メタボローム解析による筋型糖原病の画期的な診断スクリーニング法の確立と治療推進の研究

文献情報

文献番号
201024164A
報告書区分
総括
研究課題名
メタボローム解析による筋型糖原病の画期的な診断スクリーニング法の確立と治療推進の研究
課題番号
H22-難治・一般-109
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
杉江 秀夫(自治医科大学 小児科学)
研究分担者(所属機関)
  • 福田 冬季子(自治医科大学 小児科学)
  • 西野 一三(国立精神・神経医療研究センター 神経研究所疾病研究第1部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
筋型糖原病の診断は主に生検筋による酵素診断、あるいは遺伝子解析による。この診断解析には煩雑な診断技術が必要であり、多くの試料量が必要である事などからハイスループットな分析とは言えない。
今回近年開発されたCE-TOFMSを用いた網羅的なメタボローム解析を、筋型糖原病の患者生検筋に応用し、診断の有用性と病態の解明を試みる。
研究方法
診断の確定している筋型糖原病、2型;Pompe病(4例)、3型;Cori病(3例)、5型;McArdle病(3例)、7型;Tarui病(2例)、9型;phosphoglycerate kinase (PGK)欠損症(2例)の生検筋を用いた。正常対照として血清CKが正常で、筋組織学的に異常を認めない生検筋5例を選択した。生検筋を処理したのち CE-TOFMS system(Agilent Technologies 社)を用いて、筋のメタボロームを測定した。用いた生検筋の重量は約10mgであった。
結果と考察
解糖系のメタボライト10種類、TCA サイクル8種類、ペントースモノフォスフェートシャント4種類が同定、定量できた。
糖原病2型のメタボロームの分析では特異な蓄積パターンは認めなかった。3型、5型では解糖中間体の基質はすべて著明な減少を示す事が特徴であった。7型(Tarui病)では解糖中間体のF-6-Pより上流の基質の蓄積が見られるが、FDPより下流の中間体は枯渇しており、F-6-PとFDPの間で解糖の障害が発生していることが推定でき、この責任酵素phosphofructokinaseの障害、すなわちTarui病と診断できた。PGK欠損症では3-P-glyceroyl-phosphateより上流の基質が増加し、3-phosphoglycerateより下流で基質の枯渇を認め、責任酵素であるPGK欠損症と診断できた。さらに本方法を適用することで、嫌気性解糖系とは別のエネルギー代謝過程のメタボロームとしてTCAサイクル、脂肪代謝系のメタボロームも同様に同定できる事が判明し、未解明な症例の病態解明や筋型糖原病の病態評価に応用が期待できる。
結論
網羅的に筋細胞内のメタボロームを分析する手法は、筋型糖原病の診断のみならず、筋型糖原病におこっている代謝病態の解析によい手段である。本研究で得られたメタボローム解析の結果を検討する事で、今後病態を考慮した治療として、前駆物質の制限(restriction)、蓄積物質の除去(removal)、補充療法(replacement)、残存酵素活性の増強(reinforcement)に注目して、新たな治療法開発に結び付く事が期待できる。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024164Z