  • 江川 真希子(東京医科歯科大学 血管代謝探索講座)
  • 倉橋 浩樹(藤田医科大学 医科学研究センター・分子遺伝学)
  • 小林 朋子(東北大学 東北メディカル・メガバンク機構 ゲノム医学普及啓発寄附研究部門)
  • 佐村 修(東京慈恵会医科大学 産科婦人科学講座)
  • 竹内 千仙(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 三上 幹男(湘南医療大学)
  • 吉田 雅幸(国立大学法人東京医科歯科大学 統合研究機構)
  • 田中 司朗(京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻薬剤疫学分野)
研究区分
こども家庭科学研究費補助金 分野なし 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
6,924,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
出生前検査は、胎児の状態を把握し、妊婦とそのパートナーの意思決定を支援する一方、妊娠継続の検討や、疾患のある人々に対する社会的認識にも影響を与えうるため、倫理的・社会的課題への配慮が不可欠である。従来、羊水検査や絨毛検査などの確定的検査は産婦人科医が中心となり、日本産科婦人科学会によるガバナンスの下で実施されてきた。しかし、非侵襲性出生前遺伝学的検査(NIPT)の普及により、産婦人科以外の施設も出生前検査に関与するようになり、従来の枠組みのみでは対応が困難となった。また、マイクロアレイや次世代シークエンサーを用いた網羅的検査の実装が進み、検査精度、結果解釈、偶発的所見、支援体制など新たな課題も生じている。そこで本研究班では、①産婦人科医教育、②医師以外の関連職種に対する教育体制、③出生前検査に関するエビデンス集積、④倫理的・社会的課題の整理を目的として検討を行った。
研究方法
本研究班は、産婦人科医、小児科医、看護師、助産師、保健師、認定遺伝カウンセラー、統計学者、社会学者等からなる多職種体制で構成された。研究は4つのグループに分かれ、産婦人科医教育、関連職種教育、エビデンス集積、倫理的・社会的課題をそれぞれ担当した。各グループ責任者が全体運営に関与し、さらに総括、統計、科学コミュニケーションの観点からスーパーバイズ体制を整備した。研究班全体会議を年2回開催し、研究進捗の共有と方向性の統一を図った。なお、本年度に新規倫理審査を要する研究は実施していないが、発表内容に含まれる調査研究は過年度に所属施設の倫理審査承認を受けている。
結果と考察
産婦人科医教育では、講義シリーズおよびロールプレイ研修を改訂し、出生前検査に関する初期対応と専門的遺伝医療への接続を重視した教育体制を構築した。ロールプレイ研修では、参加者75件、指導者21件の回答が得られ、多くが「新しい学びがあった」「今後の診療に役立つ」と回答した。特に、患者の不安理解、説明方法、NIPT陽性時や判定保留時の対応が重要な学習内容として挙げられた。また、専攻医教育では、高度な遺伝カウンセリング技能よりも、出生前検査の意義・限界を理解し、適切な初期対応と専門施設への紹介ができる能力を重視する方針が整理された。
助産師・保健師向けには、一次施設の助産師を対象としたロールプレイ教材や、自治体窓口対応ガイドを作成した。これらでは、支援的コミュニケーション、心理社会的支援、専門職連携、非認証施設受検者対応、選択的中絶後のグリーフケア等を扱い、多職種連携による支援体制の必要性が示された。
エビデンス集積では、2003年から2023年までの国内出生前検査動向を解析し、母体血清マーカー検査、羊水検査、絨毛検査は減少傾向である一方、出生前遺伝学的検査全体の実施率は増加していた。また、産婦人科医663名を対象とした調査では、13・18・21トリソミー以外を対象とするNIPT導入に肯定的意見がみられたが、網羅的解析の意義や限界への理解にはばらつきが認められた。NIPT受検者調査では、認証施設受検率が増加していた一方、非認証施設ではアクセス性や対象疾患拡大への関心が高く、個別遺伝カウンセリング実施率の低さや、不安・後悔の増加が課題として示された。
倫理的・社会的課題の検討では、認証施設と非認証施設の診療内容の乖離、網羅的出生前検査の制度的位置づけの不明確さ、検査後支援体制の未整備、社会的認知不足が主要課題として整理された。研究班では、遺伝診療と遺伝カウンセリングの役割整理、質保証、法的規制、検査後支援、社会との対話を主要論点として整理し、「出生前検査のガバナンスと支援制度に関する意見書」を作成した。
結論
本研究班は、出生前検査に関する教育、支援、エビデンス、倫理的・社会的課題について多面的に検討した。その結果、産婦人科医および関連職種に対する教育体制、多職種連携による支援体制、出生前検査の現状と課題を整理し、「出生前検査のガバナンスと支援制度に関する意見書」を作成した。今後は、本研究成果を基盤として、教育、支援、制度整備、社会的対話を含めた包括的な出生前検査体制の継続的改善が求められる。

公開日・更新日

公開日
2026-09-02
更新日
-

文献情報

文献番号
202527003B
報告書区分
総合
研究課題名
出生前検査に関する情報提供体制、遺伝カウンセリング体制、支援体制の構築のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23DA0401
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
三宅 秀彦(お茶の水女子大学)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 重人(京都大学大学院 医学研究科)
  • 西垣 昌和(国際医療福祉大学 大学院医療福祉学研究科)
  • 山田 崇弘(北海道大学病院 臨床遺伝子診療部)
  • 小西 郁生(京都大学 大学院医学研究科)
  • 久具 宏司(国際医療福祉大学 成田薬学部)
  • 小出 馨子(学校法人 昭和医科大学 医学部産婦人科学講座)
  • 佐々木 元子(お茶の水女子大学大学院基幹研究院自然科学系)
  • 澤井 英明(兵庫医科大学 医学部)
  • 鈴森 伸宏(岩手医科大学 大学院医学研究科)
  • 浜之上 はるか(横浜市立大学附属病院 遺伝子診療科)
  • 蒔田 芳男(旭川医科大学 医学部 病院遺伝子診療カウンセリング室)
  • 三浦 清徳(長崎大学)
  • 浦野 真理(東京女子医科大学附属遺伝子医療センター)
  • 遠藤 恵子(山形県立保健医療大学 保健医療学部看護学科)
  • 片岡 弥恵子(聖路加国際大学大学院 看護学研究科)
  • 金井 誠(信州大学医学部附属病院)
  • 佐々木 規子(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 中込 さと子(信州大学 医学部保健学科)
  • 福島 明宗(岩手医科大学 医学部 臨床遺伝学科)
  • 佐々木 愛子(国立成育医療研究センター 周産期母性診療センター)
  • 白土 なほ子(内野 なほ子)(昭和大学  医学部産婦人科学講座)
  • 関沢 明彦(学校法人昭和医科大学 医学部産婦人科学講座)
  • 秦 健一郎(国立成育医療研究センター研究所 周産期病態研究部)
  • 増澤 祐子(新潟県立看護大学 看護学部)
  • 山本 俊至(東京女子医科大学 医学部)
  • 吉橋 博史(地方独立行政法人東京都立病院機構 東京都立小児総合医療センター  遺伝診療部 臨床遺伝科)
  • 江川 真希子(京都大学)
  • 倉橋 浩樹(藤田医科大学 医科学研究センター・分子遺伝学)
  • 小林 朋子(東北大学 東北メディカル・メガバンク機構 ゲノム医学普及啓発寄附研究部門)
  • 佐村 修(東京慈恵会医科大学 産科婦人科学講座)
  • 竹内 千仙(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 三上 幹男(湘南医療大学)
  • 吉田 雅幸(国立大学法人東京科学大学 統合研究機構)
  • 田中 司朗(京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻薬剤疫学分野)
研究区分
こども家庭科学研究費補助金 分野なし 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
出生前検査は、胎児の状態を把握し、妊婦とパートナーの意思決定を支援する一方、妊娠継続の判断や疾患のある児・家族への社会的まなざしにも関わるため、倫理的・社会的配慮が不可欠である。NIPTの普及により、出生前検査は産婦人科医のみで完結する領域ではなくなり、従来の学会見解によるガバナンスだけでは対応が困難となった。また、マイクロアレイや次世代シークエンサー等を用いた網羅的検査の導入可能性が高まる中、検査精度、結果解釈、偶発的所見、支援体制、社会的影響など新たな課題も生じている。そこで本研究班では、産婦人科医教育、医師以外の関連職種の教育体制、出生前検査に関するエビデンス集積、倫理的・社会的課題の検討を通じ、本邦における出生前検査の適切な提供体制と支援制度のあり方を検討した。
研究方法
研究班は、医師、看護師、助産師、保健師、認定遺伝カウンセラー、統計学者、科学コミュニケーター、社会学者等からなる多職種体制で構成した。医師についても、産婦人科、小児科、内科、医学教育、医療倫理等の専門性を含めた。研究は4グループに分け、①産婦人科医を対象とした教育、②医師以外の関連職種を対象とした教育体制、③出生前検査に関するエビデンス集積、④倫理的・社会的課題の検討を行った。各グループ責任者が相互に参画し、スーパーバイザーによる総括的・統計学的・科学コミュニケーション上の助言を受けることで、研究全体の整合性を確保した。全体会議を年2回開催し、進捗共有と方針調整を行った。倫理審査を要する調査については、各班員の所属施設で承認を得て実施した。
結果と考察
産婦人科医教育では、周産期講義シリーズの構築・改訂、ロールプレイ研修、専攻医教育におけるコンピテンシーの検討を行った。出生前検査を日常診療の一部として位置づけ、専攻医段階では高度な遺伝カウンセリング技能よりも、検査の意義・限界・倫理的課題の理解、初期対応、専門的遺伝医療への接続能力を重視すべきことが整理された。ロールプレイ研修は、患者の不安理解、説明方法、NIPT陽性時・判定保留時の対応を学ぶ実践的教育として有用であった。
医師以外の関連職種については、助産師・保健師を中心に教育ニーズと実践上の課題を整理し、研修資材を作成した。助産師は一次施設での初期対応、支援的コミュニケーション、急性期のグリーフケアを担い、保健師は地域母子保健における情報提供、相談勧奨、地域資源への接続、中長期的支援を担う役割が整理された。出生前検査の支援には、医療機関内にとどまらず、地域母子保健との連携を含む多職種体制が必要である。
エビデンス集積では、国内の出生前検査実施状況、海外の網羅的出生前検査の動向、医師およびNIPT受検者の意識調査を行った。母体血清マーカー検査、羊水検査、絨毛検査は減少傾向にある一方、出生前遺伝学的検査全体は増加傾向にあった。非認証施設では、アクセス性や対象疾患拡大への関心が受検理由となる一方、個別遺伝カウンセリングの実施率が低く、陰性以外の結果を得た受検者の不安や後悔が課題として示された。網羅的検査については、診断可能性の向上という利点がある一方、解釈困難例、二次的所見、将来的な解釈変更などへの対応が不可欠であり、臨床導入には質保証と遺伝カウンセリング体制が求められる。
倫理的・社会的課題の検討では、小児科を基盤とする臨床遺伝専門医および一般市民を対象とした調査を行った。一般市民では、NIPT、遺伝カウンセリング、網羅的出生前検査に関する認知度が低く、受検意向は希望と非希望が拮抗していた。受検判断ではパートナーや医療者の意見が重視されていた。これらを踏まえ、認証施設と非認証施設の乖離、網羅的検査の制度的位置づけ、検査後支援、社会的理解の不足が主要課題として整理された。
結論
本研究班は、出生前検査に関する教育、支援、エビデンス、倫理的・社会的課題を多面的に検討し、その成果を統合して「出生前検査のガバナンスと支援制度に関する意見書」を作成した。今後は、産婦人科医教育の継続的更新、助産師・保健師等を含む多職種支援体制の整備、網羅的検査に対する質保証、検査後支援、社会との対話を含めた包括的な制度設計が求められる。

公開日・更新日

公開日
2026-09-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202527003C

収支報告書

文献番号
202527003Z