HTLV-1キャリア妊産婦の支援体制の構築に関する研究

文献情報

文献番号
202527002A
報告書区分
総括
研究課題名
HTLV-1キャリア妊産婦の支援体制の構築に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23DA0301
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
内丸 薫(昭和医科大学 学長直属)
研究分担者(所属機関)
  • 関沢 明彦(学校法人昭和医科大学 医学部産婦人科学講座)
  • 小出 馨子(学校法人 昭和医科大学 医学部産婦人科学講座)
  • 谷垣 伸治(杏林大学医学部産科婦人科)
  • 三浦 清徳(長崎大学)
  • 宮沢 篤生(昭和大学医学部小児科学講座)
  • 森内 浩幸(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科新興感染症病態制御学専攻感染症免疫学講座感染病態制御学分野)
  • 根路銘 安仁(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 離島へき地医療人育成センター)
  • 井村 真澄(日本赤十字看護大学 大学院 看護学研究科 国際保健助産学専攻)
  • 有森 直子(新潟大学 医学部)
  • 柘植 薫(国立大学法人香川大学 香川大学医学部附属病院がんセンター)
  • 山野 嘉久(聖マリアンナ医科大学 医学部)
研究区分
こども家庭科学研究費補助金 分野なし 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
5,540,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
乳房管理・授乳支援を十分行うことを必須条件として、短期授乳を選択肢の一つとして挙げた改訂版HTLV-1母子感染予防対策マニュアルを2022年に発行されたが、キャリア妊産婦が短期授乳を選択できるようになるためには、出産後の授乳支援体制の一層の整備が必要である。今年度は短期授乳を選択したHTLV-1抗体陽性妊婦に対する授乳支援状況の実態調査の集計を行い実態を明らかにするとともに、「短期授乳を選択したキャリアマザー完全人工乳移行マニュアル」を作成して、キャリアマザーの授乳支援に向けた提言をまとめる。あわせてHTLV-1母子感染予防に関する研修事業についてその在り方についての提言を行うこととした。また、地域連携システムとしての東京ネットワークの運営を継続して、その課題についても取りまとめを行う。
研究方法
1)HTLV-1キャリア登録ウェブサイトキャリねっとに登録している妊娠出産の経験のある登録者を対象に授乳に対する考え方の調査、短期授乳を選択したHTLV-1キャリア妊産婦が受けた支援の実態調査について最終集計を行い解析した。
2)短期授乳を選択したHTLV-1キャリア妊産婦の人工栄養移行に必要な支援を時間軸に沿って検討整理してマニュアルという形での支援体制の提言の作成を行った。
3) 東京産婦人科医会、東京小児科医会と連携してHTLV-1東京プログラムのシステムを構築して、本プログラムを継続的に運用し、課題などの抽出を行った。
4)昨年度末に開催したHTLV-1母子感染予防に関する全国研修会の参加実態およびオンデマンド研修参加者に関する登録情報の解析から、HTLV-1母子感染予防対策についての全国研修の在り方について検討を行った。
結果と考察
キャリア妊産婦に対する哺乳法の推奨の検討にあたり、キャリア妊産婦の考え方についても十分配慮する必要がある。HTLV-1キャリア登録ウェブサイトキャリねっと登録者を対象としたHTLV-1キャリア妊産婦の授乳に対する考え方の調査では少しでもリスクがあることはしたくないので完全人工乳を選択する母親が49.7%、感染率に差がないなら短期授乳を選択する母親が40.5%であった。キャリア妊産婦に対して、理論的に最も確実な方法は完全人工乳であるという事実をきちんと伝えた上で、授乳法を選択させることが重要であると考えられる。一方、短期授乳を希望する母親に対する授乳支援の実態は不十分であり、短期授乳選択者のうち、産後1~3か月において65%が授乳支援を受けられておらず、そのうち61.5%は支援を望んでいたという結果であった。短期授乳を選択肢にあげるためには人工栄養移行に向けた支援体制が十分に整備する必要があることが改めて示された。
人工栄養移行の支援体制の標準化のために、HTLV-1キャリア妊産婦の短期授乳栄養における人工栄養移行マニュアルの作成を行った。今後本マニュアルを活用して、人工栄養移行支援の体制が整備されることが望まれる。
キャリア妊産婦の支援体制の地域モデルとして構築された東京プログラムは、東京産婦人科医会が中心となって運営を開始したが、基幹産科施設で紹介例が増加したという報告はない。その理由が、HTLV-1キャリアと判明する妊産婦の数が少ないことが原因なのか、これまで東京プログラムで取り組んできたパンフレット作製、講習会などにより1次施設で対応が可能になっているからなのか、あるいはシステム上の問題点なのかは、実際の症例数が少なく、さらに情報を集めないと解析が困難であった。今後自治体との連携も必要となると思われる。
研修事業については、全国レベルの標準的研修として望ましい形態について、実際の研修会の参加実態と参加者アンケートで調査したところでは、オンラインによる中継、あるいは録画によるオンデマンド講習が望まれていることが明らかになった。今後の研修は少なくともオンラインによる形式であることが望まれる。
結論
キャリア妊産婦の半数はたとえ短期授乳で児の感染率が上昇しなくても少しでもリスクのあることはしたくないとの考えで完全人工乳を選択すると考えている。改めて経母乳感染を防ぐ最も確実な方法は完全人工乳であるという情報をきちんとキャリア妊産婦に伝えることが重要であり、一方短期授乳を希望する母親を支援する体制の整備が必要である。支援体制にどのようなことが求められるかの標準を示すためにHTLV-1キャリア妊産婦の短期授乳栄養における人工栄養移行マニュアルが作成され、今後これを参考にHTLV-1キャリア妊産婦支援体制が整備されることが必要である。医療関係、保健行政担当者に向けた研修はオンラインによるものが望ましい。

公開日・更新日

公開日
2026-09-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-09-02
更新日
-

文献情報

文献番号
202527002B
報告書区分
総合
研究課題名
HTLV-1キャリア妊産婦の支援体制の構築に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23DA0301
研究年度
令和7(2025)年度
研究代表者(所属機関)
内丸 薫(昭和医科大学 学長直属)
研究分担者(所属機関)
  • 関沢 明彦(学校法人昭和医科大学 医学部産婦人科学講座)
  • 小出 馨子(学校法人 昭和医科大学 医学部産婦人科学講座)
  • 谷垣 伸治(杏林大学医学部産科婦人科)
  • 三浦 清徳(長崎大学)
  • 宮沢 篤生(昭和大学医学部小児科学講座)
  • 森内 浩幸(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科新興感染症病態制御学専攻感染症免疫学講座感染病態制御学分野)
  • 根路銘 安仁(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 離島へき地医療人育成センター)
  • 井村 真澄(日本赤十字看護大学 大学院 看護学研究科 国際保健助産学専攻)
  • 有森 直子(新潟大学 医学部)
  • 柘植 薫(国立大学法人香川大学 香川大学医学部附属病院がんセンター)
  • 山野 嘉久(聖マリアンナ医科大学 医学部)
研究区分
こども家庭科学研究費補助金 分野なし 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2022年に乳房管理・授乳支援を十分行うことを必須条件として、短期授乳を選択肢の一つとして挙げた改訂版HTLV-1母子感染予防対策マニュアルが発行されたことを受け、キャリア妊産婦が短期授乳を選択できるようになるために必要な体制整備、施策を検討するために必要な調査研を目的とする。
 また、地域ごとのHTLV-1母子感染予防対策のモデルケースとしての東京プログラムの運営を継続し、その課題の検討を行う。HTLV-母子感染予防のための研修の在り方についても検討し提言を行う。
研究方法
1)HTLV-1キャリア妊産婦の実態調査として日本産婦人科医会のHTLV-1抗体陽性妊婦に関する調査を2023年度に実施した。また、保健所のキャリア妊産婦に対する相談、授乳支援の相談の実績について調査を行った。キャリア側からの実態調査としてキャリア登録ウェブサイトキャリねっとを用いてアンケート調査を実施した。
2)キャリア登録ウェブサイトキャリねっとを用いて授乳についての意識調査を実施した。短期母乳を選択した母親への支援体制の標準を提言するためにHTLV-1 キャリア妊産婦の短期母乳栄養における人工栄養移行マニュアルの作成を行った。短期母乳栄養の複数バリエーションごとに妊娠期・分娩期・産後入院中・退院後1か月、2か月、3か月の育児期間の人工乳移行など、時期ごとの状況と支援ポイント一覧表を作成した。
3)東京地区の産科拠点施設、小児科協力施設による連携体制を強化して東京プログラムを運営し、拠点施設による相談対応、キャリア妊産婦の授乳支援などの遂行上の問題点の検討を行った。
4)HTLV-1母子感染予防に関する全国研修会を現地開催するとともに、ライブ配信、オンデマンド配信などのさまざまなモダリティを用意して、それぞれの参加実績、アンケート調査などを通じて研修事業の開催形態についての在り方について検討を行った。
結果と考察
1)日本産婦人科医会調査によれば、生後3か月の時点で24.8%がフォローされておらず、産科としてのフォローが1か月健診までとする施設が32%あった。一方ウェブを用いた調査では産後1か月から3か月の間に支援を受けられなかったと回答した妊産婦が60%程度存在しており、短期授乳を選択したキャリア妊産婦に対する授乳支援まだまだ十分ではないことが推定される。ウェブサイトを用いたキャリア妊産婦の授乳に対する意識調査では、約半数が少しでもリスクのあることを避けるため完全人工乳を選択すると回答し、感染予防の観点から最も推奨される方法は完全人工乳であるという情報をきちんと伝えることは大変重要であると考えられる。一方で、短期授乳を希望するキャリア妊産婦が約半数おり、母親が自らの意思で授乳法を選択できるように支援を行う体制を整備することが重要である。支援体制を整備するにあたり、HTLV-1 キャリア妊産婦における人工栄養移行マニュアルを作成して、標準的な支援体制の提言を行った。本マニュアルが今後具体的な指針となって支援体制が整備されることが望まれる。
2)東京プログラムにおいて現時点までに拠点施設への紹介が増加したという実績は得られていない。東京地区は実数的にはHTLV-1キャリア妊産婦数は全都道府県中2位であり、これらの妊産婦がどのような行動をとったのか、改めて地域として検証する必要がある。
3)HTLV-1母子感染予防に関する研修事業のモデルケースとして全国研修会を開催したが、現地参加者はほとんどおらず、ほぼライブ配信またはオンデマンド視聴によるオンライン参加であった。参加者を対象とした調査ではライブ配信併用のハイブリッド開催がよいとの声もあったが、実際的には現地参加者がほとんどない実情を踏まえると、今後の研修会はオンライン配信で行うことが望ましいと考えられる。
結論
 人工栄養移行支援体制が整備されていることを必須条件に短期母乳を選択肢の一つにあげるHTLV-1母子感染予防対策マニュアル改訂版が発行されたが、キャリア妊産婦の半数はリスクのあることはしたくないとの考えで完全人工乳を選択したいと考えている。経母乳感染を防ぐ最も確実な方法は完全人工乳であるという情報をきちんとキャリア妊産婦に伝えることが重要であり、一方、短期授乳を選択したいという母親も40%前後いることを踏まえ、短期授乳を希望する母親を支援する体制の整備が必要である。支援体制の標準を示すためにHTLV-1キャリア妊産婦の短期授乳栄養における人工栄養移行マニュアルが作成され、今後これを参考にHTLV-1キャリア妊産婦支援体制が整備されることが必要である。医療関係、保健行政担当者に向けた研修はオンラインによるものが望ましく、オンデマンド形式の要望が強いが、オンデマンドの場合の形式についてはさらに検討が必要と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2026-09-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202527002C

収支報告書

文献番号
202527002Z