シトリン欠損症の実態調査と診断方法および治療法の開発

文献情報

文献番号
201024158A
報告書区分
総括
研究課題名
シトリン欠損症の実態調査と診断方法および治療法の開発
課題番号
H22-難治・一般-103
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
岡野 善行(大阪市立大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 佐伯 武頼(徳島文理大学 健康科学研究所)
  • 小林 圭子(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 浅川 明弘(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 池田 修一(信州大学 医学部)
  • 大浦 敏博(東北大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
シトリン欠損症は新生児肝内胆汁うつ滞症(NICCD)、幼児?青年の適応・代償期、予後不良な成人発症II型シトルリン血症(CTLN2)を示す。本研究では、シトリン欠損症の出生から老年に至るまでの自然歴・生活歴を明らかにし、各年代に適した生活指導を含めた食事療法、薬物療法等の治療法を開発、治療指針を作成する。CTLN2の発症予防と発症後の肝移植の回避をはじめ、患者QOLの改善をはかる。
研究方法
1) NICCDの症状と治療を検討するために、後ろ向き調査を行う。2) 適応・代償期患者のPedsQL調査票にてQOL評価する。3) CTLN2患者の病態解析、臨床像の解明を行う。4) 適応・代償期およびCTLN2患者でのピルビン酸ナトリウムの臨床試験を行う。代謝マーカー、患者のQOL、食事評価でその有用性を検討する。5) タンデムマス法による新生児マススクリーニングの有用性を大阪地区で検証する。6) シトリン欠損症マウスのメタボローム解析でその病態を明らかにする。
結果と考察
1) シトリン欠損症患者60名の新生児・乳児期のデータから、MCTミルク使用群では体重増加の改善があり、NICCDに対して有効であった。
2) 一般と疲労倦怠感PedsQL調査では、小児患者のQOLは著しく低下し、本疾患の疲労倦怠感は非常に強いものと推定された。
3) CTLN2患者の初発症状は、意識障害、抑うつ症状、てんかん発作、幻覚などの精神症状で、全例に脂肪肝、27%に膵炎の罹患、8%で肝癌を認めた。
4) CTLN2患者へのピルビン酸ナトリウムと食事療法で、脳症発作が減少し、職場や社会復帰を可能とし、肝移植療法を回避できている。
5) 適応・代償期でのピルビン酸ナトリウム治療では成育の回復とQOLの改善が認められた。
6) 大阪地区でのシトリン欠損症のスクリーニングでは、1/3.5万人と約半数の患者を発見でき、発見頻度の向上が認められた。
7) シトリン欠損症マウスのメタボローム解析から糖質負荷により、肝内グリセロール-3-リン酸の著しい増加、解糖系阻害、尿素合成の異常が認められた。CTLN2の発症診断および薬剤の有効性のマーカーとなると推定された。
結論
シトリン欠損症は新生児・乳児期のNICCD、幼児・青年期(適応・代償期)の疲労、成育異常、成人でのCTLN2の各時期・各症状に応じた治療指針の作成が必要である。ピルビン酸ナトリウムと食事療法は患者QOLの改善とCTLN2の発症予防と治療が可能であり、肝移植を回避できる。これらの研究成果は、患者とその保護者に対して、学校生活、社会生活上でのQOLの向上に貢献できる。

公開日・更新日

公開日
2011-12-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201024158Z